顧客がネットと店舗、デバイスをシームレスに行き来し、買いたい時に、買いたい場所で、商品を入手できる体験(CX)を提供する――実際、そんな世界を実現して収益を伸ばしている会社もある。

しかしながら、ひとつやり方を間違えると、顧客が離れていってしまう可能性だってある。そんなリスクを負ってまで、私たちはオムニチャネルに取り組まなければいけないのだろうか?

店舗ごとの在庫数をリアルタイム表示……

ECサイトと全国の店舗の在庫情報を一元化し、ネット上で在庫数をリアルタイム表示。これなら顧客はいつでも在庫をチェックできる。店員も問い合わせ対応から解放される。いいじゃないか。

ところが・・・

例えば、白いボディが美しいノートPCを前から欲しがっている顧客がいるとする。その顧客は、「口コミサイトでの評判も上々だからネットで買ってもいい。でも、やはり実際の色を自分の目で確認してから買いたい」と店舗の在庫を調べたところ、秋葉原店に1台だけ在庫があることが分かった。しかし、いそいそとその店舗へ行った時には、お目当てのノートPCはすでに在庫なし。店員に聞くと、ついさっき売れたというのだ。

スマホで在庫数を確認すると、確かに在庫が0台になっている・・・。

最初から、在庫情報なんて見せなければよかったのだ。ネットで在庫数なんか確認できなくても、顧客がこれまで通り色々な店舗に問い合わせすればいい。そして、在庫のある店舗が顧客の来店日を聞いて取り置きしておけばいい、それだけだ。そうだろ?

アカウント統合を顧客にお願いして……

ネットと店舗のアカウント統合。これもよくある話だ。今まで別々に管理されていたポイントを統合し、ネットと店舗どちらでも使えるようにする。顧客にとっては便利なことだし、店舗としても、ネットショップからの誘導を期待できる。

ところが・・・

そのためには、店舗のポイントカードをネットショップのアカウントに登録するなど、顧客に対応してもらう必要がある。しかし、なかなか手続きしてくれない顧客は多く、何度もメールで通知する。「○月○日までに手続きをしなければお客様のポイントは失効します。ただちに手続きをしてください」――こんなシステム都合100%のメールが勝手に送られてきたら、よほどロイヤリティの高い顧客でなければそのショップ自体に嫌気がさすだろう。

ポイント統合をしたら新しい体験が待っているなんて、顧客には分かりっこないのだ。顧客に負荷をかけるくらいなら、最初からオムニチャネル化になんて取り組まなければいい。そうだろ?

店舗を巻き込まなくても……

ECの市場規模は拡大する一方だ。いろいろな店舗が次々とネットショップを開設し、ネット上のサービスを充実させている。購入前に商品の良さを知ってもらおうと、試着やレンタルのサービスをECで展開したり、AIを使ったチャットボットで顧客の問い合わせに24時間対応したりと、ネットショップの不便さ解消も進んでいる。

ということは、これからはもうネットショップだけに注力すれはいいじゃないか。わざわざ店舗を巻き込み、多大な時間と労力をかけてオムニチャネルに取り組む必要はない。

デジタルが、リアルの世界にどんどん取り込まれ、顧客行動を把握・分析できるようになったとはいえ、実際に顧客が喜ぶサービスにならなければ意味がない。なのに、顧客のためによかれと思ってやったことが、どれもこれも裏目に出てしまう。うまくいっている会社と自分の会社の違いが分からない。少し前まではうまくいっていたのに、なぜ最近うまくいかなくなったのか、理由が分からない。

オムニチャネルを進めると、これまで以上に影響範囲が広くなってしまう。失敗した時の影響も大きい。顧客にとってはリアルもデジタルも変わらない? 冗談じゃない! 顧客のために他部署と連携するのはゴメンだ。ネットはネット、リアルはリアル。顧客のためより、個別最適化でいこうじゃないか。

ネットもリアルも、顧客も店舗も満足するオムニチャネル化とは?
困ったら、まずは富士ソフトにご相談ください。

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柴田 晃宏
柴田 晃宏(Akihiro Shibata)

ソリューション事業本部
ネットビジネス事業部
部長 / エグゼクティブフェロー

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