お客様と対等にプロジェクトを成功に導く ──富士ソフトが貫く現場主導の要件定義

業務のデジタル化をはじめとするDXが進む現代において、企業の基幹システムにも柔軟性やスピードが求められるようになりました。しかし、その複雑さや関係者の多さから、要件定義や仕様確定の段階での認識齟齬が大きな課題となっています。こうした課題に対し、富士ソフトでは従来のウォーターフォール型の開発手法だけでなく、アジャイルやMVP(Minimum Viable Product)といったアプローチを積極的に取り入れ、上流工程からお客様と一体となって価値あるシステムを築き上げる取り組みを進めています。今回は、その実践の最前線で指揮を取る石本 展啓に、現場での課題感や解決へのアプローチ、そしてその背景にある想いを聞きました。
- お客様にとって要件定義や基本設計といった上流工程の段階では、運用可否を判断する材料が少ない
- 運用を想像できないまま開発が進んだ結果、受入テストの工程や運用開始後に大きなトラブルに発展することがある
- 業務系システムのアジャイル型開発は日本企業に合わないことが多い
- ウォーターフォール型を基本としつつ上流工程にアジャイル開発を組み込むことで、お客様とSIerの認識齟齬を減らす
- 要件定義や基本設計の段階でMVPを開発することによって、運用イメージをもつことができ、要件や仕様に対して正しい判断が下せる
- 結果的にトラブルが減り、精緻な見積をすることも可能になる
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石本 展啓技術管理統括部 副統轄部長
MVPエンジニアリング室 室長2001年富士ソフト入社。一括請負案件の上流から下流までの全工程を経験し、設計・開発の基礎技術を習得。以降、製造業、情報通信業、運輸業、官公庁(中央省庁)、独法/特法、通信教育出版業などのエンドユーザー様一括請負案件のPMを実行しながら、プロジェクト推進力を鍛錬。直近はラインマネジメント(事業部門の課長:150名規模体制→部長:500名規模体制→事業部長:1,800名規模体制、本社技術部門の副統括部長)を遂行しながら、全社事業部門のトラブルプロジェクトのシューティング、PM育成、社内基幹システム刷新プロジェクトの統括を実施。
要件定義や基本設計のドキュメントだけで運用していけるかの判断はできない

従来のウォーターフォール型開発においては、要件定義書や基本設計書といったドキュメントにもとづいてシステム開発が進行します。しかしそれらの静的な資料だけで、運用業務が本当に実現できるのかを、ユーザー自身が正確に判断するのは難しいです。とくに、業務に関わるエンドユーザーが「この仕様で現場の業務運用が回るのか」を確認しようとしたとき、一定のITリテラシーがなければ本質的な確認に至らないケースが多く見受けられます。その結果、完成したシステムに対して「思っていたのと違う」「現行システムのほうが使いやすい」といった声が上がり、大きなトラブルに発展することも少なくありません。
お客様のリテラシーに合った確認手段が必要となる
システム開発における確認手段が、SIer目線で提供されていることが、お客様との認識齟齬を生む要因かもしれません。要件定義や仕様確認の段階で、ドキュメントを提示して合意を得るというプロセスは、開発側のリスクヘッジとして一般的ではありますが、それがお客様の理解につながっていない場合もあります。SIerからすれば仕様を丁寧に説明したつもりでも、担当者にとっては「よくわからないまま承認せざるを得なかった」というケースが少なくないのです。

お客様が本当に確認したいのは、業務がそのシステムによってどう動くのか、運用に落とし込んだときに問題なく回せるのかという点です。場合によっては、お客様の要求を実現しようとしたときに、システムだけでなくお客様側の運用組織の体制を見直さなければならないこともあります。そういった大きな判断を、システムがどんな挙動をするのかわからない状態で下すことはできないでしょう。もっと実際の運用が見えるような形での確認手段が必要になります。
早い段階でMVPを開発し、要件を判断できる材料をご提供する

当社では、こうした問題を解決するために、上流工程からMVP(Minimum Viable Product)を開発してお客様に提示する取り組みを進めています。MVPは、要件定義や基本設計の段階でお客様の要求をもとに手早くシステムを形にし、実際のオペレーションや業務フローに近い形で確認を行うためのものです。ローコードツールや生成AIなども活用し、最短1週間程度というスピード感でMVPを構築します。これにより、お客様は自らの業務がどのようにシステムで実現されるのかを具体的に確認でき、「これでオーケー」「ここはイメージと違うので修正を」と、自信をもって判断する材料を得られます。
今は世の中にさまざまなプロトタイプツールがあるので、わざわざ上流工程で手間のかかるMVPを開発する必要はあるか、と考える方もいます。ですが私は、ERP (Enterprise Resource Planning)のような、業務に密接に関係するシステムほど必要だと思っています。誰かがデータを更新し、そのデータを誰かが確認し、データの状態が一定レベルに変わったとき、次の誰かがそれを見て業務をする、といった流れをシミュレーションします。いろんなステークホルダーの、それぞれの目的に応じた業務ができるかを確認するには、ある程度のシステム、データ、遷移を実現しないと、なかなか実運用を想定したユースケースにはならないのです。こうしたオペレーション視点の確認作業は、プロトタイプツールでは難しい場合が多いのではないでしょうか。
お客様に「本気の確認」をしていただくために
MVP開発の重要な目的は、お客様に「本気の確認」をしてもらうことです。システムの最終成果物に対する責任は開発側だけでなく、お客様にもあります。最終的に仕様を確定するのはお客様で、そこは本気で確認し、腹をくくって決断していただく必要があります。このことは私自身、いつもお客様に明確に伝えていることです。そう伝える分、決断していただくための材料は単なるドキュメントではなく、お客様にとってわかりやすく、判断しやすい形で提示したいのです。開発したMVPはあくまで確認用であり、認識を合わせるためのツールなので、目的を終えたら廃棄することになります。実際の成果物にならないものに工数をかけることになりますが、お客様がしっかりと判断できるために時間と労力を使う方が、私にとっては重要です。そうして信頼を得ることで、その後の作業をスムーズにしてくれる場合がとても多いのです。

うまくいくストーリーを作り、自ら主導していく
プロジェクト推進において私が最も重要だと考えているのは、SIerとしてプロジェクトを主体的に引っぱっていくことです。お客様の希望を叶えるためにも、必ずうまくいくストーリーを作り、「我々が引いたレールに安心して乗ってください」というスタンスでのぞみます。「当社はここまでやります。お客様も、いつまでにこれをやってください。」「御社の社長にも上申してください。当社も社内で確約を取ります。」「ここまでくれば、当社から社長様のところに出向き説明しますよ。」といったように、つねに主体的に、そしてお客様を巻き込んで、プロジェクトを進めてまいります。
そのために、お客様との関係性はつねに対等であり、お互い言うべきことはしっかり主張し合うように心がけています。そういう関係でなければ、大きなプロジェクトは成功しないからです。これはお客様に対してだけでなく、社内のメンバーにも同じスタンスです。立場的に私が指針を出す役目が多いのですが、成功するために本気で考え抜いた意見には、本気でディスカッションし、より良い提案にしていくことに労を惜しみません。 仮に、トラブルに巻き込まれても、そのトラブルを楽しむようなところもあるかもしれませんね。そんなやり方を、これからも大切にしていきたいです。
少し話は変わりますが、当社は新たな挑戦として、2025年4月、システムインテグレータ社と共同で、新会社「株式会社BizSaaS」を設立しました。 実は私も、そのBizSaaS社に参画し、中堅・大手企業向けのERP提供に関わっていきます。これは、速やかなMVP開発をするための取り組みの1つでもあり、私のこれまでの経験・知見を活かして、これからもお客様をご支援していければとワクワクしています。

●株式会社BizSaaSについて
株式会社BizSaaSは、富士ソフトと株式会社システムインテグレータとの共同出資により2025年4月に設立。クラウドERP「BizSaaS」の製品を開発中です。
https://bizsaas.cloud/
※記載の会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。

