阿部良平
富士ソフト株式会社
ソリューション事業本部 営業統括部
ソリューション営業部 第4営業グループ
2014年 富士ソフト株式会社入社。お客様付きのアカウント営業として活動したのち、2024年よりintra-martのソリューション営業担当としてお客様へご提案を実施。
業務プロセスの可視化とは、組織内で行われている業務の流れや手順を、図表やフローチャートなどを用いて目に見える形にすることを指します。日常的に行われている業務は、担当者の頭の中や暗黙知として存在していることが多く、全体像を把握することが困難な状態にあります。
この可視化によって、誰が・いつ・どのような作業を・どの順序で行っているのかを明確にし、業務の実態を客観的に理解できるようになります。
業務プロセスの可視化を行う主な目的は、業務の現状を正確に把握し、改善の糸口を見つけることにあります。多くの組織では、業務が属人化しており、特定の担当者しか業務の詳細を把握していないという状況が見られます。
可視化を通じて、業務のムダや重複、ボトルネックとなっている工程を発見できます。また、業務の標準化や効率化を進める際の基礎資料としても活用されます。
さらに、組織全体で業務の流れを共有することで、部門間の連携強化や情報共有の円滑化にもつながります。
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や働き方改革の必要性が高まる中、業務プロセスの可視化への関心が高まっています。リモートワークの普及により、対面でのコミュニケーションが減少し、業務の進め方を明文化する重要性が増しています。
また、人材の流動化が進む中で、業務の引き継ぎや新人教育を効率的に行うためにも、業務プロセスの可視化が不可欠となっています。
組織の規模が大きくなるほど、部門間の連携や業務の複雑さが増すため、全体最適を実現するための手段としても注目されています。
業務プロセスを可視化することで、組織にさまざまな効果がもたらされます。ここでは、可視化によって得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。
業務プロセスの可視化により、組織内で行われている業務の全体像を俯瞰的に把握できるようになります。各部門や担当者がどのような業務を行っているのか、業務同士がどのように関連しているのかが明確になります。
これにより、経営層や管理職は組織全体の業務状況を正確に理解し、適切な意思決定を行えるようになります。また、現場の担当者も自分の業務が組織全体の中でどのような位置づけにあるのかを認識できます。
全体像の把握は、業務の優先順位を判断する際や、リソース配分を最適化する際にも役立ちます。
業務プロセスを可視化することで、これまで気づかなかった課題や改善の機会を発見できます。業務フロー図を作成する過程で、ムダな工程や重複作業、承認ルートの複雑さなどが明らかになることがあります。
また、ボトルネックとなっている工程や、特定の担当者に業務が集中している状況も見えてきます。こうした課題を特定することで、具体的な改善施策を検討できるようになります。
可視化によって、問題の所在が明確になるため、関係者間での課題認識の共有もスムーズに進みます。
業務プロセスの可視化は、業務の標準化を進める上での基盤となります。業務の手順を明文化することで、担当者による作業のばらつきを減らし、一定の品質を保つことができます。
標準化された業務プロセスをもとに、不要な工程を削減したり、作業順序を見直したりすることで、業務の効率化を実現できます。また、システム化やRPA導入を検討する際にも、可視化された業務プロセスが要件定義の基礎資料となります。
効率化によって生まれた時間を、より付加価値の高い業務に充てることが可能になります。
業務プロセスが可視化されていると、組織内での情報共有が円滑に進みます。新しく配属された担当者や異動してきたメンバーも、可視化された業務フロー図を見ることで、業務の流れを理解しやすくなります。
担当者の休暇や退職時の引き継ぎも、業務プロセスが文書化されていることでスムーズに行えます。属人化していた業務を組織の共有資産として蓄積できるため、特定の担当者に依存するリスクを軽減できます。
部門間での連携が必要な業務においても、可視化された情報をもとに協力体制を構築しやすくなります。
業務プロセスの可視化は、ヒューマンエラーの防止にも効果を発揮します。業務の手順が明確になることで、作業の抜け漏れや手順の間違いを減らすことができます。
チェックポイントや注意事項を業務フロー図に組み込むことで、担当者が確認すべき項目を見落とすリスクが低減します。また、複数の担当者が関わる業務では、誰がどの段階で何を確認するのかが明確になり、責任の所在も明らかになります。
エラーが発生した場合も、可視化された業務プロセスをもとに原因を特定しやすくなり、再発防止策の検討にも役立ちます。
業務プロセスの可視化を効果的に進めるには、適切な手順に従って取り組むことが重要です。ここでは、可視化を実践する際の具体的なステップを解説します。
段階的に進めることで、無理なく確実に業務プロセスの可視化を実現できます。
業務プロセスの可視化を始める際は、まず現状を把握し、可視化の対象となる業務を選定します。組織内のすべての業務を一度に可視化しようとすると、作業量が膨大になり挫折する可能性があります。
最初は、課題が顕在化している業務や、改善効果が期待できる業務を優先的に選ぶとよいでしょう。具体的には、担当者からのヒアリングや業務日報の分析を通じて、時間がかかっている業務や問題が発生しやすい業務を特定します。
対象業務を選定する際は、関係者の理解と協力を得ることも大切です。可視化の目的や期待される効果を説明し、前向きに取り組める環境を整えましょう。
対象業務が決まったら、業務の棚卸しを行います。担当者へのインタビューや業務観察を通じて、実際にどのような作業が行われているのかを詳細に把握しましょう。
業務の開始から完了までの一連の流れ、各工程で使用する帳票や資料、関係する部門や担当者、所要時間などの情報を収集します。この際、担当者の経験や勘に頼っている部分も含めて、できるだけ詳しく聞き取ることが重要です。
複数の担当者が同じ業務を行っている場合は、それぞれの進め方を確認し、手順にばらつきがないかも確認しましょう。
収集した情報をもとに、業務フロー図を作成します。業務フロー図は、業務の流れを視覚的に表現したもので、開始から終了までの手順を図式化します。
フローチャートの記号を用いて、処理、判断、データなどを表現します。一般的には、長方形が処理や作業、ひし形が判断や分岐、楕円が開始や終了を示します。矢印で工程の順序を示し、業務の流れを分かりやすく表現します。
作成したフロー図は、担当者に確認してもらい、実際の業務と相違がないか検証します。必要に応じて修正を加え、正確な業務プロセスを表現できるよう調整します。
業務フロー図ができあがったら、そこから課題を抽出します。ムダな工程がないか、重複作業はないか、承認ルートは適切か、ボトルネックとなっている箇所はないかなどの視点で分析します。
関係者を集めてワークショップを開催し、可視化された業務プロセスを見ながら改善点を議論することも有効です。現場の担当者からは、日々の業務で感じている課題や改善アイデアが出てくることがあります。
抽出した課題は、優先順位をつけて整理します。改善効果が大きく、実現可能性の高いものから着手していくとよいでしょう。
課題が明確になったら、具体的な改善施策を検討します。業務の手順変更、承認フローの簡素化、システム化の検討など、さまざまな選択肢が考えられます。
改善施策を実施する際は、関係者への説明と合意形成を丁寧に行います。変更内容を周知し、必要に応じて研修や説明会を実施します。また、改善後の業務プロセスも可視化し、新しい手順を明文化しておきます。
改善の効果は定期的に測定し、期待した成果が得られているか検証します。必要に応じてさらなる改善を継続的に行うことで、業務の質を高めていくことができます。
| ステップ | 主な作業内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現状把握 | 対象業務の選定、関係者の特定 | 小さな範囲から始める |
| 情報収集 | ヒアリング、業務観察、資料収集 | 実態を正確に把握する |
| フロー図作成 | 業務の流れを図式化する | 担当者と内容を確認する |
| 課題抽出 | ムダや問題点を特定する | 現場の意見を聞く |
| 改善実施 | 施策の検討と実行、効果測定 | 継続的に見直す |
業務プロセスの可視化を成功させるには、いくつかの注意点があります。よくある失敗例とともに、効果的に進めるためのポイントを解説します。
これらの注意点を意識することで、可視化の取り組みを確実に成果につなげることができます。
業務プロセスの可視化は、現場の担当者の協力なしには進められません。可視化の目的や意義を丁寧に説明し、担当者の理解と協力を得ることが不可欠です。
監視や評価のためではなく、業務改善や働きやすさの向上が目的であることを明確に伝えましょう。また、現場の意見やアイデアを積極的に取り入れる姿勢を示すことで、前向きな参加を促すことができます。
可視化の過程で現場の負担が過度に増えないよう、配慮することも大切です。
業務プロセスの可視化を始める際、最初から完璧な成果物を目指すと、作業が進まなくなる恐れがあります。まずは大まかな流れを可視化し、徐々に詳細を追加していくアプローチが有効です。
また、すべての業務を一度に可視化しようとせず、優先度の高い業務から順番に取り組むことで、継続的に成果を出すことができます。可視化した内容は定期的に見直し、業務の変化に合わせて更新していくことが重要です。
完璧を求めて動けなくなるよりも、まず始めて改善を重ねる姿勢が望まれます。
業務プロセスを可視化しただけで満足してしまい、その後の活用がおろそかになるケースがあります。可視化はあくまで手段であり、目的は業務改善や効率化の実現です。
可視化した情報をもとに、具体的な改善施策を検討し、実行に移すことが重要です。また、可視化した業務フロー図を、新人教育や引き継ぎの資料として活用することで、投資効果を高めることができます。
定期的に可視化した内容を見直し、業務の実態と乖離していないか確認することも忘れないようにしましょう。
業務プロセスの可視化でよくある失敗例として、まず、トップダウンで一方的に進めてしまい、現場の反発を招くケースがあります。現場の意見を聞かずに進めると、実態とかけ離れた内容になる可能性があります。
また、詳細にこだわりすぎて作業が進まない、作成した資料が複雑すぎて誰も理解できない、可視化した後に放置してしまうといった失敗も見られます。
こうした失敗を避けるには、適切な範囲設定、現場との対話、継続的な見直しが大切です。
業務プロセスの可視化は、組織の業務改善や効率化を実現するための重要な取り組みです。業務の全体像を把握し、課題を発見し、標準化や情報共有を進めることで、組織全体の生産性向上につながります。
可視化を成功させるには、適切な手順に従い、現場の協力を得ながら進めることが大切です。完璧を求めすぎず、小さく始めて継続的に改善していくアプローチが有効です。また、可視化した情報を実際の業務改善や教育に活用することで、投資効果を最大化できます。
本記事で紹介した手順やポイントを参考に、ぜひ自組織での業務プロセス可視化に取り組んでみてください。業務の見える化は、組織の変革と成長を支える基盤となります。
富士ソフトは、可視化した業務プロセスを利活用しデジタル化するご支援を行っております。システム選定で重要なカスタマイズ性・拡張性に優れたシステム開発プラットフォームである「intra-mart」を用いて、お客様の業務プロセスのデジタル化を実現した実績があります。
NTTデータ イントラマート社の認定パートナーとして、専門技術者50名以上を擁するスペシャリスト集団がお客様の業種・業務に応じた最適な提案を行い、業務効率化・属人化の解消・DX基盤の構築を支援いたします。ぜひご相談ください。