エンジニアの挑戦
2025年5月16日

若手エンジニアが0から1に挑戦しやすい場を構築する、ビルディングブロックという考え方

必要とされる技術が目まぐるしく変わる今の時代、エンジニアにも常に新しい技術に挑戦し、自らの専門領域を柔軟に広げていくことが求められます。富士ソフトにおいても、若手技術者の育成はとくに重要なテーマです。本記事では、社内外でコミュニティ形成に取り組み、自らの豊富なキャリアを活かして若手育成にも邁進する、システムインテグレーション事業本部 ビジネスソリューション事業部 大槻 剛に話を聞き、AWSのビルディングブロック(Building Blocks)という考え方への想い、現在取り組んでいること、今後取り組んでいきたいことを熱く語っていただきました。

登場社員のプロフィール
  • 大槻 剛
    システムインテグレーション事業本部 ビジネスソリューション事業部xDevOps 第2技術部 第5技術グループ
    主任/フェロー、クラウドxDevOpsエヴァンジェリスト

    クラウド&コンテナ推進エヴァンジェリストとして、またAWS認定 Ambassadors 兼 AWS Japan認定Top Engineerを務めています。
    アプリケーションフレームワークエンジニアとしてキャリアをスタートし、台湾でハードウェア設計インフラストラクチャエンジニア経験を積んだ後、アプリケーションとインフラの気持ちのわかるエンジニアとして、幅広いDevOpsプロジェクトに参加。
    クラウドやコンテナ技術とIaCに関する推進活動や、汐留オフィス食堂を利用したパブリックイベント「クラウド食堂」の立ち上げなども行っています。

飛び込んでみる、やってみる、ダメだったら変えてみる

──大槻さんの経歴を教えてください。

私は当社を一度退社して、戻ってきた経緯があります。最初の入社は2001年で、ECサイトプロジェクトの開発などに4年間従事していました。当時はちょうどJavaが登場したばかりで、多くのフレームワークが乱立しており、案件ごとにフレームワーク自体をカスタマイズしていく開発エンジニアを担当していました。オフショアという新しいビジネス戦略が生まれた頃、言語の異なる国へ基本設計書を書いてアジア諸国に発注し、生産性を上げるというプロジェクトに参加しましたが、コミュニケーションの壁を感じていました。
当時ベンチャー企業が躍進していた時代でもあり、友人の誘いで、ベンチャー企業の立ち上げメンバーになってみたいという可能性を夢見て、一度富士ソフトから転職をしてしまいました。そこで、システムの企画から開発をすべて自分でやる経験ができたのは、今になれば様々なトライと失敗から学ぶいい機会だったと感じています。

ベンチャー企業が安定稼働した頃、ちょうど私の親が台湾からハードウェアを輸入する事業を手がけていました。当時、オフショアで味わった苦境「もっと言葉が通じれば」が大きかったと思うのですが、台湾で開催されたコンピューターショーに出展していた企業の社長に、現地で働けないか交渉したところトントンと話が進んだのです。新たな可能性を求めて台湾に移住することとなり、そこで中国語を学びながらハードウェア・インフラエンジニアのスキルを獲得しました。2015年ごろ私事で結婚を機に、当社から「戻ってこないか」とお声がけをいただき、再入社することになりました。
その後は、従来のJavaアプリケーション開発のスキルに加えて、構成管理、インフラをコードで管理できるIaCなど、今では市場的立ち位置も確保された、アプリケーションとインフラ観点のあるエンジニアとして活動の場を広げました。そしてAWSを中心にコンテナ・クラウドxDevOpsエヴァンジェリストとして今に至ります。

──どのようなことを学んだと思いますか。

ここまで経験して学んだのは、「飛び込んでみる、やってみる、ダメだったら変えてみる」です。これまで経験したことはすべて、自分でまずは飛び込んでみて、わからないながらも試行錯誤することで、自分の強みを作ることにつながっていると感じています。成果が出ないときは、やり方を変えてみるのです。「できない」ではなく「どうしたらうまくいくか」を考えて行動していると、なんとか結果もついてきます。カッコよく言うと、結果を先に決めてそれに見合うように中身を埋めてきた、と言えるのかもしれませんね。

「本当に自分がやりたいこと、挑戦したいこと」に時間を使う

──再入社してからは、どのような仕事をしましたか。

再入社後は、プログラムとクラウドや仮想インフラストラクチャ構築の両方がわかるということで、大規模プロジェクトにアサインされ、インフラ設計とアプリケーション設計の調整を任されました。当時はJavaのようなオブジェクト指向型の概念を扱えるインフラエンジニアが今ほど多くはなく、私はプログラムで抽象化された事象を繋ぎ合わせて1つのシステム構成を作るオブジェクト指向のクラウドネイティブな開発手法が得意だったこともあり、会社から期待を寄せてもらったのだと思います。

その時出会ったのがAWSです。クラウドを自由に使いこなすことは、Javaプログラムでいうオブジェクト指向という考え方に近く、オブジェクト同士をつなげるようにインフラストラクチャを作ることができ、さらにコードで管理するということを推奨しています。そこで斬新かつ素晴らしいと衝撃を受けたのが「ビルディングブロック(Building Blocks)」という考え方でした。「ビルディングブロック」とはサービスを組み合わせてアーキテクチャを構成するというAWSの思想です。元々オブジェクト指向の概念に親しんできたこともあり、AWSを新たに学ぶことは億劫ではありませんでした。自分自身としても“コードもインフラもかけて仕事を楽しめるエンジニアになりたい”と考えていたこともあって、AWSにおける専門領域を広げていきました。現在は、国内に60人しかいないAWSアンバサダーの認定や、2023年からはTop Engineerの認定を受け、比較的大規模なAWSプロジェクトに設計やアドバイザとして参画し、航空、不動産、公共をはじめとするお客様の課題解決に取り組んでいます。

加えて当社は、AWSパートナーの最上位であるAWSプレミアティアサービスパートナーであり、私が参加し始めた当初から、設計・導入、運用サポートまで幅広いサービスを提供できる体制を整えており、組織としてAWSを得意としています。AWSの特徴はセキュリティをサービス提供の第一優先度とすることに加えて、Well Architected Frameworkやビルディングブロックをはじめとする先進的な設計思想と柔軟性に富んだサービスが選択肢としてあることです。世界中のエンジニアが開発・構築しそうな機能を、わざわざ開発することなく、ブロックのように提供し、繋いで組み合わせるように1つのシステムを作り上げることができます。このブロックという考え方によって、本来自分たちがやるべきビジネスロジックの開発や、ビジネスの仕組みづくりに時間を割けるようになります。さらにIaCという言葉が生まれる前から、ソースコードでインフラストラクチャを管理することが推進され、結果コスト管理をも意識できる仕組みとなるのです。
こうした、従来のインフラとアプリケーションのエンジニアが苦労していた仕組みを簡素化することで、イノベーションとは汎用的な部分に力を注ぐのではなく、「本来やりたい余計なこと」に力を注げる余地を作ることなんだと感じたのを覚えています。

──大槻さんの言う「本来やりたい余計なこと」に力を注ぐとは、どういったことでしょう。

「やってみたい」と感じたことにトライすることで、やるべきことの他の、本当にやりたいことの一歩目を作るということです。アイデアからくる、素晴らしいと思えるやりたいことや挑戦したいことは、目の前の取り組むべき仕事と比べれば「余計なこと」です。しかしエンジニアとしてのキャリアを考えれば、「今は余計なことでも長期的に見れば大切なこと」のはず。だからこそ、0から1を新しく、躊躇せずに踏み出すことが大切なのです。

0から1へ踏み出す際、気負ってしまう人がいます。「やるからには入念に準備しなければ」とか「条件がもっと整ってからじっくりやろう」といったものです。このような考えは、0から1ではなく、0を100にしようとする考え方です。決して悪いわけではありませんが、足がすくんでしまいがちです。多くのエンジニアが挑戦する機会をつかめず、0を1にできる人は必ずしも多くありません。しかし、そういった1歩1歩の積み上げができる人は大きくキャリアが前進します。行動しないまま留まるのではなく、行動してみてダメならやり方を変えて、どんどんチャレンジしてみた方が絶対に良い結果につながります。

私個人の捉え方ですが、当社は1を100にも200にも昇華できる会社です。真摯にお客様に向き合い、一緒に課題解決を進める姿勢は当社の特徴であり、強みだと思います。一方で良いことなのですが、勤務時間のほぼすべてをお客様のために費やしていることもあり、新たな分野に挑戦するための0から1には、相当なエネルギーが必要となります。私は、お客様から任された仕事を遂行しながら、「本当に自分がやりたいこと、挑戦したいこと」へのチャレンジも両立できるようになると、もっとすばらしい世界観を持つことができ、技術への興味と幅が広がるんじゃないかなと思っています。

0から1を作る。若手育成のための「ビルディングブロック」

──あらためて、これから取り組みたいことを聞かせてください。

後輩たちが0から1を作るサポートとして、例えば技術力をもった後輩たちを引っ張り上げて、身につけたスキルを世の中にアピールできる場を作りたい。そのためには、私自身がもっと社会的に影響力をもつ必要がありますし、後輩たちが積極的に参加できる場やコミュニティを作る必要があります。これが、いま私が取り組んでおり、これからも取り組んでいきたいことです。
私は技術も好きですが、それを広めることもしていきたい。経営層とは別の道で、この会社のエンジニアの価値を高めるお手伝いをしながら、会社もエンジニアも大きく成長していけるようになりたいですね。

当社には昔から「チャレンジ&コミュニケーション」という考え方があります。私はこれを、“分からないことは分からないと言えるのも大切で、周りの人とコミュニケーションして協力し合い、得意な人を頼って目標を達成すれば、結果としてお客様に満足していただくことができる”という、素晴らしいスローガンだと捉えています。だからこそ、単に本だけ手に取って頭でっかちに勉強するのではなく、遠慮せず先輩たちの心のドアをたたいてみて欲しいのです。

そのために、多くの人が集まる「場」を先に準備しておき、先輩達でサポートができるような環境作りを目指しています。例えば、社内の情報共有イベント「イノベーションカンファレンス」や、社外も含めたパブリックなコミュニティの場を提供する「クラウド食堂」といったイベントを企画・推進しています。ちょっと思いついた「こんなこともできるんじゃないか」や「新しいことをやってみたいね」を、気軽に活発に意見交換できるような場です。その他、AWSのコミュニティイベントなどにも若手と参加して、様々な分野の技術者や著名人と話す機会を作ったりもしています。

若手社員が自分の得意領域を開拓したいと考えたときに、こうした環境があれば、0から1に必要なエネルギーを浪費することなく、新しい「余計なことへの一歩」が踏み出せます。これが、若手育成のための「ビルディングブロック」もしくは「オブジェクト」として機能し、自分のやりたいことに集中できるようになれば、私としても本望です。

──大槻さんが大切にしていることを聞かせてください。

仕事の上では、「お客様を悲しませないこと」です。お客様と同じ目標を掲げるビジネスパートナーの立ち位置を大切にしています。そして、できる限りワンストップでお客様の課題を解決したいので、アプリケーションとインフラエンジニア、両方の気持ちのわかるエンジニアであり続けたいとも思います。

また、「チャレンジ&コミュニケーション」を実践する上で必要になるのが、ゴールに向かって目標を立てることです。目標がないとゴールに向かえないし、0を1にするのはかなり遠回りになると思います。プログラムでも、設計書(目標)を先に作っておかなければ、関わる人が増えるほどコミュニケーションロスが生まれるように、新たな挑戦も時間や労力が分散してしまいます。

富士ソフトは自分が定めた分野の1位を目指せる場所

──最後に、若手エンジニアに向けたメッセージをお願いします。

若手エンジニアに伝えたいことは、1位でも2位でも、何位を目指してもいいので、自分が得意だと思うことにチャレンジしてほしい、ということです。つねに1歩1歩にとりくむ努力をしていけば、その分野の1位になることも可能だと思います。
当社には多くのエンジニアが在籍しており、カバーしている領域も幅広く、何か疑問に思ったり問題にぶつかったりしたときは、誰かに聞けば必ず解決できます。社員の中にはその領域の権威だったり、特許をもっていたりする人も多く、先輩社員も質問や疑問にはしっかり答えてくれる方ばかりです。また、一度、必要とする技術や課題解決について集中し始めると、ものすごい加速力を見せて結果を出すことができるのが富士ソフトのエンジニアだと自信を持って自慢できます。スペシャリストになるには、非常に恵まれた環境です。まずは一歩を踏み出して、社内外の方に自分から声をかけるところから一緒に始めてみませんか。

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