Twitter
Facebook
Hatena
『Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門』著者に聞く(前編)Amazon Bedrockの進化と展望

多様な生成AIモデルを活用し、AWSユーザーが簡単にアプリを構築・デプロイできるサービスとして注目の「Amazon Bedrock」。その基本から実践まで体系的に解説した入門書『Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門』(SBクリエイティブ株式会社)の共著者3名にインタビューを実施。前編では出版当時を振り返るとともに、その後の新たな動きについて語っていただきました。

<プロフィール> ※左から
熊田 寛氏
株式会社Relic 先端テクノロジー研究開発リード
2023 Japan AWS All Certifications Engineer

森田 和明
富士ソフト株式会社 エリア事業本部 西日本支社 第2システム部 第5技術グループ
主任 / フェロー
2024 Japan AWS Ambassador / 2024 Japan AWS Top Engineer /
2024 Japan AWS All Certifications Engineer / AWS Community Builder

御田 稔氏
KDDIアジャイル開発センター株式会社 テックエバンジェリスト
AWS Hero、AWS Samurai、2024 Japan AWS Top Engineer & All Certs

執筆から4カ月で出版、Amazon Bedrock生成AI開発指南書

―皆さんは、Amazon Web Services(AWS)のユーザーコミュニティ「JAWS-UG」でつながりがあったそうですね。

御田:はい。SNSでの「本を書きたい」という私の投稿を見た出版社から「書きませんか」とオファーをいただき、個人ブログやイベントで以前から積極的に発信していたお2人にラブコールを送りました。
既に各自が肩慣らししていたためか、原稿はかなり速いペースで仕上がりました。本の骨格は1カ月で完成し、着手から4カ月で出版にこぎ着けました。

熊田:当時、3人とも、生成AIの分野でもAWSを盛り上げたいという強い気持ちがありました。ぎりぎりまで最新情報を盛り込みましたし、「Amazon Bedrockを基礎から学べるように」と一通りの機能を解説しました。AIエージェントの手法については、内容の正確性のため英語の論文を調べて読み込み、生成AIによる要約もフル活用しながらまとめました。

森田: OpenAI によるChatGPTのリリース(2022年11月)で生成AIブームが本格化した当初、生成AIアプリを構築するクラウドサービスとしては、OpenAIと提携するMicrosoft Azureが先行していました。
2023年9月にAWSからAmazon Bedrockが発表され、生成AIアプリ開発のための機能が一通りそろいました。そこから「少しでも早く」と急いで執筆・校正を進めました。AIに関する解説部分は有識者にレビューいただけたこともあり、自信を持って出版できました。

ニーズに合致した、AIエージェントなどの実践的解説

―執筆にあたって特に工夫した点と、それに対する読者の反応はどうでしたか。

熊田:今回の本では、Amazon BedrockだけでなくAWSのさまざまな機能を確かめながら、実際に動くアプリを作るハンズオン形式の解説を採り入れました。例えば私は、ReActというAIエージェントアーキテクチャの紹介から、実際にAmazon Bedrockを活用したAIエージェントの実装方法まで一つひとつ解説しています。
ハンズオンの中でも、森田さんが執筆したローコードのワークフロー管理ツール「AWS Step Functions」とAmazon Bedrockを組み合わせたハンズオンは「ほとんどコードを書かず、AWSで簡単にAIアプリが作れる」と、特に大きな反響がありました。

御田:今が“旬”のAIエージェントを、昨年の時点で先取りできましたね。

森田:テキスト以外に画像や動画の生成もできるマルチモーダルAI「Amazon Nova」(2024年12月発表)など、出版後に登場した注目機能もあります。ただ本作は、土台となる基本的な部分から丁寧に書いているので、いま読み始めても要点はしっかりおさえられると思います。

今、注目のキーワード「MCP」「LLMOps」

―現在のトレンドについて解説いただけますか。

熊田: AIアプリの“試作”が進んで、今年に入ってからは“本番環境での運用”に関心が移りつつあるように感じます。

御田:そうした中で注目したいキーワードが「MCP」と「LLMOps」です。

MCPはModel Context Protocolの略で、高度なAIエージェントアプリ開発で欠かせない“Web検索をする”“メールで通知する”など、AI以外の機能を簡単・安全に利用するための共通規格です。現在「LangChain」などのAI開発支援ライブラリーで対応が進んでおり、AWSのサービスと連携するMCPも提供されています。
Amazon Bedrockも、AIモデルを呼び出すエージェント機能をMCPと組み合わせる方法がAWS公式ブログで公開されており、利用はさらに広がっていくと予想しています。これによって、MCPを用いて開発した機能を自由にやり取りできるようなプラットフォームがAWS上に構築され、安全かつスピーディな共有が可能になることを期待しています。

LLMOpsは、AIエージェントのような生成AIを活用したアプリを本番環境で運用する際の知見や工夫を指す言葉です。例えばAIアプリの動作に問題があった場合に、複雑な処理のどこに問題があったかを素早く確認できるようにするものです。本の中でも紹介しましたが、ここにきて機能やノウハウがすごく発達しています。

森田:生成AIの回答は毎回微妙に変わるので、「あのときだけおかしな反応をしたのはなぜか」といった検証が後から必要になる可能性もあります。アプリにAIが入ることで、オブザーバビリティ(可観測性)は、今後ますます重要になっていくと思います。

つづき
(後編)生成AIの進化と未来展望はこちらから

Amazon Bedrock 関連記事はこちら
Amazon Bedrock プロンプトエンジニアリングの深掘り - 書籍の未解説部分を徹底解説

書籍『Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門』(SBクリエイティブ株式会社)について
出版社のサイトはこちら
Amazonはこちら

この記事の執筆者

森田 和明Kazuaki Morita

エリア事業本部 西日本支社
第2システム部 第5技術グループ
主任 / フェロー

AWS IoT クラウド アプリ開発