PCやスマートフォン端末を守るセキュリティ対策。EDRの効果的な活用法

EDR(Endpoint Detection and Response)は、エンドポイント、つまり企業内のPCやスマートフォンなどの端末に対するセキュリティソフトウェアの総称です。EDRの主な目的は、リアルタイムでセキュリティインシデントの兆候を検知し、迅速に対応することです。リモートワークの普及によってエンドポイントセキュリティの重要性が高まっており、EDRはゼロトラストモデルに適合する重要な手法の一つとなっています。本記事では、EDRの必要性や活用法、EPP(Endpoint Protection Platform)との違いなどについて解説します。
- EDRは、企業内のPCやスマートフォンなどの端末(エンドポイント)に対するセキュリティソフトウェアの総称
- EDRは、従来のウイルス対策ソフトとは異なり、未知のマルウェアや疑わしい挙動を検知する高度な脅威検知機能を持っている
- 広範囲にわたるサイバー攻撃領域をカバーし、ゼロトラストモデルの実践を支援するEDRは、総合的なセキュリティ強化に役立つ
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櫻井 秀憲ソリューション事業本部 インフラ事業部セキュリティソリューション室
主任/エキスパート(セキュリティコンサルタント:CSIRT)2005年に組込機器アプリの開発に携わり、その後移動体通信の無線品質調査研究プロジェクト、交換局開発のPMOチーム、基地局開発のPMOチームに参画、 国内向け新型基地局のPMを務める。現在は自社CSIRTである FSI-CSIRTの活動を通し、社内セキュリティの強化を行いながら、お客様向けにSOC、CISRTの運用や脆弱性診断、セキュリティ教育の支援など担当。当社加盟セキュリティ団体(ISOG-JやNCA)への参加、発表なども行う。
EDRとは

EDRは、従来のウイルス対策ソフトとは異なり、未知のマルウェアによる疑わしい挙動をリアルタイムで検知する高度な脅威検知機能を持っています。さらに、疑わしい挙動が発生した際には自動的に対処し、相関分析により問題の原因やその広がりを提示します。また、エンドポイントの状態を継続的に監視し、脅威に迅速に対応できるようにします。
EDRとEPP、NGAVとの違い
EDRは他のセキュリティソリューションとは異なる役割を持っています。例えば、EPPは主に侵入を防ぐこと目的としているため、既知の脅威やマルウェアをブロックする役割を持ち、NGAV(Next-Generation Antivirus)は機械学習を用いて未知の脅威に対応します。一方、EDRは侵入後の検知と対応に重きが置かれています。これにより、企業はEPPで防ぎきれなかったサイバー攻撃と思われる不審な挙動を迅速に把握し、的確に対応することが可能です。集中的な監視とインシデント対応を行うEDRは、企業がITセキュリティを強化する上で非常に有効なツールとなります。
セキュリティ対策 | EPP | NGAV | EDR |
特徴 | マルウェアなどのウイルスの侵入を未然に検知する | 新たなウイルスの脅威をAIや機械学習、振る舞い検知などの技術を用いて対処する | ウイルス侵入後の検知と対応に重点を置いている |
EDRの必要性
一般的なウイルス対策ソフトウェアは、既知のウイルスやマルウェアを特定の攻撃パターンに基づいて検出し、防御を行います。しかし、攻撃者側もその手口を日々進化させており、未知の脅威や高度な手法を用いた攻撃が増加しています。このため、従来のツールだけでは完全に防ぎきれないケースが増えてきています。そこで、リアルタイムでエンドポイント上の動作を監視し、未知の脅威に対する迅速な対応を可能にする EDRの必要性が高まっています。EDRは、標的型攻撃や内部犯行に対しても有効で、エンドポイント上の疑わしい挙動をリアルタイムで検知し、セキュリティインシデントが発生するとすぐに対応策を提案します。特定のインシデントに対して一次対処を自動で行うことも可能です。これにより、企業はこれまで以上に適切にサイバー攻撃に備えることができます。
昨今は、リモートワークの普及に伴い、ネットワーク外部からの攻撃も増加しています。EDRは広範囲にわたる攻撃領域をカバーし、ゼロトラストモデルの実践を支援することで、総合的なセキュリティ強化に役立ちます。

EDRの機能と活用法
EDRの主要機能
EDRの主要な機能としては、高度な脅威の検知、迅速な対応支援、状態の継続的な監視、そしてインシデントの原因や拡大状況を調査する分析などがあります。侵入前の防御を目的としたEPPやNGAVとEDRを組み合わせ、これらの機能を活用することで、発生した事象を広範囲にわたって監視し、より深刻な問題への発展を防ぐことも可能です。それぞれの機能を効果的に活用するためには、適切なチューニングや監視が必要となります。
EDRを活用したセキュリティインシデントの対応手順
EDRが疑わしい挙動を検知した場合、瞬時に通知が行われます。次に、自動化されたスクリプトや提案された対処方法を通じて、該当端末の隔離などの初期対応を速やかに実施します。セキュリティインシデントが発生していた場合、その原因や影響を詳細に分析し、適切な解決策を導くことが求められます。そのため、EDRの通知や自動対処を監視するSOCや、発生したインシデントの対処を行うCSIRTが、高度化するサイバー攻撃の被害を最小限にするために必要となります。

EDR運用における3つのポイント

EDRを効果的に運用するためには、いくつかのポイントがあります。まず、運用体制の確立です。24時間365日の監視体制を構築し、迅速にインシデントに対応できるような体制(SOCやCSIRT)を整えておくことが大切です。さらに、EDRの機能を最大限に活用するためには、適切な設定(チューニング)が不可欠です。これには、専門的な知見があって初めて可能となります。また、EDRの運用には通知された情報やインシデントの調査結果などの管理が伴うため、効率的なデータ管理の仕組みも備える必要があります。適切な設定や監視体制を提供してくれるEDR対応のManaged Serviceを活用することによって、運用の負荷を軽減することも一つの方法です。その上で、運用中に発生する問題に対して柔軟に対応できるよう、現場でのフィードバックを活用して運用方法を改善していくことも重要です。
EDRとEPPの比較
EDRとEPPの役割の違いについても解説します。EPPは、主にエンドポイントにおけるウイルスやマルウェアの侵入を防ぐことに重点を置いています。対してEDRは侵入後の挙動を監視し、セキュリティインシデントを検知および対応するのが主な役割です。これにより、EDRは従来型のセキュリティ対策では検出できなかった高度な脅威への迅速な対応を可能にしています。

併用によるセキュリティ強化のメリット
EDRとEPPを併用することで、エンドポイントのセキュリティを大幅に強化することができます。EPPが基本的な防御機能で未知のマルウェアや脅威をブロックし、EDRではそれ以降の侵入を監視し、リアルタイムでの対応を可能にします。この併用により、企業はゼロデイ攻撃や標的型攻撃といった巧妙化するサイバー脅威に対処するための強固な防御体制を構築することができます。
EDRの導入コスト
EDRの導入コストは、企業の規模や導入するシステムの機能によって大きく異なります。一般的に、初期設定や導入コスト、ライセンス費用、メンテナンス費用が必要となります。さらに、24時間365日の監視体制を維持するためには、人的コストやトレーニング費用も必要となる場合が多いです。企業がEDRの導入を検討する際には、これらのコストだけでなく、セキュリティインシデントによる潜在的な損失を防ぐための投資として捉えることも重要です。

富士ソフトではセキュリティ関連資格を持ったスペシャリストが多数在籍し、お客様の環境に最適なセキュリティソリューションをご提案いたします。EDR製品やその運用でお困りのお客様はお気軽にお問い合わせください。
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