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コラム

モダナイゼーション手法の種類・選び方|5つの型で進めるアプリ開発

モダナイゼーション手法

モダナイゼーションを成功させるには、自社の資産に最適な「型」を選ぶことが不可欠です。インフラからアプリ開発まで、リプレースやリホストなど5つの主要手法とその選択基準をプロの視点で解説します。

【モダナイゼーション手法の全体像と選択基準】

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モダナイゼーション手法の選択は、現状のシステム資産が抱える課題と、将来的に目指すべきビジネスゴールとのギャップを埋める作業から始まります。一般的にモダナイゼーションの移行パターンは、ガートナーが提唱した「7R」や、それを簡略化した「5つの型」で分類されます。具体的には、リホスト(移行)、リプラットフォーム(最適化)、リファクタリング(改善)、リビルド(刷新)、リプレース(置換)といった選択肢が存在します。

これらの手法を検討する際の基準となるのは、投資対効果(ROI)、移行完了までの期間、そして許容できるリスクの3点です。例えば、ハードウェアの保守期限が迫っている場合はスピード重視のリホストが適していますが、ビジネスモデルの変化に柔軟に対応したい場合は、アプリの構造そのものを変えるリファクタリングやリビルドが推奨されます。

経済産業省の「DXレポート」によれば、既存システムの維持管理費がIT予算の約8割を占めている企業も少なくありません(出典:経済産業省 DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜)。このコストを戦略的なIT投資に振り向けるためには、システムを「維持すべきもの」「捨てるべきもの」「作り直すべきもの」に峻別する棚卸しが、選択基準の第一歩となります。

富士ソフトInsight: 手法選びで最も多い失敗は、目的を曖昧にしたまま「最新技術を使いたい」という手段の目的化です。まずは全資産を可視化し、ビジネス価値が低いシステムにはコストをかけないという割り切りが、プロジェクト全体の成功を左右します。

【モダナイゼーション手法:リプレースの進め方】

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リプレースとは、既存の古いシステムを完全に廃棄し、SaaSなどのパッケージ製品や全く新しいシステムへ買い換える手法を指します。この手法の最大のメリットは、レガシーシステム(老朽化しブラックボックス化したようなシステム)に蓄積された技術的負債をゼロにできる点にあります。自社で独自のロジックを維持する必要がなく、汎用的な業務フローに合わせられる領域(人事・経理など)において、リプレースは非常に高いコストパフォーマンスを発揮します。

リプレースを進める手順としては、まず現行業務の要件定義を徹底的に見直すことから始めます。既存システムの機能をそのまま再現しようとすると、過度なカスタマイズが発生し、結果として新しいレガシーを生んでしまうリスクがあるからです。最新のSaaS製品などが備えている「標準機能」に業務を合わせる(Fit to Standard)という考え方が、リプレース成功の鍵を握ります。

また、リプレース時には旧システムからのデータ移行が大きな障壁となります。長年使い続けたデータはクレンジング(整理・修正)が必要であり、この工程に予想以上の工数がかかることを前提としたスケジュール設計が求められます。

富士ソフトInsight: リプレースは一見簡単そうに見えますが、現場のユーザーから「前のシステムではできたのに」という不満が出やすい手法でもあります。機能の有無ではなく「その業務が本当に必要か」という本質的な議論を推進できるリーダーシップが不可欠です。

【モダナイゼーション手法:リホストの活用場面】

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リホストは、アプリケーションのコードやデータ構造には手を加えず、稼働するインフラ環境(OSやハードウェア)だけをクラウドなどの新しい環境へ移行する手法です。「リフト&シフト」の「リフト」に該当し、最も短期間で完了できるモダナイゼーションとして広く活用されています。主にオンプレミスサーバーの保守期限(EOS)が迫っている場合や、データセンターの廃止に伴う緊急避難的な移行場面で威力を発揮します。

リホストの利点は、アプリケーションの挙動が変わらないため、移行後のユーザー教育が不要であることと、テスト工程を大幅に簡略化できることです。しかし、アプリケーション自体は古い構造のままであるため、クラウドならではの拡張性やコスト効率の恩恵をフルに受けることはできません。

このため、リホストはあくまで「モダナイゼーションの第一歩」と位置づけるべきです。一旦クラウドへ移した後に、徐々に後述するリプラットフォームやリファクタリングへと段階的に進化させていくロードマップを描くことが、長期的な運用負荷の軽減につながります。

富士ソフトInsight: 「とりあえずリホスト」で終わってしまう企業は多いですが、クラウド化後の料金設定に注意が必要です。オンプレミスの感覚でリソースを割り当てたままにすると、かえって運用コストが増大するケースもあります。移行後のモニタリングは必須です。

【インフラとアプリを同時に刷新する開発手法】

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インフラのクラウド化とアプリケーションのコード最適化を並行して行う手法は、システムのパフォーマンスと開発効率を最大化するために有効です。これは一般的に「リプラットフォーム」や「リファクタリング」と呼ばれる領域を含みます。例えば、データベースを仮想マシン上の自前構築からクラウドベンダーが提供するマネージドサービス(RDS等)に切り替えることで、バックアップやパッチ適用などの運用を自動化しつつ、アプリ側の接続設定を最適化します。

この手法では、従来のモノリシック(巨大な一体型)なアプリケーションを、機能単位で分割していくアプローチが取られます。すべてを一気にマイクロサービス化するのはリスクが高いですが、まずはAPIを介して外部サービスと連携しやすい構造に整えるだけでも、ビジネスの柔軟性は飛躍的に高まります。

また、インフラをコードで管理する「Infrastructure as Code (IaC)」の導入もこの段階で検討すべきです。インフラとアプリを同期させて管理することで、開発環境と本番環境の差異をなくし、デプロイ(リリース)のミスを劇的に減らすことが可能になります。

富士ソフトInsight: アプリとインフラの担当者が別々の組織になっている場合、この刷新は難航します。両者が密に連携し、インフラの進化に合わせてアプリをどう書き換えるかを共に議論できる「DevOps」的な体制構築が、技術以上に重要になります。

【クラウドネイティブを実現する5つの型】

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クラウドネイティブとは、クラウドの利点を徹底的に活用することを前提としたシステム設計を指します。これを実現するためのモダナイゼーションは、以下の5つの型に整理されます。

  1. リホスト(Rehost):そのままクラウドへ。
  2. リプラットフォーム(Replatform):OSやDBをマネージドサービスへ置き換え。
  3. リファクタリング(Refactor):クラウドの恩恵を受けるためにコードの一部を修正。
  4. リビルド(Rebuild):クラウド上でゼロから再構築。
  5. リプレース(Replace):SaaSなど既存製品への乗り換え。

クラウドネイティブ化の核心は、これらの中から適切な手法を組み合わせることです。例えば、コアとなる競争領域のシステムは「リビルド」で最新のマイクロサービスアーキテクチャを採用し、周辺の非競争領域は「リプレース」でSaaSを利用するといったハイブリッドな判断が求められます。

特にリファクタリング以上の型を選択すると、オートスケーリング(負荷に応じた自動拡張)や自己修復機能の実装が可能になります。これにより、突発的なアクセス増加にも耐えうる、止まらないシステムを構築できるのがクラウドネイティブの強みです。

富士ソフトInsight: クラウドネイティブは「目的」ではなく「手段」です。高可用性が必要なシステムにはコストをかけてクラウドネイティブ化すべきですが、週に一度しか動かないバッチ処理にそこまで投資する必要があるかは冷静に判断すべきです。

【コンテナ技術によるアプリ開発の高速化】

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コンテナ技術(DockerやKubernetesなど)を活用した開発手法は、モダナイゼーションにおけるスピードの課題を解決する決定打となります。コンテナとは、アプリの実行に必要なライブラリや設定を一つのパッケージにまとめる技術です。これにより「開発者のPCでは動くのに、本番サーバーでは動かない」といった環境依存のトラブルを完全に解消できます。

コンテナ化の最大のメリットは、デプロイの高速化と軽量化です。従来の仮想マシン(VM)に比べて起動が圧倒的に早く、リソースの消費も少ないため、頻繁な機能アップデートを行うアジャイル開発との相性が抜群に良いです。

また、Kubernetesのようなオーケストレーションツールを使用すれば、複数のコンテナの運用を自動化できます。障害が発生したコンテナを自動で再起動したり、トラフィックに合わせてコンテナ数を増減させたりすることが容易になります。これにより、インフラ運用の工数を削減し、開発者が「コードを書くこと」に集中できる環境を整えることができます。

富士ソフトInsight: コンテナ導入を検討する際、まずは開発環境の共通化から始めるのがスムーズです。最初から全ての運用をKubernetesで行おうとすると学習コストが高すぎて挫折するケースがあるため、スモールスタートをおすすめします。

【サーバーレス移行で実現する運用負荷の軽減】

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サーバーレス(AWS LambdaやAzure Functionsなど)への移行は、運用負荷を究極まで軽減したい場合の理想的な選択肢の一つです。サーバーレスとは、開発者がサーバーのプロビジョニングやパッチ当て、スケーリングなどの管理を一切行うことなく、プログラム(関数)を実行できる仕組みを指します。

サーバーレスの利点は、管理からの解放だけでなく、コスト面にもあります。従来のサーバーのように起動し続ける必要がなく、プログラムが実行された時間や回数に対してのみ課金される「完全従量課金制」が一般的です。そのため、利用頻度に波があるシステムや、特定のイベント時のみ稼働する処理において、劇的なコスト削減が見込めます。

ただし、サーバーレス移行にはアプリ設計の変更が伴います。実行時間に制限があるため、長時間かかる重い処理には向きません。また「コールドスタート」と呼ばれる、実行時のわずかな遅延が発生する場合もあります。これらの特性を理解し、ステートレス(状態を持たない)な設計へとアプリをモダナイズすることが成功の条件となります。

富士ソフトInsight: サーバーレスは非常に強力ですが、ベンダーロックイン(特定のクラウド業者から離れにくくなること)のリスクも孕みます。将来的なポータビリティを重視するか、運用の楽さを取るか、バランスを考えた設計がプロの腕の見せ所です。

【投資対効果を最大化する移行パターンの選び方】

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投資対効果(ROI)を最大化するためには、すべてのシステムを一律の手法で移行するのではなく、システムの重要度と複雑性に基づいた「ポートフォリオ管理」を行う必要があります。一般的には、以下の4象限で判断を行います。

  • ビジネス価値が高く、改修が容易:リファクタリング、リビルド(積極的に投資)
  • ビジネス価値が高く、改修が困難:リホスト後に段階的リプラットフォーム(リスクを抑えて移行)
  • ビジネス価値が低く、改修が容易:リプレース(SaaSへの集約)
  • ビジネス価値が低く、改修が困難:リタイア(システムの廃止)

特に注意すべきは「リタイア(廃止)」の判断です。長年運用していると、実は誰も使っていない機能や、重複しているシステムが必ず見つかります。これらを勇気を持って廃止するだけで、移行コストと将来の維持費を大幅に削減でき、その分の予算を競争力の源泉となるシステムの「リビルド」に充てることが可能になります。

また、手法の選び方においては、組織のスキルセットも考慮に入れるべきです。最新のコンテナ技術やサーバーレスを採用しても、運用チームがそれに対応できなければ、かえってトラブル時の対応コストが増大します。技術の選定と並行して、内製化支援やリスキリングなどの教育プログラムを組み合わせることが、ROIの最大化には不可欠です。

富士ソフトInsight: 経営層は「安くて早い」を求めますが、現場は「安全で確実」を求めます。このギャップを埋めるのはデータです。各手法のコスト比較だけでなく、移行後の運用コストがどれだけ下がるかのシミュレーションを具体的に示すことが、承認を得る近道です。

【まとめ】

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モダナイゼーションには、リホストからリビルドまで多様な手法があり、それぞれにメリットとリスクが存在します。成功への最短ルートは、単に古いものを新しくすることではなく、ビジネスの目的に合わせて最適な「型」を使い分けることです。

まずは自社システムの現状を可視化し、ビジネス価値の高いものから優先的にクラウドネイティブ化を進めることで、柔軟かつ強固なIT基盤を構築できます。今回解説した5つの型や、コンテナ、サーバーレスといった技術を適材適所で活用し、攻めのIT投資を実現していきましょう。

富士ソフト株式会社のモダナイゼーション支援

富士ソフトは、長年のシステム開発で培った豊富な知見と最新のクラウド技術を融合させ、お客様のレガシーシステム刷新(老朽化したシステムの作り直し)を強力にサポートします。

単なるインフラの移行にとどまらず、アプリケーションの構造改革やコンテナ化、サーバーレス導入といった高度なモダナイゼーション手法を、お客様のビジネス戦略に合わせてご提案いたします。独立系ITソリューションベンダーとしての強みを活かし、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloudいった主要クラウドプラットフォームから、最適な環境をマルチベンダーの視点で選定・構築することが可能です。

「どこから手をつければいいか分からない」「移行後の運用が不安」といった課題をお持ちの企業様は、ぜひ富士ソフトへご相談ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. モダナイゼーション手法の全体像と選択基準はどう考えればいいですか?

A1. 投資対効果、期間、リスクの3軸で判断します。ビジネス価値が高いものは再構築(リビルド)を検討し、保守期限対応などスピード重視の場合はリホストを選びます。

Q2. リプレース手法を進める際の注意点は何ですか?

A2. 既存の機能をそのまま再現しようとせず、標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」を意識すること、およびデータのクレンジング工数を十分に見込むことが重要です。

Q3. リホストはどのような場面で活用すべきですか?

A3. ハードウェアの保守期限が迫っている場合や、まずはクラウドへ移行してコストを可視化したい場合など、短期間で移行を完了させたい場面に最適です。

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