生産現場の“技術伝承”の課題にIoTで挑む

生産現場では、IoTという言葉をいたるところで耳にします。ところが、「IoT活用の具体的な成果は何ですか?」と問いかけると、よい返事は少ないのです。生産数の増加、稼働時間の拡大、段取り時間の削減、人的工数の削減、搬送時間の削減など、IoT活用の成功事例は数多くあります。IoTを取り入れさえすれば、このような成功が簡単に手に入るのでしょうか。

ここでは2回にわたり、IoT活用の現状と生産工場における課題およびその解決策についてお話しします。

製造業におけるIoTの現状

IoTはInternet of Thingsの略で、モノのインターネットと訳されます。世界中の機器がインターネットでつながると一般的な方々は理解されているでしょう。90年代にはすでに存在した言葉ですが、注目されたのは、ドイツがIndustrie 4.0を提唱した2010年頃からではないでしょうか。

日本は、精密で頑丈なハードウェアと、それを取り扱う優秀な作業員によって「モノづくり大国」といわれるようになり、Made in Japanは良品の代名詞となりました。日本はMade in Japanというブランドを確立しましたが、高度に発達した精密な設備と技術力の高い作業員による管理が必要な工場では、自動化が進まなくなってしまいました。製造業に従事する方々は、日本でIoTやスマートファクトリーがなかなか進まない状況を実感されているのではないでしょうか。

実際には、工場内だけでシステムが完結している自動化の事例は多くあります。これは、IoTというよりもM2Mといえます。M2Mとは、Machine to Machineの略で、設備の機器同士あるいは機器とPCを直接ネットワークでつなげて自動的にデータをやり取りしたり、機器を制御したりする仕組みです。いくつかの業種では30年ほど前から実現されています。インターネットではなく閉ざされたネットワークではあるものの、工場内に限ったIoTは実現しているともいえます。

製造業は“人頼み”では成り立たなくなる

日本の生産システムは、作業員がひとりで組み付けをして完成品を作るセル生産や、流れ作業を正確に時間内に行うライン生産が主流です。工場の設備は高い能力が必要とされる保全担当の作業員によって予防保全が行われ、常に精度が高い状態で生産できるよう整備されています。つまり生産現場は、能力の高い作業員の存在を前提にして成り立っているといえます。

しかし、工場の移転、熟練作業者の離職、労働人口の減少などが進むことにより、人的作業に高度な成果を期待し難くなる可能性があります。その課題解決の方法の一つが、IoTの実現です。

既に、製造業ではM2Mが実現できています。さらに人に頼らず高度な成果を得るために、単なるデータ収集や自動制御だけでなく、機器からどのようなデータを収集して、どのように選別・加工し、どのように利用するのか、そのためにどのように設備機器を制御、保全すべきなのか、高度な成果を得るためには何をどう解決するのか、IoTでどう実現するかを見極めることが重要です。

IoTを利用した技術伝承の実現へ

現場ではなにが起こっているのでしょうか。

生産現場では、まずは最優先課題として設備の見える化に注力します。設備の導入には目的があり、効果を期待していますので、結果と履歴から目的に対する効果、推移、発生事象を見える化し分析します。言うまでもなく見える化は重要ですが、実はその後の作業のほうがより重要で作業負荷がかかります。様々なデータを帳票化し、グラフ化して分析、改善すべきポイントを見つけ出し、その原因を解析して改善し、抑制……。結果を確認し、期待した効果が得られていなければまたその繰り返しです。生産現場では、このような途方もない努力が延々と引き継がれ研究されているのです。

こうして現場の熟練者達、いわゆる“匠”は、次世代の担い手を育てることでまた新たな匠を生み出してきました。モノづくりの現場では、OJT、作業手順書、マニュアル化など様々な教育や引継ぎが行われています。しかし前述したように熟練作業者の離職、労働人口の減少等が進めば、人から人への伝承には無理が生じてくることが考えられます。生産現場ではいま、技術伝承における早急な問題解決が必要になってきているのです。

そこで私は、IoTを利用して匠の技術伝承を実現すべきだと思います。匠は設備や工程の弱点を身に染みて理解していますので、匠の知識や技能を言葉やトレーニングで伝えるだけでなく、IoTとソフトウェアで自動化する必要があります。いわば、匠がいつでも見守ってくれている生産工場、“匠のオープン化”を実現するのです。

次回は“匠のオープン化”について詳しくお話します。

当社は、2020年2月12日(水)~ 14日(金)開催の「第4回 スマート工場 EXPO」に出展致します。ぜひご来場いただき、富士ソフトブースにお立ち寄り頂ければ幸いです。

  小林 仁志小林 仁志 (Hitoshi Kobayashi) エリア事業本部 中部支社 マニュファクチャリングソリューション部 第2技術グループ 次長 / フェロー

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