品質向上とコスト削減を実現するモデルベース開発(MBD)とは

自動車業界を中心に、モデルベース開発(MBD=Model Based Development)の重要性が増しています。そこで注目を集めているのが、富士ソフトの「MBDプロセス委託サービス」です。「モデルをどう作ったらよいのかわからない」「モデルベース開発をするためのリソースが足りない」「迅速にモデルを開発する必要がある」といった要望をもったお客様の課題解決に貢献しています。本記事では、当社のMBDプロセス委託サービスの強みとそれがもたらす価値について、担当の伊賀 優に話を聞きました。
- 標準化されたモデルベース開発プロセスにより、一定水準のモデル一式を提供できる
- 自ら開発環境を整えなくてよいため、これから1つめのモデルを作る方に向いている
- 自動化の環境が整っているため、短期間でモデルを作ることができる
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伊賀 優
インダストリー事業本部 インダストリービジネス事業部 エンベデッドテクノロジー部
副部長2002年、新卒で富士ソフト入社。約20年自動車関連の開発業務に従事。10年ほど前にモデルベース開発の技術習得および業務をはじめ、以降MBD関連の業務遂行や人材育成に携わった。5年前から全社MBDの戦略オーナーを担当。MBD関連のソリューションやサービスの企画・開発を行っている。
モデルベース開発が必要とされるようになった経緯

モデルベース開発(MBD)とは、一般的には、コンピュータ上にシミュレーションを行うための「モデル」を作成し、挙動の検証と開発を繰り返す、自動車業界で採用されることが多い開発手法です。設計工程でコンピュータ上に作成する「モデル」を用いることで、シミュレーション検証を行いながら複雑な組み込み開発を進めることができるため、納期短縮と品質向上が可能になります。
昔はプロトタイピング開発だったので、原理検証をした上で試作機を作り、検証するプロセスを繰り返していました。しかし、たとえばエンジンを開発するとなると、一機試作するだけでも大きなコストがかかります。そこで開発効率を上げるために、コンピュータ上でシミュレーションをするようになりました。そして、検証済みのモデルをそのままECUに書き込めた方がいいということで、MBDが採用されるようになってきた経緯があります。
自動車・建設機械等の開発において必要不可欠な工程
現在の自動車部品の多くは、自動制御されています。緻密な制御をソフトでやるとなった時点で、どうしても制御ソフトに対する検証を行わなければなりません。制御ソフトが間違っていると自動車本体に不具合が生じる恐れがあるからです。MBDは30年くらい前に概念が生まれ、15~20年前には形になっていました。そこから本格的にツール群やプロセスの整備が進み、導入や横展開がされるようになったのは10年ほど前になります。そのタイミングで当社も自動車のMBDに参入しました。
MBDが使われることが多いのは、エンジンで、次にシャシー制御です。シャシー制御とは自動車の足回りの制御で、車両の姿勢を保ち、操縦安定性を高める制御です。サスペンションやステアリング、ブレーキで、それぞれのアクチュエータを単純に制御するだけではなく、車両の操縦安定性を高めたり、横滑りを防止するために、各アクチュエータをどう制御するか、丹念にシミュレーションして検証します。
MBDは、実機を用いた検証が難しい航空・宇宙開発でも使用されており、最近は、パワーショベル、トラクター、ローラー、採掘機といった建設機械などのさまざまな制御ソフト開発にも用いられています。

クオリティ、コスト・デリバリーそれぞれでメリットがある
MBDのメリットは、品質面はもちろん、コスト・デリバリー面でも、開発工数の削減、開発工期の短縮が可能な点です。
品質面でのメリットは、実機を作る前にあらかじめ品質担保ができることです。実機を作ってから問題が発覚すると手戻りが大きいような場合でも、事前にシミュレーション環境で検証ができます。またソフト上でシミュレーションをするので、仕様変更しやすい点や、実機ではできない検証が可能な点もメリットとなります。
コスト・デリバリー面では、開発工程全体のコストを圧縮できることです。設計段階での工数は増えますが、検証工程が少なくなったり、試作の回数や修正を減らしたりできるため、結果として開発工期を短縮でき、全体の工数削減につながるのです。

富士ソフトの特徴は6つのスキル領域でエンジニアを育成していること
MBDと一言でいっても、必要とされる技術は多岐にわたります。当社はお客様の実現したいことをヒアリングし最適な提案をするために、必要とされるスキル領域を6つに整理し、それぞれの分野でエンジニアを育成してきました。どのスキルを保有するエンジニアをアサインするかは、お客様とのコミュニケーションを通して判断していきます。
6つのスキル領域とは、ベースとなるモデルを作成するMBDエンジニア、自動車工学や制御工学の知見もある制御エンジニア、MBSEのプロセス導入支援や遂行ができるMBSEエンジニア、組込開発知見がありオートコードのカスタマイズができるオートコードエンジニア、MBD向けの自動化システムを構築できる自動化インテグレータ、HILS環境を構築できるHILSエンジニアの6分野です。

MBDの人材育成は、一人前になるのに3~5年はかかるといわれていますが、こうした体制で300人近いMBD系のエンジニアがいるのは、当社の特徴です。また、自動車工学や制御工学を理解し、メーカーのお客様とスムーズなコミュニケーションができるエンジニアがいることや、6分野それぞれで専門特化した人材を育成していること、そして特定のツールに縛られることなくお客様の状況に合わせて最適な提案ができる点が、当社の大きな強みだと自負しています。
モデルベース開発の課題は「成果を出すまでのコスト」
MBDを行うには、開発環境の整備や開発プロセスの構築などさまざまな投資が必要になるため、初期コストは小さくありません。またすぐに効果が出るものでもないため、迅速な結果が求められるビジネス環境では、投資しにくい分野と判断されることもあります。一方で、メーカーによっては新入社員教育でMBDを行ったり、業績にとらわれずMBDの予算は確保し続けたりするなど、重要視されているお客様も多いのです。顧客にとって課題となる初期コスト(開発ツール費用、人材育成費用、プロセス構築費用等)をかけすぎずに、スモールスタートで段階的に進めて成果を確かめることができれば、本格的な導入もしやすくなります。そのためにまずは「MBDプロセス委託サービス」で、初期コストの削減を実現しつつ、スモールスタートのMBDに取り組んでいただければと思います。
まずは一定水準モデルの、短納期導入をご支援します
当社がご提供する「MBDプロセス委託サービス」にお任せいただけると、開発ツールの導入や、人材育成、プロセス構築にかかる費用や時間を圧縮できます。お客様は短期間で一定水準のモデルを手に入れることができ それを使って効果確認や人材育成ができるため、初期コストを抑えつつ早期にMBD導入を進められるようになります。
すでにMBDを導入した場合にも、それをどう活用するか、人材リソースや開発期間などの問題に対しても、当社がお役に立てると思います。

お客様の中に入って、お客様と一緒に作っていく
個人的なお話になりますが、私は、お客様と一緒に作っていく姿勢を重視しています。お客様と対で向き合ってコミュニケーションするというのではなく、一緒に隣で、同じ目線で課題解決に取り組む姿勢を大切にしてきました。
その上で、お客様に喜んでほしい、期待を超えたい、という思いが強くあります。お客様の想像を1つ超えたい。「そこまでやってくれてたんだ!」「こんなの仕込んでいたんだ!」と、驚かせたい。いたずら心ではありませんが、良い意味で驚いていただける仕事をしようと心がけてきました。それがお客様にも伝わり、口コミによるご依頼につながっているのだと感じています。
※記載の会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。

●「MATLAB EXPO 2025 Japan」に出展
富士ソフトは世界最大級のMATLAB、Simulink の総合テクノロジカンファレンスである「MATLAB EXPO 2025 Japan」に出展します。本記事でご紹介のMBDプロセス委託サービスや、MATLAB/Simulink製品ファミリを活用したソリューション等をご紹介する予定ですので、ご興味がある方はぜひお越しください。
日時:2025 年 5 月 29 日 9時30分受付開始
場所:グランドニッコー東京 台場
開催概要:https://www.matlabexpo.com/jp/2025.html