【経費精算での不正】主な手口と防止策について解説
企業における経費精算の不正は、組織の健全性を脅かす深刻な問題です。近年、デジタル化の進展とともに新たな手口も登場しており、従来の防止策では対応しきれない状況が生まれています。経費精算の不正は、領収書の改ざんから架空請求まで多岐にわたり、その被害額は企業規模を問わず発生する可能性があります。
本記事では、経費精算における主要な不正手口を詳しく解説し、AI技術を活用した効果的な防止策についてもご紹介します。適切な対策を講じることで、企業は健全な経営基盤を維持し、従業員の信頼関係を保つことができるでしょう。
経費精算不正の主要な手口
経費精算における不正は、様々な手法で行われています。これらの手口を理解することで、早期発見と効果的な防止策の実施が可能になります。
不正の手口は大きく分けて、証憑書類に関するもの、申請内容に関するもの、システムの盲点を突くものに分類されます。それぞれの特徴を把握することが、包括的な対策を講じる第一歩となります。
領収書の改ざんと偽造
領収書の改ざんは、経費精算不正の中でも最も一般的な手口の一つです。金額の書き換えや日付の変更、宛名の偽造などが代表的な改ざん方法として挙げられます。
デジタル技術の進歩により、画像編集ソフトを使用した精巧な偽造も増加傾向にあります。また、レシートプリンターを使用した完全な偽造領収書の作成も確認されており、従来の目視チェックでは発見が困難なケースも存在します。
架空請求と水増し請求
架空請求は、実際には発生していない経費を申請する不正行為です。存在しない取引先との商談費や、参加していない会議の交通費などが典型例として挙げられます。
水増し請求では、実際の支出額よりも高額な金額が申請されます。タクシー代を水増しして申請したり、実際の宿泊費よりも高い金額を請求したりするケースが多く見られます。これらの不正は、小額であることが多く、発見されにくいという特徴があります。
重複請求と私的流用
重複請求は、同一の経費を複数回申請する手口です。異なる費目で申請したり、申請時期をずらしたりすることで発覚を逃れようとします。
私的流用とは、個人的な支出を業務上の経費として申請する不正手口です。プライベートな飲食費を会議費として申請したり、個人的な交通費を出張費として計上したりする事例が確認されています。
交通費の不正
交通費に関する不正は、経費精算不正の中でも特に多く発生しています。日常的に発生する費用であることから、チェック体制の隙を突かれやすい傾向があります。
定期的かつ継続的に行われることが多く、発覚時の累積被害額が大きくなる可能性があります。そのため、適切な監視体制の構築が重要になります。
通勤手当の不正申請
通勤手当の不正は、実際の通勤経路よりも高額な定期代を申請する手口が一般的です。最短経路ではなく遠回りの経路で申請したり、使用していない交通機関の料金を含めたりするケースが多く見られます。
在宅勤務が増加した現在では、通勤頻度が減少しているにも関わらず、従来と同額の通勤手当を受給し続ける不正も発生しています。勤務実態と通勤手当の整合性を確認する体制の整備が求められています。
| 通勤手当不正の種類 | 具体的な手口 | 発見のポイント |
|---|---|---|
| 経路の偽装 | 実際より高額な経路での申請 | 定期的な経路確認と実態調査 |
| 頻度の偽装 | 在宅勤務中の満額申請 | 勤務実績との照合確認 |
| 手段の偽装 | 使用しない交通機関での申請 | ICカード履歴との突合 |
出張交通費の水増しとカラ出張
出張に関する交通費の申請では、実際の移動手段よりも高額な交通手段での申請が行われる場合もあります。新幹線の普通車を利用したにも関わらず、グリーン車の料金で申請するケースなどが該当します。
カラ出張は、実際には出張していないにも関わらず、出張したとして交通費や宿泊費を申請する手口です。顧客との商談をキャンセルしたにも関わらず、そのまま出張費を申請するケースなどが確認されています。
タクシー代の不正申請
タクシー代の不正では、私用での利用を業務利用として申請したり、実際の料金を水増しして申請したりする手口が見られます。領収書の改ざんが比較的容易であることも、この種の不正が多い理由の一つです。
複数人での乗車時に個人が全額を立て替えた後、他の乗車者からも重複して申請される場合もあります。
AI技術を活用した不正防止システム
近年、AI技術の進歩により、経費精算の不正防止においても革新的なソリューションが登場しています。AIを活用することで、従来の人的チェックでは限界があった複雑な不正パターンの検知が可能になりつつあります。
機械学習による異常検知
機械学習技術を活用した異常検知システムでは、過去の申請データから正常なパターンを学習し、異常な申請を自動的に検出します。申請金額の異常な増加や、通常とは異なる申請パターンなどを効率的に発見できます。
画像解析による領収書検証
AIによる画像解析技術は、領収書の真正性を自動的に判定できます。文字の書体、用紙の質感、印刷パターンなどを分析し、改ざんや偽造の可能性を検出します。
OCR技術と組み合わせることで、領収書に記載された情報の自動抽出も可能になります。AIを用いることで、手入力によるミスや意図的な改ざんを防ぎ、正確な経費データを収集することができるのです。
リアルタイム監視と予防的アプローチ
AIシステムは、経費精算申請の提出後から分析を開始し、リアルタイムで不正の可能性を評価します。承認プロセスに入る前に問題を検出することで、不正の未然防止が可能になります。
人的チェックとAIの役割分担
効果的な不正防止体制を構築するためには、AIによる自動検知と人的チェックを適切に組み合わせることが重要です。それぞれの長所を活かした役割分担により、効率性と確実性を両立できます。
AIが担当する領域
AIシステムは、大量のデータの高速処理と、一定のルールに基づく判定に優れています。定型的なチェック項目の確認や、数値の異常検知などは AIが効率的に処理できる分野です。
重複申請の検出、金額の妥当性チェック、申請頻度の分析などは、AIの得意分野として位置づけられます。これらの作業を自動化することで、人間がより複雑な業務に集中することができます。
人間が担当する領域
人間は、文脈の理解や複雑な状況判断において AIを上回る能力を発揮します。申請内容の妥当性を業務実態と照らし合わせて判断したり、例外的な状況への対応などは、人間の判断が不可欠です。
AIが検出した異常な申請に対する最終的な判定や、不正が確定した場合の対応策の決定なども、人間が担当する重要な領域です。組織の方針や個別の事情を考慮した柔軟な対応は、人間ならではの強みといえます。
効率的な連携体制の構築
AIと人間の効果的な連携を実現するためには、明確な役割分担と情報共有の仕組みが必要です。AIによる一次スクリーニングで異常を検出した案件を、優先度に応じて人的チェックに回すフローの確立が重要になります。
また、人間の判定結果を AIシステムにフィードバックすることで、検知精度の継続的な向上も図れます。この循環的な改善プロセスにより、組織全体の不正防止能力が向上していきます。
包括的な不正防止策の実装
経費精算の不正を効果的に防止するためには、技術的な対策だけでなく、組織文化や制度設計を含めた包括的なアプローチが必要です。システム、プロセス、人材育成の三つの要素を統合した対策が求められます。
システム基盤の強化
経費精算システムの基盤強化では、申請から承認、支払いまでの全プロセスをデジタル化し、紙ベースの処理を排除することが基本となります。電子化により証跡の保存と追跡が容易になり、改ざんのリスクを大幅に軽減できます。
承認フローの多段階化と権限管理の厳格化も重要な要素です。申請金額に応じた承認者の設定や、複数人による承認体制により、不正な申請が通過するリスクを低減できます。
内部統制の強化
内部統制の強化では、定期的な監査体制の確立と、不正発見時の対応手順の明文化が必要です。監査では、申請内容の妥当性確認と、システムログの分析による不正行為の検出を行うようにしましょう。
また、職務分離の原則に基づき、申請者、承認者、経理担当者の役割を明確に分離することも重要です。一人の従業員が申請から支払いまでの全プロセスに関与できない体制を構築することが大切です。
教育と意識向上
従業員に対する教育と意識向上活動は、不正防止の根本的な対策として位置づけられます。経費精算に関するルールの周知徹底と、不正行為の重大性について定期的に教育を実施しましょう。
実際の不正事例を用いた研修により、従業員に不正のリスクと影響を理解してもらうことが重要です。また、内部通報制度の整備により、不正の早期発見を促進する環境を構築しておくことも欠かせません。
まとめ
経費精算における不正は、企業の健全な経営を阻害する深刻な問題であり、多様な手口への包括的な対策が求められます。領収書の改ざんから架空請求まで、巧妙化する不正手口に対しては、従来の人的チェックだけでは限界があります。
AI技術を活用した不正防止システムは、大量のデータを高速で分析し、人間では気づきにくい異常パターンを検出できる強力な武器となります。AIによる自動検知と人的判断を適切に組み合わせることで、より効果的な不正防止体制を構築できるでしょう。
最終的には、システム強化、内部統制の確立、従業員教育の三つの要素を統合した包括的なアプローチが、経費精算不正の根絶につながります。継続的な改善と最新技術の活用により、健全で透明性の高い経費精算体制を維持することが可能になるでしょう。
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