この記事は前後編の2回に分けてお届けしています。 まずはエッジAIの広がり。そしてクラウド連携型エッジAIへ(前編)からご覧ください。

そしてクラウド連携型エッジAIへ

“クラウド連携型エッジAI”とは?

クラウド連携型エッジAIは、富士ソフトが2018年から提唱している新しいソリューション・コンセプトのAI構成モデルです。“クラウドAIだけ”、“エッジAIだけ”では対応しきれないニーズに対する、クラウド環境とエッジ環境を連携させたAIソリューションの構成形態です。

基本的に、組み込み系システム開発や制御系システム開発においては、AI推論処理はエッジ側で実行するほうが有利です。しかし、さらにそこにニューラルネットワークのアップデートやAI機能強化などのニーズに応えるためにAI学習処理まで実行させようとすると、エッジ側に強力なコンピューティングリソースが必要になります。それは、例えば製造ラインの横にサーバを設置するようなイメージです。これではコストや運用の観点で現実的な解決策とは言えません。一方、クラウドやサーバ環境は潤沢なHWリソースと膨大なストレージが比較的安価で利用可能なため、学習処理には優位です。

そこで考えられるのが、AI推論処理はエッジAIで行い、学習処理はサーバーもしくはクラウドで行う仕組みです。そして、これらを連携させるのがクラウド連携型エッジAIです。

エッジAIとクラウドAIとの連携で、柔軟なAI運用

たとえば、製造ラインで検査対象が追加された場合、旧来のエッジAIのニューラルネットワークでは未学習の対象に対して正常な推論が出来ないため、新しい対象にも対応するためにAI推論モデルをアップデートする必要があります。つまり、新しく追加された対象に対応する学習データを使って再度学習をし直す必要があります。 

また、監視カメラシステムのケースでは、季節や環境の変化による対象の変化や多様化に対応するためには、設置カメラごとの対象や環境に応じた最適化を継続的に行い、推論精度を維持・向上することが重要です。そのためには、設置後のエッジAIのアップデート、つまり学習機能が必要になり、これをクラウドAIとの連携で補完することでコストパフォーマンスに優れた柔軟なエッジAI運用が可能になります。 

この場合、学習用のデータをクラウドに集める必要がありますが、お客様によっては自社環境の情報を外部に出せないケースが多いのも実情です。そこで、学習データをクラウドに上げずエッジ側に残したままで、クラウド環境を使ってAIの学習を実行できる新しい技術としてハイブリッド・コンピューティングがあります。

学習データの管理

EU圏から拡大している個人情報保護強化の流れや企業独自ノウハウの保護、また北米でもAI学習データ輸出管理など、データ流出の危険性に対する感度・重要性は高くなる一方です。 そこで、学習データそのものは各エッジ側に分散管理された状態で安全に保管し、クラウド側のAI学習環境はデータの移動を伴わない演算処理を実現するのがハイブリッド・コンピューティング技術です。データを自社環境に置いたまま、クラウドのAI学習環境と連動し、その学習済ニューラルネットワーク・モデルをエッジ側にアップデートすることで、データの秘匿性とクラウド連携型エッジAIの双方の優位性を両立させることが可能になります。

エッジAIの効果的な実装と運用のために

これまでは、とりあえずPoC開発してAIを試してみるというアプローチが主流でしたが、現在は実際のAI利用環境を基にしたオブジェクティブ・デザインが重要になってきています。AI以外の選択肢はあるのか? AI処理で期待できる内容とレベルは目的に合うのか? 用途に適切なAIの規模は? コストや性能は? 運用前提のHWプラットフォームはどれを選定すべきか? など、エッジAI特有の事前要件整理が基本です。

オブジェクティブ・デザインの段階でPoC開発をより実運用に近い形で実施でき、無駄な検証要素を省くことで実開発段階の開発期間を短縮させ、コストの適正化が期待できます。そして、エッジAI実装に適切なHWプラットフォームの選択によって、実使用環境に合った最適かつ柔軟な機器設計が実現できます。

エッジAIの運用では、対象環境が一定で変化がない場合はAI推論モデルのアップデートは必要ありません。しかし、特定用途向けに高い精度を出すために過学習気味に最適化された推論モデルの場合、外的環境の変化(例えば照明の位置、角度や照度、画角のずれなど)が微細な場合でも影響が出ることがあります。また、対象環境が変化する想定の場合は、あらかじめ想定される多様なパターンや想定外のケースを含め汎化性重視の学習を行い、運用状況によってはさらなる転移学習や再学習を行うことで環境や対象の変化に対応していくことが必要です。

これからのエッジAI活用へ

AIのニューラルネットワーク・モデルの基本研究は、ここ数年である程度先が見えると言われていますが、現実のAIソリューションの実装技術革新はまだまだ続いています。オープンスタンダードなAI開発環境やニューラルネットワーク・モデルを使うことでその進化の恩恵を享受しながら、エッジAI実装できる柔軟なHWプラットフォームの選択肢が充実することで、エッジAIの活用シーンはよりコストセンシティブな機器・用途に広がろうとしています。

AI導入を成功させるためには、利用する側がAIの技術情報だけでなく、AI開発の実情や市場の動きをある程度理解することが必要です。AI導入については、まずはAIはもちろん、多様なHWとSWの技術・ノウハウを持ち、お客様に最適なソリューションを提案できる富士ソフトに、まずご相談ください。

※記載している会社名、商品名は各社の登録商標または商標です。

 

薬師寺 秀徳
薬師寺 秀徳(Hidenori Yakushiji)

イノベーション統括部 先端技術支援部
モバイルインテグレーション室
次長

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