阿部 良平
富士ソフト株式会社
ソリューションビジネスユニット
ソリューション事業本部 営業統括部
ソリューション営業部 第4営業グループ 主任
2014年 富士ソフト株式会社入社。お客様付きのアカウント営業として活動したのち、2024年よりintra-mart専任営業として関連ソリューションの提案を行っている。
2025年の崖とは、老朽化したレガシーシステムの維持やIT人材不足によって、企業に大きな経済損失が生じるとされる危機を指します。ここでは、2025年の崖とは何なのか、わかりやすく解説していきます。
2025年前後にかけて、多数のレガシーシステムが保守サポートの終了時期を迎えます。これらのシステムは長年にわたって企業の基幹業務を支えてきましたが、老朽化により維持管理が困難になっています。保守終了後は、セキュリティリスクの増大や機能拡張の制約など、様々な課題が顕在化する可能性があります。
従来の開発手法では、システム更改に長期間を要し、開発コストも膨大になる傾向があります。また、専門的なプログラミング知識を持つ人材の確保も困難で、多くの企業が対応に苦慮している状況です。
2025年の崖への対応は、単なるシステム更改にとどまらず、企業のDX推進戦略全体に大きな影響を与えます。限られた予算と人的リソースの中で、効率的なシステム刷新と業務デジタル化の両立が求められています。従来の手法では、開発期間の長期化により、市場変化への対応力が低下するリスクも懸念されています。
この課題解決には、開発プロセスの根本的な見直しが必要です。迅速な対応力と柔軟性を兼ね備えた新しいアプローチが、企業の競争力維持に不可欠な要素となっています。
ローコード開発は、従来のプログラミング中心の開発手法とは異なる革新的なアプローチです。視覚的なインターフェースと事前構築済みのコンポーネントを活用することで、開発効率を大幅に向上させる手法として注目されています。
ローコード開発とは、最小限のプログラミング知識でアプリケーション開発を可能にする手法です。ドラッグ&ドロップ操作や設定画面での入力により、システム構築が行える特徴があります。従来の開発では数カ月を要していた作業が、数週間から数日で完了する場合も報告されています。
この手法では、業務担当者自身がシステム開発に参画できるため、要件定義から実装まで一貫した視点で進められます。また、修正や機能追加も容易で、変化する業務要求への迅速な対応が可能です。
ローコード開発と従来開発を比較すると、開発期間とコスト面で大きな差が生まれます。下表は一般的な開発プロジェクトでの比較例を示しています。
| 項目 | 従来開発 | ローコード開発 |
|---|---|---|
| 開発期間 | 3~6ヶ月 | 2~6週間 |
| 必要スキル | 専門的プログラミング | 基本的なIT知識 |
| 修正対応 | 数週間 | 数時間-数日 |
| 開発コスト | 高額 | 大幅削減 |
ローコード開発では、開発期間を従来10分の1まで短縮できる可能性があります。また、専門的なプログラミング知識を持たない業務担当者でも開発に参画できるため、人材確保の課題も軽減されます。
ローコード開発の導入により、市民開発(シチズンデベロッパー)と呼ばれる取り組みが推進されます。これは、IT部門以外の業務担当者が自らシステム開発を行う手法です。現場のニーズを熟知した担当者が直接開発に関わることで、より実用的なシステムの構築が可能になります。
市民開発の推進により、IT部門の負荷軽減と業務部門の自立性向上が同時に実現されます。結果として、組織全体のDX推進速度が加速し、変化への対応力も強化される効果が期待されています。
ローコード開発市場は、世界的に急速な成長を遂げています。企業のDX推進加速と開発人材不足の深刻化により、この分野への関心と投資が拡大している状況です。
世界のローコード・ノーコード開発プラットフォーム市場は、年平均成長率32.2%という高い成長率が予測されています。日本国内でも年平均成長率14.0%になると予測されており、市場の拡大が続いています。この背景には、企業のDX推進ニーズの高まりと、開発リソース不足への対応策としての注目があります。
特に中小企業での導入が進んでおり、従来は大企業にとどまっていたシステム開発の民主化が進んでいます。コスト面でのメリットと導入の容易さが、幅広い企業での採用を促進している要因として挙げられています。
ローコード開発の導入は、業界を問わず広がりを見せています。以下は主要業界での活用領域の一例です。
| 業界 | 主な活用領域 | 導入メリット |
|---|---|---|
| 製造業 | 品質管理、生産管理 | 現場データの迅速な収集・分析 |
| 金融業 | 顧客管理、業務効率化 | 規制対応とセキュリティ強化 |
| 小売業 | 在庫管理、顧客サービス | 売上データの即座な可視化 |
| 医療業 | 患者管理、業務効率化 | 医療品質の向上と負荷軽減 |
業界特性に応じたカスタマイズが容易で、専門性の高い業務要件にも柔軟に対応できる点が評価されています。また、導入後の運用・保守も簡素化されるため、継続的な改善活動も活発に行われています。
2025年現在、ローコード開発市場はさらなる拡大が予想されています。生成AIとの統合による開発効率の向上や、クラウドサービスとの連携強化により、適用範囲の拡大が期待されています。
また、セキュリティ機能の強化やエンタープライズ向け機能の充実により、大規模システムでの採用も増加する見通しです。2025年の崖への対応期限が迫る中、ローコード開発は重要な選択肢として位置付けられています。
ローコード開発の導入を成功させるには、技術面だけでなく組織体制の整備も重要です。段階的なアプローチと適切な体制構築により、持続可能なDX推進基盤を確立できます。
ローコード開発の導入は、段階的なアプローチが効果的です。最初に小規模なパイロットプロジェクトから始め、成果を確認しながら展開範囲を拡大していく方法が推奨されています。初期段階では、業務への影響が限定的で、成果が見えやすいプロジェクトを選定することが大切となります。
推進体制としては、CoE(Center of Excellence)と呼ばれる専門組織の設置が効果的です。この組織は、ローコード開発の標準化、ガバナンス、人材育成を担当し、全社的な展開を支援します。IT部門と業務部門の橋渡し役として機能し、技術面と業務面の両方をサポートします。
市民開発者の育成は、ローコード開発成功の重要な要素です。基本的なIT知識を持つ業務担当者を対象に、段階的な研修を実施することが効果的です。初級レベルでは、ツールの基本操作とシンプルなアプリ作成から始め、徐々に複雑な業務要件にも対応できるよう技能を向上させていきましょう。
社内での成功事例の共有と、継続的な学習機会の提供により、市民開発者のモチベーション維持と技能向上を図ることができます。また、IT部門との定期的な技術相談会の開催により、専門的なサポート体制も整備するようにしましょう。
ローコード開発ツールの選定では、組織の規模や要件に応じた検討が必要です。以下は主要な選定基準の例です。
• 使いやすさと学習コストの低さ
• 既存システムとの連携機能
• セキュリティ機能の充実度
• 拡張性とカスタマイズ性
• サポート体制とコミュニティの活発さ
開発ツールには多様な種類があり、提供される機能や柔軟性、拡張性は製品ごとに異なります。そのため、自社の技術レベルや業務要件に合ったツールを選定することが重要です。導入前の概念検証により、実際の業務での適用可能性を検証することも推奨されています。
生成AI技術とローコード開発の組み合わせは、DX推進に新たな可能性をもたらしています。AI技術の活用により、開発効率のさらなる向上と、これまで困難だった高度な機能の実現が期待されています。
生成AIを活用することで、ローコード開発の効率性がさらに向上します。自然言語での要件入力により、自動的にアプリケーションの基本構造が生成される機能が実用化されています。これにより、開発初期の設計工程を大幅に短縮し、より多くの時間を業務要件の詳細検討に充てることが可能になります。
また、AIによるコード生成支援により、複雑なロジックの実装も簡素化されます。従来は専門知識が必要だった処理も、AIのサポートにより市民開発者が対応できる範囲が拡大しています。
生成AIとローコード開発の融合により、より高度な業務自動化が実現可能になります。文書の自動分類、データの予測分析、チャットボットによる顧客対応など、AI機能を組み込んだアプリケーションの開発が容易になっています。
これらの機能により、単純な業務効率化を超えて、新たな価値創造につながるDXの実現が期待されています。従来は高額な投資が必要だったAI活用も、ローコード開発により低コストでの導入が可能になっています。
AIとローコード開発の組み合わせは、システムの継続的改善も支援します。利用データの分析により、アプリケーションの使用状況や改善点が自動的に特定され、最適化の提案が行われます。
この仕組みにより、一度構築したシステムも継続的に進化させることができ、変化する業務要件への対応力を維持できます。また、AIによる予防保守機能により、システムの安定性向上も期待されています。
2025年の崖は多くの企業にとって避けて通れない重要な課題ですが、ローコード開発の活用により効果的な解決策が見えてきています。
市民開発の推進と組織体制の整備により、現場主体のDX推進文化の構築が可能です。生成AIとの融合による次世代的なアプローチも加わり、企業の競争力維持と強化に向けた新たな道筋が示されています。
ローコード開発は単なる技術的な解決策ではなく、組織変革を伴う戦略的な取り組みです。段階的な導入と継続的な改善により、2025年の崖を乗り越えるだけでなく、持続可能なDX推進基盤の確立が期待できます。
富士ソフトでは、ローコード開発によりお客様の業務システム内製化やDX推進に関するご支援を行っております。ご紹介した生成AIを活用した効率的なローコード開発を行うことができる基盤として「intra-mart」をお勧めしております。
NTTデータ イントラマート社の認定パートナーとして、専門技術者50名以上を擁するスペシャリスト集団がお客様の業種・業務に応じた最適な提案を行い、業務効率化・属人化の解消・DX基盤の構築を支援いたします。ぜひご相談ください。