
アサインされたばかりのプロジェクトで、仕様書や設計書が全く存在しない、または内容が古く実態と異なるという困難な状況に直面した経験はありませんか?さらに「至急改修が必要になったので、どこまでのソースコードが影響範囲なのかを至急分析して作業を開始してほしい」という突然の指示を受けて戸惑いを感じるエンジニアも多いでしょう。大量のコードやファイル群の中から影響範囲を一つひとつ調査する作業は、非常に負担が大きく、精神的にも大きなストレスになります。
そんなエンジニアが抱える悩みを革新的に解消できる方法が「生成AI駆動開発」です。繰り返し行う煩雑な作業や細かい分析作業をAIに任せ、人間は価値の高い創造的な作業に集中する時代が到来しています。本コラムでは、「生成AI駆動開発」で注目されているAIエージェント「Devin」を使った運用フェーズでの具体的な活用法やメリットを、詳しく紹介します。
AIエージェント「Devin」とその特徴
「Devin」は、米国のスタートアップCognition によって開発された、完全自律型AIエンジニアです。設計、コーディング、テスト、デバッグ、デプロイといったソフトウェア開発の一連の工程を、ユーザーの指示に従って自律的に実行することができます。
Slackから指示を出すことも可能で、従来のシニアエンジニアとエンジニア間の業務フローをそのまま再現しています。タスクが完了すると自動的にGitHubでプルリクエストを作成し、シニアエンジニアがそれをレビューする流れが特徴です。
Devinは「ジュニアエンジニア」として設計されており、タスクを次々と処理しながら経験や知識を蓄積し、徐々に成長していく自立型AIエージェントです。
Slack上で「このレポジトリの設計をまとめて」「この機能に関する仕様を調査して」といった自然なチャット形式で指示を出すことができ、「Devin」は関連ファイルやフォルダを抽出し、要点を整理してレポートしてくれます。
設計書はテキストだけでなく、Mermaid形式による図表の出力にも対応しています。アーキテクチャ図、処理フロー図、状態遷移図(ステートマシン図)、ER図など、視覚的に理解しやすい資料も自動生成できます。さらに、ディレクトリ構成やファイルの役割など、プロジェクト全体の構造も把握できます。
バグ検出や修正、コード最適化、テスト作成、GitHub上でのプルリクエストの作成・管理にも対応します。Visual Studio Codeなどの一般的な開発ツールとの併用も可能で、既存のワークフローに無理なく導入できます。
このように「Devin」は、エンジニアが手作業で行っていたタスクを効率化し、本来注力すべき業務に集中できる環境を提供します。

「Devin」が運用フェーズの業務を劇的に効率化
運用フェーズで最も悩ましいのは、システム全体の把握に時間がかかることです。特にドキュメントが不十分なプロジェクトでは、仕様の理解や影響範囲の調査に膨大な時間がかかります。「Devin」はこの悩みを解消する強力な手段です。
例えばドキュメント作成をエンジニアに依頼すると、業務の合間を縫って対応するため短くても1週間はかかるでしょう。
一方、「Devin」の場合は、たった数十分で仕様書をまとめてドキュメントを作成してくれます。
例えば、「Devin」にSlack経由で次のような指示を出すとします。


Devinが作成してくれた内容がよさそうだったので、さらに理解度を深めるためと、リサーチ結果を整理するため以下の指示を追加しました。
- レポジトリの構造を明確に整理する
- 設計に必要な図表をMarkdownおよびMermaid形式で作成し、ドキュメント化する
- 調査結果を一覧できる目次ページを作成し、各ファイルの内容概要をまとめる
- 作成した調査結果を全て1つのフォルダ内で管理する
すると、「Devin」は指示に従って、仕様書の大枠を仕上げてくれました。
下の画像データは、上記の指示に沿って出力された仕様書のほんの一部です。(かなりたくさんのドキュメントを作成してくれます)








このように、人力で作成すると1週間はかかる仕様書を、数十分程度で簡単に作成できました。「Devin」は何度追加や修正の指示を出しても即座に対応してくれます。怒られたり、愚痴を言われたり、イライラされることもないので、コミュニケーションによるストレスを感じることなく、指示を出せばすぐにアウトプットを返してくれる点も大きな強みです。
もちろん「Devin」が生成する仕様書は完璧ではありません。「Devin」はあくまで“ジュニアエンジニア”としての役割を担うAIエージェントです。しかし、ジュニアとは言えども大枠の仕様書をすぐに作成してくれるので、エンジニアは全体像を素早く把握し、必要な部分を重点的に確認・改善することが可能です。結果、キャッチアップ時間を大幅に短縮できます。
最初に概要図や機能整理が提示されることで、仕様の理解がスムーズになり、作業の見通しも立てやすくなり、新しく参画したメンバーでも素早く理解できる環境が整います。
AI導入がもたらす本質的なメリット
生成AI駆動開発を導入する最大のメリットは、エンジニアが煩雑な作業から解放され、設計の見直し、パフォーマンス改善、新技術の検証といった価値の高い業務に集中できる点にあります。
さらに、こうして生まれた時間を活用することで、お客様やプロジェクトメンバーとのコミュニケーションに十分な時間を割けるようになります。対話による認識合わせや要件確認を丁寧に行うことで、最終的なアウトプットの質も格段に向上します。
加えて、専門性を発揮できる環境は、個人の成長を促し、エンジニア自身のモチベーションや満足度の向上にもつながり、チームや組織全体の競争力強化にも寄与します。
運用フェーズの「人がやらなくてもよい作業」をAIに任せて、人は「価値を創造する」ことに時間を使うことができる。これが、AIエージェント「Devin」の真の活用方法です。
人間が行う必要のない作業をAIに任せる時代に
コードを読み解きながら仕様や設計をドキュメントにまとめたり、あまりやりたくないこまごまとしたタスクに追われたりする日々から解放され、本当に価値ある仕事に集中することを考えてみませんか?
あなたが、普段「誰かやってくれないかな・・・」と思っている作業をAIエージェントに任せていく時代にシフトしていっています。
生成AIエージェント「Devin」の導入や詳細な活用事例についてさらに知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。私たちは、皆さまが創造的かつ生産性の高い仕事に専念できる環境構築を全面的にサポートいたします。
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