電子マネーで経費精算するには?
キャッシュレス化のメリットと手順を解説
企業の経費精算において、現金での立替や小銭の管理に手間を感じている担当者は多いのではないでしょうか。近年、電子マネーをはじめとするキャッシュレス決済の普及により、経費精算業務の効率化が注目されています。電子マネーでの経費精算は、従来の現金管理の煩雑さを解消し、リアルタイムでの経費管理を可能にする有効な手段です。しかし、電子マネーを経費精算に活用するには、適切な会計処理や仕訳方法、領収書の取り扱いなど、押さえるべきポイントがあります。
本記事では、電子マネーを使った経費精算の具体的な手順から、キャッシュレス化によるメリット、注意点まで詳しく解説します。
電子マネーによる経費精算の流れ
電子マネーを使った経費精算では、従来の現金立替とは異なる処理手順が必要です。まずは、電子マネーの種類と特徴を理解することから始めましょう。
電子マネーの種類と特徴
経費精算で使用される電子マネーは、主に3つの方式に分類されます。プリペイド方式は事前にチャージした金額内で決済を行う方式で、交通系ICカードが代表例です。ポストペイ方式は後払い式の電子マネーで、クレジットカード連動型が一般的です。デビット方式は銀行口座と直結し、決済と同時に口座から引き落としが行われます。
これらの方式は、経費計上のタイミングや会計処理方法が異なるため、社内の経費精算ルールを明確に定める必要があります。特に、プリペイド方式では事前チャージ時と利用時の二段階で処理を行う点が、従来の現金精算との大きな違いです。
電子マネー経費精算の基本手順
電子マネーでの経費精算は、以下の手順で進めます。まず、使用前に電子マネーへのチャージまたは登録を行います。次に、実際の支払い時に電子マネーを使用し、必要な証明書類を取得します。
支払い後は、利用明細や領収書を整理し、経費精算システムまたは手動で精算申請を行います。最後に、承認者による確認・承認を経て、会計処理が完了します。
必要な証明書類と書類の管理
電子マネーによる経費精算では、適切な証明書類の取得と管理が重要です。基本的には、支払い時に発行される領収書やレシートの保管が必要となります。電子マネー利用時は、店舗側から領収書の発行を断られる場合もあるため、事前に発行可能か確認することをお勧めします。
また、電子マネーの利用明細も重要な証明書類となります。多くの電子マネーサービスでは、Webサイトやアプリから利用履歴をダウンロードできるため、定期的にデータを取得し保管しておきましょう。税務調査の際にも、これらの書類が適切に管理されていることが求められます。
キャッシュレス化による経費精算のメリット
経費精算のキャッシュレス化により、従来の現金管理では実現できない多くのメリットが得られます。業務効率化から内部統制の強化まで、幅広い改善効果を期待できます。
業務効率化と時間短縮
キャッシュレス決済では、支払い処理の時間短縮と経費精算業務の効率化が実現できます。現金での支払いと比較して、電子マネーやクレジットカードでの決済は迅速で、お釣りの計算も不要です。
主要な経費精算システムと連携することで、決済データの自動取り込みが可能になり、手入力作業を大幅に削減できます。また、デジタル化された取引データにより、経費の集計や分析作業が効率化され、承認者にとっても、明細データが整理された状態で確認できるため、承認プロセスの迅速化につながります。
正確性の向上とミス削減
キャッシュレス決済では、手作業による入力ミスや計算ミスを防ぐことができます。電子マネーの利用履歴は自動的にデジタルデータとして記録されるため、転記ミスや金額の間違いが発生しにくくなります。
また、現金の紛失リスクもなくなり、小銭の管理に伴う計算ミスも解消されます。レシートの紛失や破損といった問題を回避できるため、経理担当者の負担も軽減されます。
リアルタイムでの経費管理
キャッシュレス決済により、経費の発生をリアルタイムで把握できるようになります。従来の現金精算では月次での集計が一般的でしたが、電子決済では即座に利用状況を確認できます。
経費精算システムと連携することで、予算管理や支出の計算もすぐに行えるため、適切な経費統制が可能です。管理者は部門別や担当者別の支出状況を随時確認でき、予算超過の早期発見や適切な指導が行えます。現金精算とキャッシュレス精算を比較すると、以下のような違いがあります。
| 改善項目 | 現金精算 | キャッシュレス精算 |
|---|---|---|
| 処理時間 | 手入力・計算が必要 | 自動データ取り込み |
| 正確性 | 入力ミスのリスク | デジタルデータで高精度 |
| 管理タイミング | 月次集計 | リアルタイム把握 |
PayPay支払いと経費精算システムとの連携の活用例
近年では、経費精算におけるキャッシュレス手段として、PayPayなどのQRコード決済サービスの活用も広がっています。PayPayでの支払い情報を経費精算システムに連携させることで、手入力不要のスムーズな精算処理が可能になっています。
例えば、PayPayアプリの取引履歴から対象の支払いを選択しタップすると、支払い先・決済額・取引日時が反映された申請内容を確認のうえ、ワンタップで経費精算システムへ連携できます。連携後、システム上に明細が取り込まれ、「金額」「利用先」「取引日」が自動入力されるため、入力ミスを防ぎつつ、迅速な経費処理が実現できます。
このようにキャッシュレス決済と経費精算システムを組み合わせることで、領収書の紛失リスク軽減・手作業削減・リアルタイムでの経費管理が実現できます。
電子マネーによるキャッシュレス化の経費精算導入手順
電子マネーを経費精算に導入する際は、単に決済手段を切り替えるだけでなく、社内ルールやシステム環境を整備することが重要です。以下の手順に沿って進めることで、スムーズなキャッシュレス化を実現できます。
1. 利用目的と対象範囲の明確化
まず、電子マネーをどの経費に使用するのかを定義します。交通費や少額の備品購入など、利用シーンを限定することでルールを明確化し、従業員が迷わず利用できる環境を整えられます。
また、利用可能な電子マネーの種類(交通系IC、QRコード決済、クレジット連動型など)をあらかじめ指定し、プライベート利用との混同を防ぐルールも策定しておきましょう。
2. 社内規程と承認フローの整備
導入にあたっては、チャージ上限額や利用限度額、承認手続きの流れを明文化する必要があります。特に、領収書が発行されないケースに備え、利用明細の提出方法や証憑管理のルールを明示しておくことが大切です。
経費精算規程を改定し、従業員説明会やマニュアル配布を行うことで、運用開始後のトラブルを最小限に抑えられます。
3. 経費精算システムとの連携
キャッシュレス化のメリットを最大化するには、経費精算システムとの連携が不可欠です。電子マネーの利用明細を自動で取り込み、承認・会計処理までシームレスに連携できる環境を整えることで、入力作業の削減や精算スピードの向上が期待できます。
たとえば、Concurなどのシステムでは、交通系ICカードの利用履歴を直接取り込み、証憑データとして活用できます。
4. 試験運用と段階的な展開
導入初期は特定の部署や利用ケースに限定して試験運用を行い、実際の運用上の課題を洗い出します。そのうえで、改善点を反映しながら全社的に展開することで、スムーズな移行を実現できます。
試験運用の結果を基に、利用者からのフィードバックを反映し、運用ルールやシステム設定を継続的に改善していくことが成功のカギです。
導入時の注意点と対策
キャッシュレス化による経費精算には多くのメリットがありますが、導入時には適切な準備と注意点への対応が必要です。事前の検討により、スムーズな移行と運用を実現できます。
領収書発行と証憑管理の課題
電子マネー利用時の課題として、領収書の発行が困難な場合があります。一部の店舗では電子マネー決済時の領収書発行を断られることがあるため、事前に確認することが重要です。
対策として、利用明細やレシートを証憑として活用する方法があります。経費精算システムでは電子レシート機能や画像取り込み機能により、デジタル証明書類の管理が効率化されます。また、税務対応のため、証憑の保存期間や形式についても事前に整理しておく必要があります。
社内ルールの整備と運用
キャッシュレス化を成功させるには、明確な社内ルールの策定が不可欠です。電子マネーの利用範囲、チャージ限度額、承認フローなどを詳細に定める必要があります。
特に、プライベート利用との区別や、ポイント利用時の処理方法について明確にしておくことが重要です。従業員向けの研修や説明会を実施し、新しい精算方法について理解を深めてもらうことで、導入後のトラブルを防げます。
税務対応とインボイス制度への準備
キャッシュレス決済では、インボイス制度への対応も重要な検討事項です。適格請求書の要件を満たす証憑の取得と管理が必要となるため、支払先の登録番号確認や証憑の形式について事前に整理しておきましょう。
経費精算システムにはインボイス対応機能を持つものもあり、適格請求書の自動判定や税額計算の支援が可能です。税務リスクを回避するため、専門家への相談も含めて適切な対応を準備することをお勧めします。
まとめ
電子マネーを活用した経費精算は、従来の現金管理の課題を解決し、業務効率化と正確性の向上を実現する有効な手段です。プリペイド型、ポストペイ型、デビット型それぞれの特徴を理解し、適切な会計処理を行うことで、スムーズなキャッシュレス化が可能となります。
導入に際しては、領収書発行の課題や社内ルールの整備、税務対応など、事前の準備が重要です。経費精算システムの活用により、電子マネー連携や自動データ取り込み機能を活用することで、さらなる効率化が期待できます。
適切な準備と運用により、キャッシュレス化による経費精算は企業の生産性向上と内部統制の強化に大きく貢献します。段階的な導入を検討し、自社に最適なキャッシュレス経費精算の仕組みを構築していきましょう。
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