
今回は、2025年12月1日(月)から12月5日(金)にラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2025」で発表されたAWSの最新情報の深掘りをお届けします。お話をしてくれるのは、Japan AWS Ambassadorsの森田 和明さん、そして Japan AWS Jr. Champions を目指している吉田 祐史さんです。Youtube Podcastで配信中です。
「AWS re:Invent 2025」とは
森田: 森田 和明と申します。AWSのAmbassadorsとして活動させていただいておりまして、最近は生成AIの分野でお客様の支援をしております。さらに、社内で生成AIを活用した開発の高度化にも取り組んでおります。よろしくお願いいたします。
吉田: こんにちは。吉田 祐史と申します。私は九州の方で活動しておりまして、以前はIoTやサーバーレスアーキテクチャの開発をしておりましたが、今は生成AIにフォーカスして、AWSと生成AIを組み合わせたIoTプラットフォームの開発に取り組んでおります。普段はKiroを使って開発しているので、こうした技術が今どうなっているのか、どう進化しているのかというところにすごく興味があります。本日はAWS re:Invent 2025で発表された最新の技術について、森田さんにいろいろ質問をしながら深掘りできればと思います。よろしくお願いいたします。
―AWS re:Invent 2025について簡単に説明をお願いします。
森田: AWS re:Inventは、毎年AWSが開催しているカンファレンスで、AWSの主催イベントの中で最大級の規模です。
2025年は12月1日から5日までの5日間、ラスベガスで開催されました。現地参加とオンライン(YouTube)で基調講演を視聴している人を合わせて、6万人くらいだったと聞いておりまして、かなり規模の大きい一大イベントとなっております。
現地では3,000ぐらいのセッションがあり、ハンズオンやネットワーキングイベントも数多く用意されていました。AWS好きにはたまらない5日間となっているイベントです。
今年の全体的なテーマは、昨年まで生成AIが一番のポイントだったと思うのですが、今年は生成AIがさらに進化して、エージェンティックAIというものが全体的なキーワードとなっていました。
エージェンティックAIとは
―そもそもエージェンティックAIって何ですか?
森田: エージェンティックAIは、生成AIが質問に対して回答を生成するという動きをするのに対して、回答を生成するだけではなく、タスクを理解して生成AI自身が計画し実行する能力を持ったものを指します。AWSはこれを「AIの次の進化」と位置づけています。
これまでの「質問に対して答えるAI」から、より自律的にタスクをこなすAIへと進化した、というイメージです。
―今回のイベントでは具体的にどんなサービスが発表されたのでしょうか。
森田: 今回のre:Inventで発表されたものの中で、一番注目されているサービスが「フロンティアエージェント」というものでした。
このフロンティアエージェントは3つのAIエージェントサービスを指しており、
- Kiro Autonomous Agent
- AWS DevOps Agent
- AWS Security Agent
の3つが登場しています。
―3つのサービスについて、詳細をご紹介いただけますか
森田: まず一つ目の Kiro Autonomous Agent ですが、従来のKiroが開発環境を生成AIのエージェントで支援するのに対して、Kiro Autonomous Agentはより生成AI側が自律的に行動します。
タスクを依頼すると、その内容を噛み砕き、ソースコード修正、コミット、プッシュ、さらにはチケットへの記述まで自律的に行います。数時間単位で動き続けることも可能です。
DevOps Agent は名前の通り、運用や保守で使えるサービスで、システム運用中にアラートが出たとき、人が確認するより前にエージェントが自律的に調査を開始してくれます。
ログなどを見たうえで、根本原因の調査までしてくれるため、人はすでに調査済みの状態を確認して最終アクションに移れるというものです。
Security Agent は複数のレイヤーで使える点が紹介されていました。
設計時にはAWS構成図を渡すことでセキュリティ評価をしてくれ、運用開始後はペネトレーションテストを行ってくれる機能もあります。
通常の運用保守はDevOps Agentが担いますが、セキュリティチェックを定期的に行うところをSecurity Agentが担います。
この3つが揃うことで、ソフトウェア開発全体をより自律的なエージェントが補助してくれるようなサービスになります。
―吉田さんはこの3つのエージェントで注目しているものはありますか?
吉田: フロンティアエージェント、どれもすごいなと思うのですが、僕は一つ目の Kiro Autonomous Agent が一番気になっています。
理由としては、今実際に自分のプロジェクトでKiroを使って開発をしているのですが、複数のリポジトリにまたがる変更や大規模な改修があるときは、設計書を渡したり前提条件を細かく説明したりと、生成AIとのやり取りが多くて大変だったんですよね。
それが今回のKiro Autonomous Agentでは、ゴールを伝えるだけで数時間単位で全部自律的にAIが考えて進めてくれる。正直、聞いていて怖いなと思うぐらいです。これから開発の進め方が大きく変わっていくんだろうなというところで、すごく注目しています。
―お客様や企業にとっては、どのようなメリットがあると思いますか?
森田: このフロンティアエージェントですが、AIエージェントをすぐ使える状態で提供されているという点がとても重要です。「AIエージェントを作りましょう」ではなく、すぐに使える形で提供されていることが大きなポイントかと思います。
なおかつ、ソフトウェア開発のサイクルにおいて、コーディングだけではなくセキュリティや運用まで全方位的にサポートしてくれるという点も非常に良いサービスだと感じました。
そして「人がいなくなるのか」というと、おそらくそうではないと思いますが、AIが自律的に進めてくれることで、開発工期の短縮や、これまで手が回っていなかったセキュリティや運用のタスクにも手が回るようになると思います。結果として、やりたかった開発に集中できるなど、業務効率化にもつながると考えております。
吉田: ここまでAIエージェントが優秀だと、僕らのようなSIerの仕事がなくなる、というか一部は大きく変わるのだろうなという不安がありますね。
森田: 確かにその一面はあると思います。ただ、ツールがあるから誰でもできるという段階まではまだなっていないと感じています。ツールはどんどん新しいものが出ますし、使い方も覚える必要がありますので、そこはまだ我々SIerがお力になれる部分があると思います。
ツールの使い方を理解したうえで、お客様に適したツールの導入・活用方法を提案できますし、お客様に代わって運用やセキュリティチェックを担うこともできます。
ただ、ソフトウェアを開発するだけの役割は、この先どんどん変わっていくかもしれないとも感じています。
吉田: なるほど。自分たちの役割をこれからもっと意識して働いていかないといけないですね。ありがとうございます。
AWSと他社との違いについて
―クラウドサービス各社がAIに力を入れていますが、AWSは他社と何が違いますか?
森田: AWSはエージェントに限りませんが、これまで提供してきたインフラ基盤としての高いセキュリティやガバナンスが大きな強みだと思っています。Amazon Bedrockが登場した際にも同様の議論がありましたが、AWSが提供する高いセキュリティ・高い信頼性の環境でBedrockを使える点が最大のポイントでした。
今回のエージェントについても同様で、Amazon Bedrock AgentCore という新サービスが登場しましたが、これは自社の企業ポリシーを遵守しながら、複数のエージェントを安心・安全に運用できるという特徴があります。
また、AWSは開発者だけでなく、インフラを専門とする方など、さまざまなレイヤーの技術者が利用しています。Kiroも開発者向けのサービスではありますが、インフラの仕事にどう役立てるかという観点でも多くのセッションがありました。こうした幅広いレイヤーへのサポートもAWSの強みだと感じています。
現地イベントの様子とエンジニアの未来像
―森田さんが今回のイベントで一番印象に残ったことや注目した技術は何でしたか。
森田: 現地に行って毎年感じるのですが、「AWSを学びたい!」という人が全世界から6万人も集まるという事実がまずすごいなと思います。現地の熱気を毎年感じますし、セッションも3,000以上あるのですが、予約開始時点で満席になるほど人気です。
また今回は、AWS認定資格をすべて取得している方に金色のゴールデンジャケットが配布されていて、私も着て歩いていたのですが、現地の参加者やAWS社の方から「Congratulations!」と声をかけられることが何度もありました。AWSというキーワードだけで集まるコミュニティの一体感やフレンドリーさがとても印象的でした。

吉田: なるほど。AWS好きな人たちと交流できるのはすごく面白いですね。
セッションの中にはハンズオンのイベントもあると伺っていますが、森田さんはGameDayとJAMで上位入賞されたそうですが、特にJAMは全問クリアしたと聞きましたが、そこで出される問題ってどんな内容なのでしょうか?
例えば、AWSサービスを使ったソリューション提案とか、アーキテクチャ図の作成など実務寄りの内容なのでしょうか。
森田: そうですね。ハンズオンや、ゲーミフィケーションラーニングを取り入れた学習イベントがいくつかありました。今回初めて追加された「Rodeo」というワークショップでは、ホワイトボードにアーキテクチャ図を書きながらグループでディスカッションする形式でした。GameDayやJAMでは、生成AI関連の課題が出されましたが、これはまず生成AIを使ってみる問題があって、次にナレッジベース(RAG)を追加してみる、それをエージェントから呼び出す、さらにはガードレールを追加するなど、一つひとつがお題になっており、クリアしていくとBedrockの一連の機能がわかるような形になっているコンテンツや問題が出ていました。
吉田: なるほど。ありがとうございます。
―イベント会場の様子はいかがでしたか。
森田: 会場は非常に広く複数のホテルで開催されており、移動するだけでも大変でした。ところどころに休憩スペースやアトラクションがあり、学習がメインではあるものの上手に休憩できる工夫がされていました。
今年はAWSが発表したKiroが大きく取り上げられており、「The House of Kiro」というお化け屋敷も用意され、連日長蛇の列でした。

―参加されたセッションはいかがでしたか。
森田: 毎日朝の基調講演に参加し、ワークショップにも参加しました。また、チョークトークというタイプのセッションにも参加しました。
吉田: セッションって3,000以上あるので、選ぶのに迷いますよね。選び方のコツってありますか?
森田: コツは、まず予約開始後すぐに予約することです。数が多いので、自分の興味のあるサービス名やキーワードで検索して予約するのが最初の一歩になると思います。
予約できなかったものも、現地で並べば空きがあれば入れます。
個人的なおすすめは、気になったものはとりあえず全部予約しておくことです。会場が広く、当日移動が難しくて参加できないものも出ますが、まずは予定を押さえておくのが良いと思います。
また録画配信があるものもあるので、可能であれば手を動かすワークショップを優先するのがおすすめです。
チョークトークは少人数でホワイトボードを用いた対話形式のため、わからない点をその場で質問できるメリットがあります。他の参加者がどんな質問をするかも参考になり、世界中で同じ課題を抱えているのだと気づくこともあります。
―現地では、どのように過ごされましたか?
森田: 連日8時からセッションが始まり、18時頃までさまざまなセッションを受けていました。セッション後はネットワーキングイベントがあり、私はツアーで参加しており、「Japan Night」という日本人向けイベントにも参加しました。
またAmbassadorsの集まりもあり、基調講演の感想や参加セッションの内容を共有したり、注目ポイントの違いなどを話し合ったりと、自分だけでは気づけない情報を得られ、とても面白かったです。
―森田さんは毎年参加されていますが、今年は総じてどんな印象でしたか。
森田: ホテルの場所などは大きく変わらないのですが、今年はエージェントに関するテーマが多かった印象です。
パートナー企業のブースが並ぶExpoでもAI関連が多く、生成AIのモデルを扱っているベンダーは年々ブースが大きくなっている印象でした。これまでブースを出展していた会社も+生成AIの形でエージェント対応やAI機能の搭載といったアピールが多かったです。
また、AIを使ったロボットを展示しているブースも一部あり、来年は「フィジカルAI」がテーマになるのではという雰囲気も感じました。
吉田: フィジカルAIもそうですが、このフロンティアエージェントなど新しい技術がどんどん発表され、大きな変化がある中で、私は新卒3年目なのですが、若手エンジニアとしてこれからどんなスキルや姿勢を意識して、技術と向き合っていけばいいか、森田さんに伺いたいです。
森田: AIがソフトウェア開発にとって代わるのでは、という話は基調講演でもAmazonのWerner Vogels CTOが触れていました。
AIが仕事を奪うのか、という質問に対しては「奪うでしょう」と話されていました。一方で「我々がやること自体は変わらない」という表現もされていました。
つまり、最新情報をキャッチアップし、新しい技術を試し、身につけていくということを継続していれば、やることは変化しても、ソフトウェア開発の本質自体はなくならないということです。
AIですべてがなくなるわけではないので、目の前の新しい技術を学び続けることが大切だというメッセージだったと感じました。
吉田: 貴重なアドバイスをありがとうございました。これからもトレンドを意識しながら、森田さんと一緒に頑張っていきたいと思います。
―今後もAWSの最新情報に注目ですね。
森田: はい。今後もAWSの最新技術を追いかけていきたいと思います。本日はありがとうございました。
吉田: ありがとうございました。




