AWS Summit Japan 2025レポート〈前編〉│AIとともに進化する“SIの力”─ AWSが支える最新ソリューションの実践事例

  1. 生成AIとDXが織りなすクラウドの祭典
  2. AWSのエキスパートが展開するセッション
  3. まとめ
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AWS Summit Japan 2025レポート〈前編〉│AIとともに進化する“SIの力”─ AWSが支える最新ソリューションの実践事例

2025年6月25日(水)~26日(木)に千葉県千葉市・幕張メッセにて、国内最大級の“AWSを学ぶイベント”である「AWS Summit Japan 2025」が開催されました。今年も富士ソフトは展示ブースを出展し、最新のAWSソリューションや事例を展示するとともに、セッションを開催しました。前編では、「AWS Summit Japan 2025」の概要と一部セッションの内容をご紹介します。

生成AIとDXが織りなすクラウドの祭典

「AWS Summit Japan 2025」では、生成AIをはじめ、セキュリティ、データ分析等、クラウドを取り巻く注目テーマが数多く取り上げられ、2日間で3万6,000人以上が来場しました。会場では270以上の展示ブースが展開され、160を超えるセッションが開催されました。

当社は「アプリも、インフラも。AIとともに進化する、SIの力。」をテーマに出展。国内で15社のみが認定されている「AWSプレミアティアサービスパートナー」で、国内有数のクラウドインテグレーターであることや、AWS導入・運用支援の豊富な実績があることをアピールしました。またIoTや行政分野での高度なコンピテンシー(技術認定)を受けており、生成AIを活用した先進的な取り組みを推進しながら、AWSを活用してビジネス変革を支援していることを伝えました。

来場者で賑わう当社ブース

AWSのエキスパートが展開するセッション

展示ブースでは「VMware移行(Amazon Elastic VMware Service)」や「AWSのセキュリティ」をはじめとする8つのテーマに応じた展示と、それぞれに対応したセッションを開催。当社のAWSのエキスパートが、最新の取り組みを解説しました。

ここからは各セッションの概要とポイントをご紹介します。

セッション①
パブリッククラウドのセキュリティ環境をまるっとお任せ!
15分でわかるFujiFastener

“AWSのセキュリティ”をテーマに、ソリューション事業本部 インフラ事業部の橋口 弘仁が登壇しました。

セッションに登壇する橋口 弘仁

まず、セキュリティ設定の不備への不安や、膨大なアラートの処理など、クラウドセキュリティにまつわる課題が挙げられました。そして、サイバーセキュリティクラウド社とのパートナーシップによって実現したクラウド環境のセキュリティサービス「FujiFastener(フジファスナー)」がこれらの課題を解決できると説明。最大の特徴は、特定、防御、検知、対応、復旧をワンストップで提供するフルマネージメントセキュリティサービスである点だと語りました。

●セキュリティエンジニアとAIによる24時間365日の継続的モニタリング:膨大なインシデントアラートをセキュリティエンジニアとAIが分析。本当に危険なものだけをお客様に通知し、対応方法も提案
●クラウドのネイティブ機能を利用して優れたコストパフォーマンスを発揮:AWS Security HubやAmazon GuardDutyなど、AWSのネイティブ機能を活用することで、コストパフォーマンスに優れたセキュリティ対策を実現
●最新の脅威への自動対応:セキュリティエンジニアによる情報収集と最新セキュリティルールの自動アップデートにより、お客様のクラウド環境をモニタリング
●お客様の環境に合わせた柔軟な導入:お客様の課題、環境、状況、予算、組織体制を理解したうえで最適にカスタマイズしたサービスを提供

セッション②
AWSサーバレスで挑む!OpsPower運用管理システムの全貌

“AWSの運用・保守”をテーマに、ソリューション事業本部 インフラ事業部 インフラマネジメント部の近藤 尚太が登壇し、当社の運用保守サービス「OpsPower RUKIA」の運用管理システムについて紹介しました。

セッションに登壇する近藤 尚太

「OpsPower RUKIA」とは、監視、構成管理、24時間365日対応のオペレーション、問い合わせ窓口などをワンストップで提供するフルマネージドサービスです。運用管理システムのアカウントの管理/オンボーディング(利用開始時の初期設定や環境構築)の効率化・障害通知コンポーネントに特化した設計となっています。

アカウントの管理/オンボーディングの効率化では、複数のAWSアカウントを利用し、お客様ごとに監視システムとオペレーション環境を分離。さらに、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を活用した共通プラットフォームを設置し、大規模構成を実現していると言います。この管理には、AWS Control TowerやAWS CloudFormation StackSets、AWS IAM Identity Centerが活用されています。

障害通知コンポーネントにおいては、監視システムからの情報がAmazon EventBridgeを通じてAWS Lambdaに渡され、ITサービスマネジメント(ITSM)システムに自動でインシデントとして登録・更新。また、事前に合意された障害対応をAWS Systems Manager AutomationでRunbookを用いて自動化する仕組みも備えていると説明します。

セッション③
AWS中国リージョン導入・構築・運用・データ越境連携

“AWS中国リージョン導入・構築・運用サービス”をテーマに、グローバルビジネス統括部 チャイナビジネス推進部の山角 正範が登壇し、中国におけるAWSサービスの利用と日中間のデータ越境について説明しました。

セッションに登壇する山角 正範

AWS中国リージョンは、グローバル版と基本構成は同様ですが、中国特有の規制や運営方式に準拠する必要があります。中国企業が運営しており、アカウント取得には現地法人が必須、支払いは人民元のみといった特徴があります。運用上の主な課題として、ICP(Internet Content Provider)ライセンス登録やネットワーク規制への対応が挙げられます。

近年では、データ越境に関する法律が整備され、中国から日本へのデータ移転が法的枠組みの中で可能となりました。特に製造業では、中国で収集したデータを日本本社で分析したいというニーズがあり、富士ソフト中国では法令対応を含めたコンサルティングサービスを提供しています。

さらに、ネットワーク品質や認証方式の違い、中国特有のアプリケーションとの連携など、システム移行時に考慮すべき技術的側面にも言及。最後に、中国と日本のネットワークは物理的に接続されており、法的課題をクリアすれば安全なデータ連携が可能であることを強調しました。

セッション④
BizDevOpsとAWSとAIでビジネスを加速する

システムインテグレーション事業本部 ビジネスソリューション事業部の大石 淳、大槻 剛、中村 和弘の3人が登壇し、BizDevOpsについて解説しました。

BizDevOpsとは、ビジネス部門(Business)、技術部門(Development)、運用部門(Operation)を連携させ、生産性を高めることを目的とした概念です。

左から大石 淳、中村 和弘、大槻 剛

まず大石が、当社のお客様130社にヒアリングを行った結果を発表。主な課題として、人手不足、属人化、レガシーシステムの問題などを挙げました。これらの課題は、BizDevOpsに基づいたAIとクラウドテクノロジーを活用したソリューションで解決可能だと強調しました。

セッションに登壇する大石 淳

続いて大槻が、特にシステム化の難しい“属人化”にフォーカスして話を展開しました。多くの開発現場では、特定のメンバーへの業務集中や暗黙知といった「運用業務の属人化」に課題を抱えています。

Amazon CloudWatch Anomaly Detection(異常検知)などのAIサービスを活用することで、判断の自動化や知識の共有が可能となり、ナレッジの蓄積と内製化を促進できます。さらに当社の運用ノウハウを組み合わせることで、サービス強化も可能です。これらの取り組みにより、BizDevOpsの導入を通じて持続的な運用体制の構築を実現できることを強調しました。

セッションに登壇する大槻 剛

次に中村が、開発者の視点から運用業務の属人化についてのアプローチを説明しました。開発面では、主に設計書や最新仕様書の不足により、システムの複雑なつながりを特定の経験者しか理解できず、レガシーシステムの解析の属人化が課題となっていると指摘。

この解決策として、Amazon Qなどの生成AIアシスタントの活用を提案しました。ただし、AI導入だけでは不十分で、データ提供・設計力・翻訳力が不可欠です。これらを統合的に実現できるのがBizDevOpsであると説明しました。

当社には専門的な知識を持ったエンジニアがいるため、お客様の運用保守の状況を紐解いたうえで、お客様に合わせた最適なAWSのAI/ML(機械学習)サービスを提案し、属人化解消のための仕組み化を伴走支援できます。これによりシステムの複雑な変化を誰でも客観的に把握できるようになり、蓄積されたナレッジと組み合わせることで、アラート発生時に迅速かつ確実なアクションが可能になります。

セッションに登壇する中村 和弘(中央)

最後に大石が、AIを活用した“見える化”から始め、すべての従業員が同じ情報を共有できる環境を構築し、さらにナレッジを活用してAIの分析精度を高め“動ける”現場をつくることが重要だと強調しました。AIの検出結果をビジネス価値につなげるには、翻訳力や設計力などのノウハウが不可欠です。当社は、こうしたノウハウをBizDevOpsの枠組みで提供することで、お客様のKPIに沿った支援を実現し、次世代の開発・運用体制の構築をサポートできることを述べ、セッションを締めくくりました。

セッション⑤
移行も運用もシンプルに! 新しいサービスAmazon Elastic VMware Service(EVS)のご紹介

“VMware移行(Amazon Elastic VMware Service)、クラウド移行”をテーマに、ソリューション事業本部 インフラ事業部の蒋 祺彦(ショウ キゲン)が登壇しました。

セッションに登壇する蒋 祺彦

「Amazon Elastic VMware Service」は、VMware Cloud Foundation(VCF)をAmazon Virtual Private Cloud内で実行するネイティブAWSサービスです。

大きな特徴は、クラウドサービスでありながら“自己管理型”である点です。ユーザーは、オンプレミス環境同様に仮想環境を自ら運用・管理できます。既存のVMware環境の運用方法やツールをほとんど変えることなくクラウド環境に移行できるため、AWSの他のサービスとの連携が容易になり、柔軟なサービス活用や自動化が実現しやすくなるといったメリットを紹介しました。

なお、本セッションの内容については、AWS Summit Japan 2025レポート(後編)の「パートナーセッション:Amazon EVS で VM 環境をまるっと安全にリフト&シフトしませんか?」で詳しく解説しています。

まとめ

前編では、AWS Summit Japan 2025の概要と一部セッションの内容を紹介しました。後編では残りのセッションと、パートナーセッションの内容をご紹介します。

この記事の執筆者

FUJISOFT Technical Report編集部
FUJISOFT Technical Report編集部

イベント・セミナーを取材し、その様子をレポートします!

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