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【AWS re:Invent 2025】生成AIで開発はどう変わる?Kiroを中心に参加セッションをレポート

AWS Ambassadorsの森田です。AWSのサービスを活用したアーキテクチャの検討、提案、構築を行っています。最近は生成AIにも活動の幅を広げて、お客様を広くご支援しています。社内向けにも開発における生成AI活用の推進を行っています。

2025年12月1日(月)から12月5日(金)の期間にラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2025」に参加しました。参加したセッションからソフトウェア開発における生成AI活用に関連するものをレポートします。

ワークショップ「Build Virtual Engineering Workbenches for SDV with AWS Marketplace (IND408)」

初日の12月1日に以下のワークショップに参加しました。

タイトル:Build Virtual Engineering Workbenches for SDV with AWS Marketplace (IND408)
登壇者:Mahesh Geeniga、Stefano Marzani
概要:AWS Marketplaceのソリューションを活用して、SDV(Software Defined Vehicle)の開発サイクルを最大80%短縮するワークショップ

ワークショップの内容

このワークショップでは、Elektrobit社がAWS Marketplaceで公開しているAndroidエミュレーター環境とEC2上に構築したKiroの開発環境を組み合わせ、AWS上での生成AIを活用したSDV開発の方法を学びます。

開発環境の構築

まずは開発環境としてEC2上にUbuntuのデスクトップ環境を構築するところから開始します。EC2へはAmazon DCVを使いリモートデスクトップ接続を行います。この環境にKiroをインストールし、開発環境としてセットアップします。

ブラウザがあれば開発環境にアクセスできるため、SDV開発に限らず様々な開発に応用できそうだと感じました。開発者ごとのPC環境の差異をなくし、チーム全体で統一された環境を使えることは、特に組込開発のような複雑な環境設定が必要な分野では大きなメリットです。

ブラウザからUbuntu環境にアクセスし、Kiroを使用する様子

Androidエミュレーターの活用

Elektrobit社のAndroidエミュレーターはAMI(Amazon マシンイメージ)として提供されているため、マーケットプレイスからサブスクリプションを行うことで利用が可能となります。

このAndroidエミュレーターの特徴は、ブラウザから直接接続できる点です。AndroidのUIがそのままブラウザ上で表示されるため、構築した開発環境から実機がなくてもUIの確認が可能になります。また、ADB(Android Debug Bridge)のインターフェイスでも接続が可能で、デバッグにも利用できます。

別のEC2で実行しているAndroidエミュレーターに接続し、アプリのデバッグをする様子

時間の都合上、ここまでの実施となりましたが、ワークショップの続きとしてはKiroを使ってAndroidアプリのモダナイゼーションを行うラボが含まれています。SDVのような組込開発の分野でもKiroのようなAIを使った開発に適用できるということが、新しい発見でした。

キーノート「Opening Keynote with Matt Garman (KEY001)」

12月2日(火)にはAWSのCEOであるMatt Garmanのキーノートが行われ、様々な分野での新サービスやアップデートの発表がありました。

開発における生成AI活用としては、以下の3つの「フロンティアAIエージェント」が発表されました。

Kiro autonomous agent
AWS Security Agent
AWS DevOps Agent

これら3つのサービスは「フロンティアAIエージェント」と位置付けられており、自律的に動作し、人が介入しなくても数時間以上動作するAIエージェントです。

• Kiro autonomous agent

ソフトウェア開発を支援するAIエージェントです。個々のタスク単位ではなく作業全体を把握し、開発者の好みやプロジェクトのスタイルを考慮します。これにより、タスクごとに毎回同じ指示を行わずとも、スタイルを理解した上でタスクの実行が可能になります。

• AWS Security Agent

開発ライフサイクル全体を通じてセキュリティに関する支援を行うAIエージェントです。一般的なセキュリティ要件に加えて企業や組織のセキュリティ基準も考慮し、アプリケーション全体の検証を行います。ペネトレーションテストを自動で行うこともでき、継続的なセキュリティの検証が可能となります。

• AWS DevOps Agent

運用を支援するAIエージェントです。問題発生時にAIエージェントが自ら根本原因を調査します。CloudWatchやソースコードのリポジトリ、CI/CDパイプラインなどを横断的に調査し、問題を特定します。Amazon社内では実際に使用されており、特定率は86%を超えるとの事です。

• 所感

今年はコーディングエージェントが急速に進化し、富士ソフト社内でも積極的に活用を進めています。試行錯誤して得た知見を社内で共有し、少しでも効率よく開発できるよう取り組んでいます。

特に注目したのが、Kiro autonomous agentの「やり取りを重ねるごとに賢くなる」という特徴です。プロジェクト固有のルールをメンテナンスし育てていく必要があるという課題を感じていましたが、Kiro autonomous agentはこの課題を解決する可能性があり、すぐにでも検証に取り掛かろうと思います。

各サービスの詳細は以下の記事で解説されています。

AWS unveils frontier agents, a new class of AI agents that work as an extension of your software development team

チョークトーク「Accelerating Smart Products SDLC with Kiro (IND303)」

最終日の12月5日(金)には、以下のチョークトークに参加しました。

タイトル:Accelerating Smart Products SDLC with Kiro (IND303)
登壇者:Ken Muramatsu, Tadashi Yamamoto, Kohei Yoshikawa
概要:Kiroを活用して、スマートプロダクトの組込ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体を効率化する方法を紹介するセッション

日本のソリューションアーキテクトの方の登壇でした。(写真の左から吉川様、山本様、村松様)

セッション予約が開始した直後に満席になった人気セッションで、私は予約ができなかったのですが、セッション当日に空きが発生し参加することができました。

このセッションはチョークトークというインタラクティブな少人数制のホワイトボードセッションで、一方的なプレゼンだけでなく聴講者からのQ&Aを受け付けてディスカッションを行う形で進行していきました。

スマートプロダクト開発における課題

まずはスマートプロダクト開発における課題の解説からスタートしました。課題は4点挙げられており、富士ソフトでもスマートプロダクトをはじめとする組込開発は数多く対応しており、同様の課題を耳にします。

制約:ハードウェアリソースやプログラミング言語の制約
特殊な開発およびビルドツール:専用ツールチェーンの習得コスト
テストに実機が必要:実機の数に限りがあり並列テストが困難
現場のデバイスの更新:デプロイやアップデートの複雑さ

3つのテーマでのディスカッション

課題の解決に向けて、3つのテーマでディスカッションが進められました。

• テーマ1:組込ソフトウェア向けKiro
• テーマ2:AIを活用したチケット駆動開発
• テーマ3:仮想化環境とCI/CD

テーマ1:組込ソフトウェア向けKiro

組込ソフトウェア開発においてどのようにKiroを使用できるかの解説がありました。コーディングに加えて、リサーチフェーズでのプロトタイプ作成やデバッグ実行時のトレース分析、コードレビューやリファクタリングといった場面で活用できます。組込開発であったとしてもWeb系やクラウド上での開発と変わらず活用が可能であることが示されました。

テーマ2:AIを活用したチケット駆動開発

AI活用開発をコントローラブルな形で実現するために、チケット管理システムを活用するというアプローチについて解説がありました。

チケットをAIとのやりとりの履歴として利用することで、過去のチケットを参照した追加開発やタスクの細分化が可能になります。開発の意図や背景が記録として残るため、チーム内での知見共有も容易になります。このアプローチは、トレーサビリティの観点からもAIの出力を管理でき、品質管理に有効だと感じました。

テーマ3:仮想化環境とCI/CD

組込開発ではどうしても実機での動作検証が必要になるものの、一部だけでも仮想化環境で実施しようというアプローチです。

開発段階の実機はどうしても数に制限があり並列での実施に限界がありますが、クラウドの仮想化技術を活かすことで効率化を目指します。また、仮想化環境で実施できるようになれば自動テストも可能になり、より効率UPに期待ができます。

重要なのは、仮想化できる分量を増やしていくという段階的なアプローチです。すべてを一度に仮想化するのではなく、できる部分から始めることで、現実的な導入が可能になります。

ワークショップの紹介

また、セッションの最後にワークショップの紹介がありました。
Accelerating Smart Product SDLC with AI Agent Workshop

セッションがとても学びになったので、ホテルに戻ってすぐに実施しました。Lab1までしか試せていませんが、セッションで学んだ内容をどう実践に活かすかがわかるワークショップになっているのでかなりオススメです。日本に戻ったら社内勉強会を開催しようと思います。

まとめ

今回のAWS re:Invent2025では、現在注力している分野のセッションに絞って参加したこともあり、多くの学びのある体験でした。組込開発でもKiroが使えること、クラウド上の統一環境で実機なしでも開発できること、自律的に学習するAIエージェントの登場など、開発の在り方が変わる予感がしました。現地でしかできない貴重な体験も多くあり、日本では会う機会がなかった方ともJAMやGameDay、Japan Nightなどの場で交流を深めることもでき、やはり現地参加は大事だなと感じました。

この記事の執筆者

森田 和明Kazuaki Morita

エリア事業本部 AI推進部
主任 / フェロー

AWS IoT クラウド アプリ開発