富士ソフト株式会社

~誰もが「Builder」になる時代へ~
Snowflake Summit 26 Builders Keynote レポート

▼はじめに

AIデータプラットフォームアーキテクトとして活動しているネットインテグレーション事業部の左手です。
前回は、「~データ・AI活用は'Can we?' から 'Shall we?'に~ Snowflake Summit 26 参加レポート Day2」として、Platform Keynoteで発表された最新アップデートの全体像をお届けしました。 下記リンクから確認できますので、是非チェックしてみてくださいね。

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~データ・AI活用は'Can we?' から 'Shall we?'に~ Snowflake Summit 26 参加レポート Day2

今回お届けするのは、Day3に予定されていた「Builders Keynote」です。実はこのKeynoteは現地での開催が見送られたのですが、Snowflake社が後日、特別版としてオンラインで配信していただきました。
Opening Keynoteが「ビジョン」、Platform Keynoteが「製品ケイパビリティ」だとすれば、Builders Keynoteはそれらを実際の成果に変える「Builder」自身にスポットライトを当てた回になります。私自身の視点も交えながら、その内容を一緒に見ていきましょう。

▼執筆者

Author

左手 克明

Katsuaki Sate

ソリューションビジネスユニット ネットソリューション事業本部
ネットインテグレーション事業部 第6技術グループ / 担当 シニアマスター

▼目次

1.Builders Keynoteとは

昨年と同様でSnowflake BuildersのためのKeynoteとして位置づけられているのが、このBuilders Keynoteです。
進行役を務めたのは、Snowflake社でHead of Analyticsを務めるCarl Perry氏です。
冒頭、Carl Perry氏は、SnowflakeのSVP of Engineeringの言葉を引きながら「今はまさに新たなルネサンス期だ」と語りました。
コーディングアシスタントは日進月歩で進化し、アイデアから本番稼働までの距離は、かつてなく縮まってきていると私自身も感じております。
一方で、Buildersが向き合う環境は、たくさんのツール・データ・ワークフローの急増によって複雑さが増してきています。 今日における最大の障壁は、もはや専門知識や開発リソースの不足ではなく、こうした「断片化」そのものだというのです。
このKeynoteでは、「断片化」を越えてBuildersが力を発揮するために必要な、3つのシフトが提示されました。以降では、この3つのシフトに沿って、当日のデモと顧客事例を紹介していきます。

Buildersに求められる3つのシフトが提示された

2.Build Across -データを動かさず、すべてのデータの上で作る-

1つ目のシフトは、クラウドやフォーマット、ツールの違いを越えて、あらゆるデータの「上で」作るというものです。 「データドリブン」を掲げる企業は多いものの、1つの問いに答えるだけでも、複数システムの数値を突き合わせ、ブラウザのタブを開き、関係者へ確認する……という地道な作業が必要になりがちです。
このシフトの主役が「Snowflake CoCo」で、あらゆるデータを横断的に、対話的に、そしてリアルタイムで扱えるようにします。
ここでは、TUI社のData Team LeadでありSnowflake Data SuperheroでもあるAna Stefanska氏と、Snowflake社 Senior Developer AdvocateのJames Cha-Earley氏の2名により、1本のZoomコールから始まり、 題材は、顧客離脱率の上昇に悩む架空企業Datadonuts向けの「顧客維持のためのツール」を、「Snowflake CoCo」へのたった1つのプロンプトで構築するというものです。

特筆すべきは、データを動かさずに横断的なデータ操作を実現する点です。アーキテクチャは以下のようになっていました。
対象データはSnowflaken Iceberg V3、GCP Open Catalog、Databricks UnityCatalogの3システムに30以上のテーブルとして分散していますが、これらをカタログ連携データベースでつなぎ、動的Icebergテーブルとして「単一のデータソース」のように扱います。
そのうえで顧客の問い合わせ内容に対して、「Cortex AI」によるセンチメントスコアの付与、AutoMLによる最良モデルの自動選択、Streams & Tasksによるリアルタイムな評価までを一気通貫で実装し、 離脱リスクを検知するとSlackへ通知。最終的に「CoCo Agent SDK」でSnowflakeAppruntimeによってパッケージ化され、デプロイまで実施します。
これにより、顧客維持チームは、個々の事案を処理し、経営陣が異常な傾向をSlackからリアルタイムで入手することを目的としています。
このアーキテクチャを一つにまとめたプロンプトをCoCoで実行することで、その環境が実現してしまうというスピード感に私も驚いたと同時に、AIを用いたSnowflake開発の実現性を改めて実感できました。

このシフトは、最も厳格な規制が必要な環境でも成立します。Intercontinental Exchange/New York Stock ExchangeでVice President, Data, Analytics and Governanceを務めるDurgesh Das氏は、 複数クラウド・多数リージョンにまたがる膨大なデータを扱う立場から、「CoCo Desktop」が既存のSnowflakeのロールやセキュリティポリシー、データリネージをそのまま継承する点を強調しました。

データコピーもデータチームへの依頼待ちも発生せず、ガバナンスを保ったまま誰もがデータを探索できると述べていました。アーキテクトの視点で最も価値を感じたのは、この「データを動かさない」設計と「ガバナンスの自動継承」です。 データを移動・複製しないことは、コストとリスクの双方を確実に下げると、改めて実感しました。

3.Build with -AIを「相乗効果」に変える-

2つ目のシフトは、AIを「相乗効果」として使い、アイデアから本番稼働までを一気に縮めることです。
データが揃った後に難しいのは「何が重要か(シグナルかノイズか)」を見極めることだと、Carl Perry氏は語ります。先ほどの架空企業Datadonutsのデモの続きでは、「Snowflake CoCo」がコードを書く前に提示する「実行計画」に注目が集まりました。
興味深かったのは、計画を立てた後に別のレビュー用エージェントが内容を点検し、着工前にパイプラインの競合(レースコンディション)や、「コスト高な処理」は動的テーブルを毎回“全件”作り直してしまう非効率な設計、「SDKの取り違え」は本来使うべき専用の「CoCo Agent SDK」ではなく汎用の「Cortex API」を選んでしまうといった問題を自動で検出・修正した点です。
さらに実装は複数の自律エージェントが並列で担当し、テスト担当とは別に、実装者とは異なる「独立したレビュー担当」が監査します。確証バイアスを避けるために、作る人とレビューする人を分けていました。この設計思想は、品質を担保する実務に直結すると感じました。

Medtronic社でExecutive Senior IT Director, Data & Analyticsを務めるRavi Achukola氏は、ビデオ登壇でその効果を語りました。買収を重ねるなかで生じたレガシーシステムやデータのサイロ化という課題に対し、同社は「統合データ」、「データ基盤側でのセマンティックレイヤー構築」、「対話型AIへの移行」という3つの軸で再設計を進めています。 Ravi Achukola氏は「データエンジニアリングを“強化”するのは『Snowflake CoCo』と『Snowflake CoWork』だ」と表現し、従来は数日から数週間かかっていた作業が数時間に短縮されたと述べていました。
ここまでを振り返ると、Build withの本質は、1つのAIにすべてを任せることではないと分かります。
計画・実装・テスト・レビューといった役割を複数のエージェントが分担し、それぞれの得意を持ち寄りながら、互いの見落としを補い合います。確証バイアスを避けつつ、チームとして成果を高めていく、この「相乗効果」こそが、アイデアを素早く形にする原動力だと感じました。

4.Build for -アイデアを成果へ変える-

3つ目のシフトは、作ったものを実際の成果に変えることです。
アイデアと成果の距離を縮めてこそ、「自分が作ったものが動いた」という瞬間が増えていきます。
架空企業Datadonutsの「顧客維持のためのツール」のデモは、最後にSlackへの通知という“成果”に結実しました。常時稼働するエージェントがサポート状況を監視し、解約の確度が高い顧客を検知すると、 解約スコアの変化や根本原因、24時間・3日・7日単位の担当者付きアクションプラン、引き留めオファーまでを自動で提示します。地域単位のリスク傾向も分析として示され、現場が「次に何をすべきか」を即座に把握できる形になっていました。

各利用者は自分のロールと権限で安全に接続します。ダッシュボードアプリを構築し、Snowflakeアカウント内へデプロイすると、アプリはセキュリティ境界の中で動作し、ガバナンスやアクセス制御を自動的に引き継ぎます。 Vercelの最高経営責任者(CEO)であるGuillermo Rauch氏はこれを「One minute to wow(1分で感動するような体験だ)」と表現しました。エンジニアでなくてもアイデアを形にでき、かつ統制を犠牲にしない、この両立ができると強調しました。

5.おわりに

Builders Keynoteで示されたのは、「Build Across」「Build With」「Build For」という3つのシフトでした。専門知識や開発リソースではなく「断片化」が障壁である、という問題提起から始まり、その障壁が急速に消えつつあることが、デモと事例を通じて鮮やかに描かれました。
参入障壁が下がっても、専門性の価値が失われるわけではありません。むしろデータエンジニアやアーキテクトの役割は、信頼できるデータ基盤の上で「全社のビルダー」を支える指揮者へとシフトしていくと実感しました。現地での開催が見送られたKeynoteを、Snowflake社がわざわざ特別版として届けてくれたこと自体が、いま「作る」ことに込められた可能性の大きさを物語っていたように思います。
そして最後に、忘れられないのがSummit会場の事前告知で、データスーパーヒーローズの面々が身にまとっていたTシャツのメッセージ「Let's friggin' build!(LFB)」です。日本語で「とにかく作ろう」・「とにかくやろう」という意味です。「難しく構えず、まずは手を動かして作ってみよう」ビルダーへのストレートなエールであり、Keynoteの結びでもこの言葉に立ち返り、 「LFB」と書かれたTシャツを着たSnowflakeSummit26に携わったメンバーを目の当たりにし、Builders Keynote全体を貫いていたのは、まさにこの精神だったと私も心のノートにメモをしました。

「LFB(Let's friggin' build!)」のTシャツを着た登壇者がステージに勢ぞろい
ビルダーへのエールでKeynoteは締めくくられた

6.富士ソフトのデータ利活用支援について

富士ソフトは、AI・クラウド・セキュリティ・インフラの総合的な技術力を掛け合わせ、データ・AI活用を通じたビジネス価値の創出を支援いたします。
当社は、Snowflakeを熟知した専門人財を擁し、確かな構築実績を持つパートナーとして、Snowflake Partner NetworkのAIデータクラウド サービスパートナー「SELECT」に認定されています。 今回のSummitで発表された「Snowflake CoCo」や「Snowflake CoWork」といった最新技術についても、いち早く現地でのキャッチアップを行っており、単なるツールの導入に留まらない、お客様の業務に即した実用的な活用方法をご提案できることが強みです。 データ戦略がそのままAI戦略の要となるこれからの時代に向けて、お客様に最適なデータ基盤の構築を共に進めていければと考えております。

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