今こそ見直すべき!ランサムウェア被害時のバックアップと復旧フロー

ランサムウェアによる攻撃は年々巧妙化し、多くの企業が被害にあっています。警察庁によると、2025年上半期だけで116件の被害が確認され、最多となっています※。今こそランサムウェア対策を見直しましょう。ランサムウェアの攻撃を100%防ぐことは難しく、システムに侵入されることを前提にした防御対策が不可欠です。本記事では、攻撃を受けた際のバックアップと復旧フローについて解説します。バックアップは、ランサムウェア攻撃を受けたときにデータを守る最後の砦です。復旧フローを見直すことで、攻撃を受けた際のシステム停止期間を短縮し、攻撃者からの身代金要求も拒否できます。事前の準備が企業の未来を守ります。
※参考:警察庁サイバー警察局「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」
- ランサムウェアは、悪意のある第三者が企業や個人のPCシステムに侵入し、データを暗号化、復旧のために身代金を請求するマルウェアの一種です。
- ランサムウェア対策の一例としてバックアップは、データを守る最後の砦として不可欠な役割を果たしています。
- 侵入された際にバックアップも同時に暗号化されてしまうこともあり、バックアップデータに対する防御も必要不可欠です。
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Tech Tips編集部富士ソフト「Tech Tips」編集部です。トレンドのIT用語をわかりやすく解説しています。
ランサムウェア対策としてのバックアップ重要性と現状認識

ランサムウェアの脅威は増え続けており、企業の情報セキュリティ対策としてバックアップの重要性が再認識されています。バックアップは、データを守る最後の砦として不可欠な役割を果たしています。しかしながら、現状では多くの企業がその効果的な活用に至っておらず、復旧作業の段階で思わぬ障害に直面しています。この章では、バックアップの重要性と企業での現状認識について詳しく探ります。効果的な対策を講じるために、現状を正確に把握することが求められます。
バックアップからの復旧に失敗する企業が多数存在する現状
近年、ランサムウェア攻撃を受けた企業がバックアップデータからの復旧に失敗するケースが増加しています。その主な要因は、バックアップの実施状況が不十分だったり、実際に復旧するプロセスが計画通りに進まないことです。さらに、侵入された際にバックアップも同時に暗号化されてしまう事例も報告されています。これによって多くの企業は、データの喪失による業務中断や経済的損失に直面しています。確実に復旧できる体制を整えることが重要です。
従来型バックアップの限界──バックアップデータへの侵害リスク
従来型のバックアップシステムは、ランサムウェアの脅威が増す中で、新たな課題を抱えています。これまでのバックアップ手法では、特定のサーバやストレージにデータを保存することが一般的で、そのためこれらのバックアップ自体が攻撃者の標的となる可能性があります。このようなバックアップは、特にネットワークに常時接続されている場合、感染リスクが高まります。最も懸念されるのは、ランサムウェアがバックアップデータに到達し、そのデータを暗号化してしまうことです。これにより、バックアップが無力化されるだけでなく、企業の復旧プロセスにも多大な影響が出る可能性があります。このような状況を防ぐためには、バックアップデザインの見直しとともに、最新の保護技術を導入することが急務です。
侵入後の備えとして不可欠なバックアップ設計の見直し

ランサムウェアの被害拡大が進む中、事後対応を見据えたバックアップ設計の見直しは重要です。今こそ、より効果的なバックアップ戦略を構築することが求められています。侵入後の備えを強化するためには、3-2-1ルールや書き換え不可のイミュータブル機能、エアギャップ機能などの技術を組み合わせて活用することが有効です。これらの戦略はデータの保護と復旧の迅速化を目的とし、被害の最小化にもつながります。
3-2-1ルールと多世代バックアップの実践
3-2-1ルールは、データ保護の黄金律とされ、3つのバックアップを2つの異なる媒体に保存し、1つはオフサイトに保管することを指します。この方法は、多様な障害や攻撃に対する冗長性を高め、データの喪失リスクを軽減します。さらに、多世代バックアップを組み合わせることで、バックアップの履歴を複数世代にわたって保存し、異なる時間軸での復元を可能にします。これにより、復旧の柔軟性が高まり、特定の時点を選択してデータを戻すことができます。このように、3-2-1ルールと多世代バックアップの併用は、より堅牢なバックアップ戦略の基盤となります。さらにクラウド利用増加やランサムウェア攻撃の高度化で「3-2-1-1-0ルール」も提唱されています。追加の1はオフラインまたは不変(イミュータブル)なコピーを持つこと、追加の0はバックアップの整合性、復元エラーがゼロであることを定期的に確認することを表しています。
イミュータブル機能
イミュータブル機能とは、バックアップデータを改ざん不可能にする技術です。ランサムウェアの攻撃を受けた際にも、データの保全性を確保できます。この機能を有効活用することで、攻撃後も元の状態のデータを保持し、そのまま復旧に利用することが可能です。特に、改ざんや削除が不可能な状態にすることで、ランサムウェアの脅威から安全を確保します。導入の際は、システムの互換性を確認することが重要で、事前にテストを実施することで安全性を高めることが求められます。
エアギャップ機能
エアギャップ機能は、データを外部ネットワークから物理的に隔離することで、セキュリティを向上させる方法です。この技術は、ランサムウェアがネットワークを介して侵入するリスクを低減します。エアギャップ機能を使用することで、バックアップデータがネットワークによる直接的なアクセスを受けずに保護されるため、攻撃による被害を防ぐことが可能です。重要なデータにはこのような隔離基準を設け、定期的な確認を行うことが、セキュリティ対策として効果的です。エアギャップ設定においては、アクセスプロトコルの明確化と非常時の接続手順の整備が必要です。
実務で役立つバックアップ復旧プロセスの構築

ランサムウェアによるデータ侵害を防ぐため、バックアップ復旧プロセスの構築は喫緊の課題です。ランサムウェアの被害拡大を防ぐための迅速かつ効果的な復旧手順の策定が求められます。復旧プロセスは、組織の事業継続において非常に重要な位置付けを占めており、定型化された手順を整備することで、迅速な復旧作業に取り組むことができます。この章では、現場に即した実践的なバックアップと復旧手順について解説します。
ネットワーク隔離と被害範囲の迅速把握ステップ
ランサムウェア攻撃が発生した際、ネットワークの迅速な隔離は要となります。感染が拡大するのを防ぎ、被害範囲を迅速かつ的確に把握するためには、詳細なネットワーク監視体制の整備が欠かせません。ネットワーク管理ツールを用いることで、異常な通信を即座に特定し、遮断する力が求められます。さらに、定期的なトラフィック監視と分析が、被害範囲の迅速な把握を助長します。具体的な手順を事前に策定し、社員全体で理解を共有することが大切です。
安全なバックアップからのリストアと復号ツールの活用
被害からの迅速な回復には、安全なバックアップからのリストアと、復号ツールの適切な活用が鍵を握ります。バックアップは必ず感染していない安全なデータから行うことが重要で、最新のウイルス対策製品と併用し、データ整合性を確認します。リストア後、復号ツールを活用して暗号化されたファイルを元の状態に戻すステップが必要です。これにより、組織全体での迅速な業務再開を支援し、被害を最小限に抑えます。復旧後は、今後の同様の被害を防ぐための教育や訓練を定期的に行うことも重要です。
バックアップ対策を強化するための運用プロセス

この章では、バックアップ対策を強固にするために運用プロセスの改善が重要であることを説明します。サイバー攻撃のなどが発生した際の対応プロセスをあらかじめ決めておくことや、復旧のための訓練を定期的に行い、レビューを共有しておくことで、緊急事態が発生した際も迅速に対応できる体制を構築することが可能となります。
インシデントレスポンスの策定
インシデントレスポンスは、サイバー攻撃などのセキュリティインシデントが発生した時の対応プロセスや活動のことを指します。ランサムウェア攻撃の被害を最小限にするために非常に重要です。まず、緊急時に即座に対応できるよう、事前に詳細なインシデント対応計画を策定します。この計画には、ネットワークの隔離手順、被害範囲の迅速な把握方法、そして復旧プロセスが含まれています。具体的には、訓練された担当者が中心となり、攻撃が確認された段階で迅速にネットワークを隔離し、感染の広がりを防ぎます。その後、詳細なログ解析やネットワークトラフィックの監視を行い、被害範囲を特定します。このプロセスは、具体的な手順書に基づいて行われ、チーム全体が迅速に役割を果たせるよう教育されています。こうした整備が、迅速な対応を可能にし、企業の損失を抑える要となります。
インシデントレスポンスを詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
インシデントレスポンスとは?実践に役立つ基礎知識と5つのステップ
復旧能力を担保するための定期テストとスキル向上
ランサムウェア被害時にも迅速に対応するため、定期的なバックアップ復旧テストと担当者のスキル向上が重要です。テストは被害をできる限り想定し、複数世代やイミュータブル形式のバックアップを用いて行います。ただ繰り返すのではなく、各テスト後に振り返りや改善を取り入れることで、常に高品質な復旧を実現し、チームの即応力を高めていくことが求められます。
全体を振り返る ランサムウェア対策におけるバックアップと復旧フロー最適化
本記事では、ランサムウェア対策としてのバックアップと復旧の重要性を、最新状況に基づき整理しました。2025年においては、ランサムウェア被害が企業の事業継続やサプライチェーンに深刻な影響を与えており、単なるバックアップでは不十分であることが明らかになっています。バックアップ先も含め、攻撃対象とならないよう保護する対策が求められます。
エアギャップやイミュータブル(改変不可)ストレージの活用により、本番運用環境から独立してバックアップを保持する設計が不可欠です。こうした設計は、バックアップが攻撃されても安全に復旧できる前提を確保します。復旧フローでは、ネットワーク隔離や迅速な被害範囲の把握、テスト済みの復号ツールを用いるプロセスを明確に定義する必要があります。
これらの対策は単に導入するだけでは意味が薄く、定期的な演習・テストを通じて運用可能性を担保することが重要です。特にセキュリティチームとインフラ運用チームが連携し、復旧体制を共通認識に基づいて整備しておくことで、実際の被害時にも迅速かつ確実な対応が可能になります。
ランサムウェア対策ソリューション「Riviiv(リヴァイブ)」

ランサムウェアの脅威がますます増大する中、情報セキュリティ部門において有効な対策ソリューションとして注目されているのが「Riviiv(リヴァイブ)」です。このソリューションは、迅速な侵入検知と被害の最小化に役立つ機能を備えており、企業に安心を提供します。
Riviivの特徴は、リアルタイムでのマルウェア異常検知を行い、ランサムウェアによるデータ改ざんを未然に防ぐだけでなく、バックアップからの迅速なリカバリ環境の構築・データ復旧を可能とする点です。これにより、業務の継続性が確保され、企業活動への影響を最小限に抑えることができます。加えて、使いやすいインターフェースが搭載されており、少ないリソースでの運用が可能な点も魅力的です。バックアップソリューションとして人気のRubrikを富士ソフトなら低コスト・月額制で提供いたします。バックアップ対策をお探しの方はお気軽にご相談ください。
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