Office 365とG Suiteは、どちらもメールやスケジュール、文書・表計算・プレゼンテーション、ビデオ会議、オンラインストレージなどの充実した機能をもち、グループウェア導入に当たって多くの企業が検討リストに挙げるクラウド型のグループウェアだ。しかし基本的な機能が似ているがゆえに、導入に当たって選定で悩む企業も多い。そこで今回、富士ソフトMS事業部でMicrosoft関連の技術を担当する増田裕正と商品販売推進部でGoogleサービスの販売企画を担当している直井清に、それぞれの特徴を語ってもらった。

働き方改革でクラウド型グループウェア活用を見直し

─まずは、クラウド型グループウェアの導入メリットについて、改めて考えてみたいと思います。

増田:キーワードとしては「働き方改革」ですね。すでに導入しているお客様からは、使い方を見直したいというお問い合わせが多くなっています。Office 365は数年前と比べてかなり機能が追加されているので、新しい機能を使いこなして業務を効率化したい、と考えるお客様が多いようです。

数年前は、クラウド型グループウェアのほとんどが「メールとスケジュール管理をクラウド化する」「いつでもどこでも、PC だけではなく、タブレットやスマートフォンからでも使えるようにする」といった目的で導入されていました。それが最近、実際に利用事例が増えてきたこともあり、クラウドサービスに対する安心感や理解が深まり、OneDriveやGoogle ドライブのようなオンラインストレージに業務文書を格納し、クラウド経由でファイル共有したいという声も多くなっています。

直井:そうですね。加えて、在宅勤務者とのコミュニケーションにビデオ会議を使ったりと、「会議の生産性向上」もキーワードになっています。「働き方改革」と「チーム力アップ」を実現するための実践的な武器を手にできること、これがクラウド型グループウェア導入の最大のメリットだと思います。

コラボレーション強化で生産性向上

─それぞれのサービスの、最近のトピックスを教えてください。

増田:Office 365では、グループチャットベースのワークスペースが実現されている「Microsoft Teams」でしょうか。グループチャットだけではなく、チャットのやり取りの中で Office 文書を共有して、そのまま文書の共同編集を行うこともできます。もちろんそのままビデオ通話もできます。個人、チームで共有したファイルは、それぞれ、OneDrive, SharePointへ自動的に保存されるというように、Microsoft Teams が Office 365 のハブとなって機能するため、各機能を意識して利用する必要がなくなります。また、今までは社内にとじた情報共有が多く行われていましたが、Microsoft Teamsは「共創」を促進し、顧客との情報共有環境としても利用できます。

Microsoft Teams活用例(チャットのやり取りの中で Office 文書を共有)

Microsoft Teams活用例(文書の共同編集も可能)

直井:それはG Suiteも同じですね。チーム向けのチャットツール「Hangout Chat」でコラボレーションの強化を図っていて、Microsoft Teams同様、ドキュメント共有の機能を強化してきています。部門横断的にチームをつくってドキュメントを共有しながらコワーク(co-work)できる、使いやすいツールになっています。

hangout chatでチャット会議開始、ビデオ会議(hangoug meet)に切り替えも可能

Hangout Chat から ビデオ会議(Hangout Meet)へのシームレスな連携も

サービスがユーザーに合わせるか、ユーザーがサービスに合わせるか

─よりオープンな環境を提供しているG Suiteは、どちらかというと大規模ユーザーよりスタートアップに向いている、という印象があります。

増田:そういった傾向はあるかもしれません。逆にOffice 365は比較的大規模なお客様に多く導入いただいている印象があります。その理由は、今までの使い方、操作方法を大きく変えることなく社内環境をクラウド化できるからだと考えています。Office 365は、エンドユーザーの負担を最小限に、クラウド化することが可能です。今までは、社内のファイルサーバ上に格納して、共同編集を行っていたExcelを、OneDrive に格納するだけで、クラウド経由での共同編集が実現するといったように、今までの操作性に近い形で、クラウドによる効率化のメリットを享受できるシナリオを提供しています。

直井:一方G Suiteは、行動を変えるためのプラットフォームそのものです。「G Suiteのユーザーは働き方を100%クラウド型にシフトすることを強いられます。G Suiteに合わせて働いてください、そうすれば効率が劇的に上がります」というシナリオになっているんです。働き方の変化をマネジメントする手法も提案してはいますが、コンサバティブな企業体質だと、働き方を変えることはなかなか受け入れ難いかもしれません。G Suiteがスタートアップに向いているとの印象を持たれるのも自然ですね。

また、G Suiteを導入する場合は業務改革も覚悟しなければいけません。したがってG Suiteは、従業員一人ひとりにある程度のITリテラシーがあり、OfficeとGoogleのエディティングツールを使い分けていけるような企業に合っているのではないかと思います。

ちなみに、Office 365に比べるとG Suiteの機能数が絞られているのは、Googleが効率化に適した機能を厳選して、高いサービスレベルを保ちつつ統一感のある形でサービスを提供しているからであって、結果的に利用者にも管理者にもシンプルでうれしいものになっているわけです。コンパクトな情シスやひとり情シスが多い中堅や小規模の企業、学校などでG Suiteが広く使われているのは、このシンプルさが受け入れられているからでしょう。

─スタートアップの感覚をもって事業展開している大規模ユーザーの場合はどうでしょうか?

直井:大規模ユーザー、特に老舗企業での導入はOffice 365が圧倒的に多いですね。ただし、例えばファーストリテイリング社は13万人のスタッフに対してG Suiteを導入しています。ですからG Suiteが大規模ユーザーに向かない、というわけではありません。スタートアップの気概を忘れず常に新しいことに挑戦している同社のように、ビッグデータのクエリーをスピーディーに回し、データを最大限活用することでビジネス全体を変革していくような企業が今後も増えていくと思います。そのような企業は、G SuiteのEnterpriseエディションとGoogle Cloud Platform(GCP)を活用して経営スピードを上げていくでしょう。

法規制には逆らえません

─これまでのお話以外に、他のクラウドサービスとの差別化ポイントはありますか?

増田:Microsoftは、オンラインサービス条件(*1)として、Office 365 を含めたクラウドサービスにおいて、お客様のデータを二次利用しないことを明確にうたっています。

直井:よく誤解されていますが、Googleも二次利用はしていないのです。機械でスキャンしていますが、それは検索のランキングやセキュリティ向上に利用しているだけです。二次利用しないことは約款にもうたっていますから、ご安心ください。

─別のサービスで使って利益を得ようとしているのではなくて、サービスのブラッシュアップに使っている、ということですね。他にはありますか?

増田:有事の際に国内法の適用をうけるためにデータセンターは国内になければいけない、ということを選定基準にしているお客様もいらっしゃいます。もちろん、Office 365 は、日本国内のお客様へのサービスは、日本国内のデータセンターから提供されます。

直井:Googleの場合、国内にデータセンターはありますが、データを日本に置くことまでは担保していません。データの所在はEU内、米国内、あるいは世界中に分散、の3択です。データを日本に置くよう定めている企業は現状、G Suiteをお選びいただけません。

しかしGoogleのファイルシステムは、3つ以上のデータセンターにデータを分散配置する仕組みになっており、このことはデータの安全性を高めているとも言えます。Googleはデータを細切れにして複製をとり、それを暗号化した上で分散配置するということをグローバルでやっています。つまりデータセンターひとつハッキングされてもデータが読み取られることはないですし、仮にひとつぐらいデータセンターが消失したとしてもサービスが止まることがないのです。

シャドーIT撲滅? ファイルサーバ問題を解決?

─それぞれに、今後どのようなサービス展開が考えられるでしょうか。

直井:先ほどのファーストリテイリング社では、プラットフォームにGCP、情報共有基盤としてG Suiteを使い、マイクロサービス開発体制で、ビッグデータとAIを活用した、商品トレンドや需要予測までカバーするグローバルなシステムを作ろうとしています。Googleはデバイスももっていますし、グループウェアだけにとどまらず、プラットフォームや業務アプリケーションも巻き込んだ、デジタルトランスフォーメーションの仕組みをつくるためのツールを充実させていくのではないかと私は見ています。

これは、シャドーITの撲滅にもつながりますよね。G Suiteに限らずOffice 365も含め、グローバルビジネスに耐えうる機能が充実していけばシャドーITも不要になる。また、パッチワーク状態のインフラから脱して、コンピューティングをデスクトップからクラウドに集中することでますますセキュリティが担保される、するとますますクラウド化が進む、そういったところまでも見据えていると思います。

増田:ほとんどの企業が、オンプレミスの業務システムを仮想化基盤上で動作させることができるところまできています。そこからいかにしてクラウドへ移行していくか。仮想化基盤との互換性から、IaaS への移行は進んでいますが、次はクラウドの真のメリットを享受できる PaaS へどのようにして移っていくか。「リフト&シフト」が進もうとしているところです。しかしひとつ問題があります。ID管理です。ID 管理も PaaS 移行にあわせて、IDaaS(Identity as a Service)への移行が必要となります。

もう一つ、ID 管理が問題になる例として、よく上がる話として、オンプレミスに配置されたファイルサーバのクラウドへの移行です。ファイルサーバは、オンプレミス上にあるID 管理基盤 Active Directoryとの紐付けが強いため、この問題を解決しないと、ファイルサーバをクラウドへ移行できません。このようなID管理が問題とになる状況に風穴を開けられるのがOffice 365だと、私は思っています。Office 365を導入していれば、必然的に IDaaS である Azure Active Directory が利用されているはずですから。この IDaaS を軸に、クラウドを起点としたクラウドネイティブな環境の整備がすすんでいくと考えています。

─それぞれの特徴がよく感じられるお話でした。グループウェアの機能や会社の規模よりも、どの部分に効率化を求めるか、そして会社の文化や法規制との兼ね合いなどから、自社に合ったグループウェアを選択していくのが重要ですね。ありがとうございました。

(*1)Microsoft 社オンライン サービス条件(OST)
https://www.microsoft.com/ja-jp/licensing/product-licensing/products#primaryR3

Office 365の導入をご検討の方はこちら
https://www.fsi-ms-solution.jp/office365/

G Suiteの導入をご検討の方はこちら
/google/apps/

 

増田 裕正
増田 裕正(Hiromasa Masuda)

MS 事業部
フェロー

直井 清
直井 清(Kiyoshi Naoi)

営業本部 商品販売推進部

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