阿部良平
富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 営業統括部
ソリューション営業部 第4営業グループ
2014年 富士ソフト株式会社入社。お客様付きのアカウント営業として活動したのち、2024年よりintra-martのソリューション営業担当としてお客様へご提案を実施。
モダナイゼーションとは、老朽化したITシステムやアプリケーションを最新の技術や環境に移行し、システム全体を近代化することを指します。単なるシステムの更新ではなく、ビジネス環境の変化に対応できる柔軟性や拡張性を持ったシステムへと刷新することが目的です。
モダナイゼーションは、レガシーシステムを最新技術基盤へと移行させ、業務効率やセキュリティを向上させる取り組みです。英語の「Modernization」に由来し、直訳すると「近代化」や「現代化」を意味します。
具体的には、古いプログラミング言語で書かれたシステムを新しい言語に書き換えたり、オンプレミス環境からクラウド環境へ移行したりする作業が含まれます。また、システムのアーキテクチャを見直し、マイクロサービス化やAPI連携を実現することもモダナイゼーションの一環です。
レガシーシステムとは、導入から長期間が経過し、現在の技術水準では古くなったシステムのことです。多くの企業では、基幹系システムなどで20年以上前の技術が使われているケースも珍しくありません。
こうしたシステムは維持管理に多大なコストがかかるだけでなく、セキュリティリスクも高まっています。技術者の高齢化や退職により、システムを理解している人材が不足するという問題も深刻化しています。さらに、新しい技術との連携が困難なため、DX推進の大きな障壁となっているのが現状です。
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、レガシーシステムを放置した場合、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘されました。これは「2025年の崖」問題として広く知られています。
また、デジタル化の加速により、ビジネスのスピードや柔軟性が競争力を左右する時代となりました。クラウドサービスやAI、IoTなどの新技術を活用するためには、それを支えるシステム基盤の近代化が不可欠です。こうした背景から、多くの企業がモダナイゼーションに取り組むようになっています。
モダナイゼーションには多くのメリットがありますが、同時に注意すべき点も存在します。ここでは、システム刷新によって得られる効果と、検討時に押さえておくべきポイントを整理します。
まず、保守運用コストの削減が期待できます。レガシーシステムでは、専門知識を持つ技術者への依存度が高く、人件費が増大しがちです。モダナイゼーションによって標準的な技術を採用すれば、保守に必要な人材の確保が容易になり、コスト削減につながります。
セキュリティ強化も重要なメリットの一つです。古いシステムではセキュリティパッチが提供されなくなることが多く、サイバー攻撃のリスクが高まります。最新環境への移行により、セキュリティレベルを大幅に向上させることができます。
さらに、業務効率化や柔軟性の向上も見込めます。クラウドサービスを活用すれば、必要に応じてリソースを拡張でき、新しい機能の追加もスムーズに行えます。APIによる外部サービスとの連携も容易になるため、DX推進の基盤として機能します。
| メリット | 具体的な効果 | 期待される成果 |
|---|---|---|
| コスト削減 | 保守運用費の低減 | 年間運用費の20〜40%削減が一般的 |
| セキュリティ強化 | 最新パッチの適用 | 脆弱性リスクの大幅低減 |
| 業務効率化 | 処理速度の向上 | 業務時間の短縮と生産性向上 |
| 柔軟性向上 | 迅速なシステム拡張 | ビジネス変化への迅速な対応 |
一方で、モダナイゼーションには初期投資が必要です。システムの規模や複雑さによっては、数千万円から数億円規模のコストがかかる場合もあります。投資対効果を慎重に見極める必要があります。
移行期間中の業務への影響も考慮すべき課題です。システム切り替え時には一時的に業務が停止したり、新システムへの習熟に時間がかかったりすることがあります。段階的な移行を検討するなど、業務への影響を最小限に抑える工夫が求められます。
また、既存システムに蓄積されたデータやノウハウをどのように引き継ぐかという課題もあります。データの移行作業には慎重な検証が必要であり、失敗すれば業務に重大な支障をきたす可能性があります。
モダナイゼーションを成功させるには、計画的かつ段階的なアプローチが不可欠です。ここでは、実践的な進め方とポイントを解説します。
まずは、現行システムの詳細な現状分析から始めましょう。システムの構成、使用している技術、依存関係、業務フローなどを網羅的に把握することが重要です。
現場の担当者へのヒアリングを通じて、システムの課題や改善要望を具体的に収集します。技術的な問題だけでなく、業務上の課題も明らかにすることで、より効果的なモダナイゼーションが実現できます。
また、システムのドキュメントが不足している場合は、この段階で補完しておくことが望ましいでしょう。既存システムの仕様を正確に理解することが、後の工程でのトラブルを防ぐ鍵となります。
現状分析の結果を踏まえて、どの手法でモダナイゼーションを進めるかを決定します。リホスト、リプラットフォーム、リファクタリング、リビルドなど、複数の選択肢から最適なものを選びましょう。
全システムを一度に刷新するビッグバン方式と、段階的に移行するインクリメンタル方式のどちらを採用するかも重要な判断です。一般的には、リスクを分散できる段階的移行が推奨されます。
移行の優先順位を決める際は、ビジネスへの影響度と技術的な難易度を考慮することが大切です。影響が大きく難易度が高いシステムは慎重に扱い、まずは小規模なシステムで経験を積むアプローチが有効です。
策定した戦略に基づいて、システムの実装を進めます。新システムの開発と並行して、既存システムから新システムへのデータ移行手順も準備しましょう。
テスト工程では、機能テストだけでなく、性能テスト、セキュリティテスト、運用テストなど、多角的な検証が必要です。特に基幹系システムでは、業務への影響を最小限に抑えるため、本番環境と同等の条件での十分なテストが求められます。
並行稼働期間を設けて、新旧システムを同時運用しながら動作確認を行うことも、リスク軽減の有効な手段です。問題が発生した場合にすぐに元のシステムに戻せる体制を整えておくことが重要です。
システム移行後は、新しい環境に適した運用体制を構築します。クラウド環境の監視方法や、インシデント発生時の対応手順などを明確にしておきましょう。
利用者への教育も重要な要素です。新システムの操作方法やベストプラクティスを共有し、スムーズな定着を図りましょう。マニュアルの整備やヘルプデスクの設置など、サポート体制の充実も検討するとよいでしょう。
また、モダナイゼーションは一度実施すれば終わりではありません。技術の進化やビジネス要件の変化に応じて、継続的にシステムを改善していく姿勢が大切です。定期的なレビューを行い、さらなる最適化の機会を探ることが求められます。
モダナイゼーションプロジェクトを成功させるには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、実践的な注意点を紹介します。
モダナイゼーションには相応の投資と期間が必要です。経営層の理解と継続的な支援がなければ、プロジェクトは頓挫する可能性があります。
経営層に対しては、技術的な説明だけでなく、ビジネス上のメリットを明確に示すことが効果的です。コスト削減額、業務効率化の効果、リスク低減などを定量的に提示し、投資対効果を可視化できるようにしましょう。
また、短期的な成果を示せる小規模なプロジェクトから始めて、段階的に拡大していくアプローチも有効です。初期の成功体験が、その後のプロジェクト推進の原動力となります。
モダナイゼーションには高度な専門知識が必要なため、外部のベンダーやコンサルタントと協力することが一般的です。パートナー選定は、プロジェクトの成否を大きく左右します。
技術力はもちろん、自社の業界や業務に対する理解度、過去の実績、コミュニケーション能力なども評価基準に含めます。複数のベンダーから提案を受け、総合的に判断することが望ましいでしょう。
また、ベンダー依存を避けるため、社内にも技術ノウハウを蓄積していく取り組みが重要です。丸投げではなく、自社の担当者も積極的にプロジェクトに関与する体制を構築しましょう。
大規模なシステムを一度に刷新しようとすると、失敗時のリスクが大きくなります。可能な限り段階的にモダナイゼーションを進め、各段階で検証を行うアプローチが推奨されます。
各段階でのマイルストーンを明確にし、進捗状況を定期的に評価しましょう。問題が発生した場合は早期に対処し、必要に応じて方針を修正する柔軟性も大切です。
| リスク要因 | 対策 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 予算超過 | 詳細な見積もりと予備費確保 | 月次での予算管理 |
| スケジュール遅延 | 余裕を持った工程設定 | 週次での進捗確認 |
| データ移行失敗 | 十分なテストと検証 | データ整合性チェック |
| 利用者の抵抗 | 早期からの情報共有と教育 | フィードバック収集 |
モダナイゼーションは新しいシステムへの移行ですが、既存システムの全てを捨て去る必要はありません。長年蓄積されたデータやビジネスロジックは貴重な資産です。
既存のデータベースを活用しながら、アプリケーション層だけを刷新するアプローチも検討できます。また、既存システムの一部をAPIでラップして、新システムから利用可能にする方法もあります。
既存システムのドキュメントやソースコードから、ビジネスルールを正確に抽出することも重要です。暗黙知として組織に蓄積されている知識を形式知化し、新システムに確実に引き継ぐ努力が求められます。
モダナイゼーションは、レガシーシステムの課題を解決し、企業の競争力を強化するための重要な取り組みです。コスト削減やセキュリティ強化、業務効率化など、多くのメリットが期待できる一方で、初期投資や移行リスクといった課題も存在します。
成功のポイントは、現状を正確に分析し、自社に適した手法を選択すること、そして段階的かつ計画的にプロジェクトを進めることです。経営層の支援を得ながら、適切なパートナーと協力し、リスク管理を徹底することで、失敗を回避できます。
DX推進が加速する中、モダナイゼーションの重要性はますます高まっています。本記事で紹介したポイントを参考に、自社のシステム刷新に取り組んでみてください。
富士ソフトは、お客様の既存IT資産を有効活用しつつモダナイゼーションするご支援を行っております。数あるソリューションの中でも、レガシーシステムからの脱却に適したNTTデータ イントラマート社が提供する「intra-mart」を特におすすめしております。
NTTデータ イントラマート社の認定パートナーとして、専門技術者50名以上を擁するスペシャリスト集団がお客様の業種・業務に応じた最適な提案を行い、業務効率化・属人化の解消・DX基盤の構築を支援いたします。ぜひご相談ください。