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ROS(Robot Operating System)を使ったソフトウェア開発

はじめに

ROS(Robot Operating System)は、日本においてはまだ知る人ぞ知る、ロボットのソフトウェア開発技術です。海外では、ロボット以外でもROSを活用した様々な開発が行われています。パソコンやスマートフォンのOSは、WindowsやiOS、Androidなど海外勢に取って代わられましたが、ロボットのソフトウェア開発においては、ROSが主流になる可能性も高いのではないでしょうか。

ROSは、当社が注目し推進している技術の1つです。本コラムでは、なぜ当社がROSに注目し、ROSを使ったソフトウェア開発を推進しているのか、その理由をご紹介します。

ROS関連サービスや技術、ノウハウを紹介する「ROS開発支援サービス」のサイトを公開しています。「ROSとは何か?」など、基本的な説明も記載していますので、こちらも是非ご参考にしてください。

ROS開発支援サービス

富士ソフトがROSを推進する4つの理由

ロボットのソフトウェア開発市場の拡大

様々な産業分野で、人手不足による業務の自動化が急務となっています。自動化の手段として、まず候補にあがるのがロボットの開発や導入です。ロボットはハードウェアだけではなくソフトウェアも開発が必要です。更に今後は、ロボット単体の開発だけでなく、製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)や倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)などの上位システムとの連携、ロボットの複数台を制御し運用することも求められますので、ソフトウェアの重要性が増していくのは必然です。

そのような状況を踏まえて、今後ロボットのソフトウェアがどのようになっていくかを考えますと、ロボットの市場としては、従来からある産業用ロボット市場と、様々なシーンでの自動化を目的とした新たなサービスロボット市場の2つに分けることができます。

サービスロボットについては近年できた市場ということもあり、新たに参入してくるロボットメーカーは、コスト面や技術面から、最初からオープンソースのロボットプラットフォームであるROSを利用してソフトウェア開発を進めるケースが多いようです。産業用ロボットメーカーも、開発されたソフトウェア資産を活用するためにROSに注目しており、ROSのインターフェースを実装した産業用ロボットも見られるようになってきました。今後は、産業用ロボットの開発でもROSが利用されるケースが多くなると考えられます。

また、ロボット以外でも、AGV(Automatic Guided Vehicle)・AMR(Autonomous Mobile Robot)などの自動搬送機、ドローン、IoT、自動運転や自動車製造のシミュレーションといった様々な分野で活用され始めています。更に、将来的には、ロボットのハードウェアのコモディティ化も進み、ROSを利用したソフトウェア開発は加速度的に広がりを見せると考えています。

ROSの活用場面の広がり

自動車業界では、自動運転の開発競争が激化し、Lidarなどのセンサー類の開発も競争が激化しています。元々自動車の技術から発展したロボットの技術も自動車と関係性が高く、当初自動車向けに開発されていたセンサー類もロボットへの転用が可能です。ロボット向けにはROSに対応した製品が多く見られるようになり、ロボットのROSでの開発を後押ししています。

また、Microsoft、アマゾン ウェブ サービス(AWS)、NVIDIA、Mathworksなどの海外のIT関連企業もROSを活用できる製品を提供し始めており、ROSがいろいろな場面で活用されつつあります。当社は、組み込みシステム開発やクラウド、AIなどで海外IT企業と長年にわたり協業を進めており、ROSの開発でも対応が可能です。

ROSならではの高い生産性

ROSはコンセプトとして、ノードと呼ばれるプロセスの間をピアツーピアで結合することにより、ノード自体を疎結合にできます。後で機能追加が必要になった場合も、既存のノードに手を加えなくてもノードを容易に追加できる仕組みを採用しています。

また、そのような性質から部品化(モジュール化)することも容易で、部品化したものを再利用することで高い生産性を実現しています。(ただし、その性質上、機能を分割しすぎると1システムに数多くのノードが存在することになり、ノードの管理などが煩雑化しやすくなります。)

このようなROSの生産性の高さは、ROSがロボット以外の分野でも使われるようになった要因の1つです。

ROSエンジニアの人材不足

ロボットのソフトウェア開発市場の拡大が見込まれる中、またROSの活用場面が広がりを見せる中、ROSの活用が進んでいない状況にあるのは、ROSのエンジニアが少ないということも要因の1つでしょう。

大学等ではROSの授業が行われ、今後ROSの技術を持った学生が社会に出て、ROSエンジニアとして活躍する日もそう遠くはないと思われます。しかし、現時点ではまだ需要と供給に差があると感じています。

当社には100名程のROSエンジニアが在籍しており、ROSエンジニアの人数や開発実績では国内最大級と自負しています。また当社は、ROSについての社内教育を随時実施しており、ROSエンジニアを増やし、今後拡大が見込まれるROSの開発需要に対応できる体制整備を進めています。

まとめ

当社はROSに関する調査研究やエンジニア育成に力を入れており、お客様の様々なご要望にお応えできるよう、技術力、開発力の向上に取り組んでいます。

関連サービスについて、詳しくはこちらをご覧ください。
ROS開発支援サービス

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この記事の執筆者

橋詰 政人Masato Hasizume

技術管理統括部
先端技術支援部 ロボットインテグレーション室
室長 / エキスパート

Robot ROS(Robot Operating System)