経理業務のデジタル化を実現する方法|メリットと導入手順を徹底解説

多くの企業では経理業務の手作業が多く、時間と労力の消費に加えてヒューマンエラーのリスクが課題となっています。2024年の電子取引データ保存の完全義務化を受け、ペーパーレス化を含む経理のデジタル化への対応が求められています。
本記事では、経費精算をはじめとする経理業務のデジタル化によって得られる具体的なメリットと、中小企業でも実現可能な導入手順を詳しく解説します。最後まで読み進めることで、効率化による工数削減や月次決算の迅速化、さらには働き方改革への貢献まで、経理DXの全体像を把握できます。

Writer Profile

高津 咲

富士ソフト株式会社
ソリューションビジネスユニット
ソリューション事業本部 営業統括部
ソリューション営業部 第1営業グループ 主任

2017年 富士ソフト入社。アカウント営業として活動したのち、クラウド・AI-IoT・ワークフロー・AI-OCR等のソリューション営業を経て、現在はConcurをメインとしたお客様の経理業務の課題解決と活性化を支援するソリューションの営業を行っている。

著者 高津 咲

主な経理業務とその課題

経理業務は、日次・月次・年次・不定期といったサイクルで幅広い業務を担っています。特に処理量が多く、確認作業や突合作業が発生しやすい業務が多いため、属人化や業務負荷の集中が起こりやすい点が特徴です。ここでは、代表的な経理業務と、その中で生じやすい課題を整理します。

主な日次・月次業務とその課題

日次業務では、仕訳・伝票処理、経費精算、請求書受取、現金・預金管理、不正検知など、処理件数が非常に多い業務が発生します。これらは手入力や目視確認に依存しやすく、入力ミスや確認漏れが起こりやすいだけでなく、担当者の経験に依存しがちです。
また月次業務では、月次決算、売掛金・買掛金管理、入金消込、給与計算など、正確性とスピードの両立が求められます。特に入金消込業務は、入金情報と請求情報の突合が煩雑で、属人化や作業遅延によって債権管理に影響が出るケースも少なくありません。

主な年次・不定期業務とその課題

年次業務では、年次決算や法人税・消費税の申告、固定資産管理など、法令遵守と高い正確性が求められます。これらの業務はミスが許されない一方で、通常業務と並行して対応する必要があり、経理担当者の負担が一気に増大します。
さらに、不定期業務として予算管理、資金繰り表の作成、社内報告資料の作成、監査対応なども発生します。これらは都度対応が必要なため業務計画を立てづらく、チェック体制の維持や不正検知においても、人手に頼った対応では限界が生じやすい点が課題です。

経理業務のデジタル化で得られるメリット

経理業務のデジタル化は、単なる効率化にとどまらず企業全体の競争力向上につながります。具体的な効果を把握することで、導入の必要性と優先度を明確にできます。

業務効率化による大幅な工数削減

デジタル化を進めることで、経理業務の工数を大きく削減できると言われています。特に、AI-OCRによる請求書の自動読み取りを活用すれば、手入力にかかる時間を大幅に圧縮することが可能です。従来は手作業で多くの時間を要していた請求書処理も効率化され、経費精算の処理スピードも大きく向上します。
月次決算のような定例業務でも、デジタル化によって締め作業の期間を短縮しやすくなります。これにより経理担当者はルーティン業務から解放され、財務分析や経営判断のサポートといった、より付加価値の高い業務に時間を充てられるようになります。

ヒューマンエラーの大幅な削減

手作業による転記ミスや計算間違いを大幅に削減できます。RPAによる定型業務の自動化により、データ入力や集計における人的ミスを防止できます。特に経費精算において、領収書の金額や日付の転記ミスは頻繁に発生する問題ですが、OCR技術により自動で正確にデータを読み取れます。
また、承認フローのデジタル化により、承認漏れや二重承認といった問題も解消されます。システムによる自動チェック機能により、勘定科目の選択ミスや税率の適用間違いも防げるため、会計処理の精度が向上します。

リアルタイムな経営情報の可視化

クラウド会計システムにより、経営状況をリアルタイムで把握できるようになります。従来の月次決算を待つことなく、日次や週次での業績確認が可能です。ERPシステムの導入により部門横断的なデータ一元管理を実現し、経営判断に必要な情報を迅速に提供できます。
キャッシュフローの予測精度も向上し、資金繰りの改善につながります。売上や費用の動向を即座に把握できるため、経営戦略の立案や軌道修正を適切なタイミングで実施できるようになります。

ペーパーレス化の実現方法

ペーパーレス化は単なる紙の削減ではなく、業務プロセス全体の見直しを伴う重要な取り組みです。段階的な実施により、組織への負担を最小化しながら効果的な移行が可能です。

電子帳簿保存法への対応

2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化されており、適切な対応システムの導入が必要です。電子帳簿保存法対応システムを導入すれば、請求書や領収書の電子保存要件を満たすことができます。これらのシステムには、真実性の確保や可視性の確保といった法的要件をクリアする機能が搭載されています。
タイムスタンプの付与や検索機能の実装により、税務調査時にも適切に対応できます。また、取引先との電子データのやり取りも円滑になり、業務効率の向上と法令遵守の両立が可能です。

経費精算システムの導入

スマートフォンアプリを活用した経費精算システムにより、外出先での経費申請が可能になります。レシートをスマートフォンで撮影するだけで、OCR機能により金額や日付を自動で読み取り、経費申請書に反映されます。交通費の自動計算機能により、複雑な経路検索や料金計算を自動化できます。
承認者もスマートフォンやパソコンから随時承認作業を行えるため、承認待ちの時間を大幅に短縮できます。支払い処理も自動化されるため、従業員の立替負担を軽減し、資金管理の効率化も実現できます。

請求書処理の自動化

AI-OCR技術により、取引先から受け取った請求書を自動で読み取り、会計システムに連携できます。手作業による転記作業を削減し、処理速度の向上と精度の確保を両立できます。読み取られたデータはRPAが経費精算システムへ自動登録するため、入力ミスや差し戻しが削減され、処理速度と精度を高めることができます。
請求書の承認ワークフローもデジタル化により、紙の回覧や押印作業が不要になります。承認状況の可視化により、処理の進捗管理も容易になり、支払い期限の管理も自動化できます。

デジタル化に必要なツール

経理業務のデジタル化には複数のツールを組み合わせた活用が効果的です。企業の規模や業務の特性に応じて、適切なツールを選定することが成功の鍵となります。

クラウド会計システムの選定基準

クラウド会計システムは経理DXの基盤となる重要なツールです。初期導入コストが低く、バージョンアップやメンテナンスが自動で行われるメリットがあります。クラウド会計システムであれば、中小企業でも初期費用を抑えながら高機能なシステムを利用できます。
選定時には、自社の業務フローとの適合性、他システムとの連携機能、セキュリティ対策の充実度を重視することが大切です。また、サポート体制や導入支援の充実度も、スムーズな移行のために重要な要素となります。

選定基準 確認ポイント
機能適合性 自社業務との合致度
連携機能 既存システムとの接続
セキュリティ データ保護機能
コスト 総所有コスト
サポート 導入・運用支援

AI-OCRとRPAの活用方法

AI-OCRは紙の書類を電子データに変換する技術で、従来のOCRと比較して読み取り精度が大幅に向上しています。手書き文字や複雑なレイアウトの書類にも対応でき、経理業務における書類処理の自動化に有効です。RPA技術により伝票処理やデータ照合などの反復作業を自動化し、人的リソースを戦略的業務に振り向けられます。
導入時には、対象業務の明確化と効果測定の仕組み作りが重要です。段階的な導入により、システムの習熟と業務プロセスの最適化を並行して進めることで、投資対効果を最大化できます。

ERPシステムの導入検討

ERPシステムは経理だけでなく、販売管理や在庫管理、人事管理など企業の基幹業務を統合管理するシステムです。部門間のデータ連携が自動化され、情報の一元管理により業務効率の大幅な向上が期待できます。統合システムにより属人化を解消し、組織全体での情報共有を促進できます。
導入規模や予算に応じて、段階的な実装も可能です。まずは経理部門から導入し、効果を確認しながら他部門への展開を検討する方法が現実的です。

導入を成功させる手順

経理業務のデジタル化を成功させるには、計画的な導入手順と組織全体での取り組みが不可欠です。段階的なアプローチにより、リスクを最小化しながら確実な効果を得ることができます。

現状分析と目標設定

まず導入前に現在の経理業務を詳細に分析し、問題点と改善ポイントを明確にしましょう。業務フローの可視化により、デジタル化の効果が最も高い領域を特定できます。属人化している業務プロセスを特定し、標準化による効率化を検討することが重要です。
目標設定では、定量的な指標を設けることで効果測定が可能になります。処理時間の短縮率、エラー率の削減、コスト削減額など、具体的な数値目標を設定することで、導入後の評価と改善につなげられます。

段階的な導入実施

一度に全ての業務をデジタル化するのではなく、優先度の高い業務から順次導入することが効果的です。まずは経費精算システムから始め、効果を確認しながらクラウド会計システム、AI-OCRと段階的に拡張していきます。テレワーク推進にも貢献するクラウドベースのシステム導入により働き方改革を実現できます。
各段階で十分な検証期間を設け、問題点の洗い出しと改善を行います。従業員への教育研修も並行して実施し、新しいシステムへの習熟を支援することで、スムーズな移行を実現できます。
たとえば段階的な導入方法の一例として、まずは第1段階として経費精算システムを約1〜2ヶ月で導入し、業務効率化の効果を確認します。続いて第2段階では、クラウド会計システムを2〜3ヶ月ほどかけて追加し、基幹業務のデジタル化を広げていきます。さらに第3段階では、AI-OCRやRPAによる自動化を3〜4ヶ月程度で進め、入力作業の削減やミス防止を実現します。最終的には第4段階として、6〜12ヶ月を目安にERPの統合検討を行い、企業全体の情報をつなぐ基盤づくりを進める流れが考えられます。

運用定着と継続改善

システム導入後は、定期的な効果測定と改善活動が重要です。設定した目標に対する達成度を確認し、必要に応じてプロセスの見直しを行いましょう。従業員からのフィードバックを収集し、使いやすさの向上と業務効率の最適化を継続することで、長期的な効果を維持できます。
新しい法制度への対応や業務要件の変化に応じて、システムの機能追加や設定変更を適切に実施するようにしましょう。また、他部門への展開や新技術の導入検討も継続的に行い、デジタル化の効果を企業全体に波及させることが大切です。

まとめ

経理業務のデジタル化は、経費精算の効率化から始まり、ペーパーレス化、AI技術の活用まで幅広い取り組みです。業務効率化による工数削減や月次決算の迅速化など、具体的な効果が期待できます。
経理DXを成功させるには、現状分析から始めて優先度の高い領域から段階的に導入し、運用定着と継続改善を繰り返すことが重要です。AI-OCRやRPA、クラウド会計、ERPといったツールを自社の業務に合わせて組み合わせることで、ペーパーレス化や法制度対応を含む全体最適を段階的に実現できます。計画的なステップで取り組むことで、デジタル化の効果を確実に蓄積し、中長期的な業務改革につなげることができます。

富士ソフトでは「経理業務のデジタル化」および「経費精算の効率化」を目的に SAP Concur(コンカー)を自社導入しており、その内容や結果を踏まえて、Concur の導入や利活用の提案を行っています。
また、SAP Concur認定コンサルタントを含む100名以上のプロフェッショナルが、ライセンス契約から導入・アフターサポートまで、ワンストップパートナーとしてお客様のニーズに合わせた業務効率化のお手伝いをいたします。ぜひご相談ください。

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