AgentspaceとMicrosoft Outlookの接続方法


Agentspaceから会議設定やメール送信を行ってみよう


1. はじめに:本記事内容のご紹介

本記事では、Agentspaceと Microsoft Outlook (以下、Outlook)を接続する方法をご紹介します。この2つを接続することで、作成したAgentspaceから会議の設定やメールの送信など、Outlookを操作することができます。 Agentspaceを使ってどんなことができるのかを理解する上で、本記事が皆さんの参考に少しでもなれば幸いです。

2. Agentspaceとは?

Google CloudのAgentspaceは、Google CloudのAIプラットフォームであるVertex AI上で、生成AIモデルからなるエージェントを構築、管理、デプロイするための機能群です。開発者がエージェントを効率的に作成し、運用できるように設計されています。

Agentspaceの主な機能

Agentspaceは、エージェント開発のライフサイクル全体をサポートする以下の主要な機能を提供します。

  • ・ワークフロー構築
    複雑なタスクを実行するエージェントのワークフローを、視覚的に定義できます。ユーザーの入力に対して、どのツールをいつ呼び出すか、どのような順序で処理を進めるかといったロジックを設計できます。これにより、開発者はコードをほとんど書かずにエージェントの振る舞いを設計できます。
  • ・ツールの統合
    エージェントが外部のデータやシステムにアクセスするために必要なツール(API、データベース、ドキュメント検索など)を簡単に統合できます。これにより、エージェントはGoogle Cloudのサービスだけでなく、サードパーティのサービスとも連携できるようになります。今回の記事で紹介するOutlookはM365のサービスなので、ここでいうサードパーティに分類されます。
  • ・デプロイと運用
    作成したエージェントを本番環境にデプロイし、そのパフォーマンスを監視、管理できます。これにより、エージェントを実際にアプリケーションやサービスに組み込むことが容易になります。

Agentspaceは、企業がビジネスプロセスを自動化したり、顧客サポートを改善したりするために、高度なAIエージェントを迅速に構築することを可能にします。これにより、AI開発の専門知識が少ないチームでも、生成AIの力を活用したソリューションを開発できるようになります。
要するに、Agentspaceは単なるAIモデルではなく、特定の目的を達成するために複数のツールを使いこなす「AIエージェント」を、より簡単に作れるようにするGoogle Cloudのツールキットです。

3. Agentspaceのアプリ作成方法

それでは、実際に作成していきましょう。
Vertex AI Searchから、右側にある「すべて表示」をクリックし、その後Agentspaceを選択してアプリを作成していきます。

Vertex AI Searchを開いた時の画面

Vertex AI Searchを開いた時の画面

1枚目の画像の「すべて表示」を選択すると、Agentspaceが表示される

1枚目の画像の「すべて表示」を選択すると、Agentspaceが表示される

アプリ名を任意で入れ、場所を選択します。ここではグローバルを選択しています。

Agentspaceアプリの名前とリージョンを選択する

Agentspaceアプリの名前とリージョンを選択する

その後、以下の画面に遷移します。黒線で隠れているのは、作成したアプリのウェブ版です。

Agentspaceの「アプリの概要」画面

Agentspaceの「アプリの概要」画面

以上がAgentspaceのアプリ作成方法です。

4. Outlookデータストアの作成前準備

M365の管理ポータルでアプリを作成

M365の管理ポータルから、アプリを作成します。管理ポータル:ホーム - Microsoft Azure

M365管理ポータルにおける、アプリ登録画面

M365管理ポータルにおける、アプリ登録画面

アプリの名前を任意で記入します。また、その後のアプリを使用できるアカウントの設定は、ここでは富士ソフトのアカウントのみが使用できる設定にしています。

作成するアプリの名前と、使用するアカウントの設定を行う

作成するアプリの名前と、使用するアカウントの設定を行う

さらに、その下にあるリダイレクトURIでは、Webのhttps://vertexaisearch.cloud.google.com/oauth-redirectを設定します。ここまで完了したら、アプリを登録します。

リダイレクトURIの設定画面

リダイレクトURIの設定画面

Agentspaceとの接続に必要な情報の取得

登録が完了したら、以下のようなアプリの情報が表示されます。ここで、クライアントIDとテナントIDはAgentspaceとの接続で使用するため、メモしておきます。

アプリの概要画面

アプリの概要画面

また、Agentspaceとの接続でシークレット値も必要になるため、「証明書とシークレット」にて、新しいクライアントシークレットを追加します。ここで、シークレット値をメモしておきます。一度画面を遷移してしまうとシークレット値が確認できなくなってしまうので、注意が必要です。

「証明書とシークレット」の画面

「証明書とシークレット」の画面

APIのアクセス許可を構成する

管理ポータルで作成したアプリとAgentspaceを接続するにあたって、管理ポータル側でカレンダーの読み取り、書き込み、メールの送信など、どのような機能をAgentspaceで可能にするのかを制御することができます。

この制御は、管理ポータルで作成したアプリの「APIのアクセス許可」にて行います。アクセス許可の追加をクリックし、Microsoft Graph>アプリケーションの許可、の順番に進んでください。その後、許可したい動作を選択・追加します。以下の画面に遷移したら、「○○に管理者の同意を与えます」のチェックを有効にします。

「APIのアクセス許可」にて、許可している一覧が表示される

「APIのアクセス許可」にて、許可している一覧が表示される

今回許可している動作は以下です。

  • ・Calendars.ReadWrite
  • ・Contacts.ReadWrite
  • ・Files.Read.All
  • ・Mail.ReadWrite
  • ・Mail.Send
  • ・User.Read.All
  • ・User.ReadBasic.All

以上でOutlookデータストアの作成前準備は完了です。

5. Outlookデータストアの作成・アプリとの接続方法

Outlookデータストア作成方法

AI Applicationsの「データストア」よりデータストアを作成し、データソースをサードパーティにある「Microsoft Outlook」を選択します。

AI Applicationsの「データストア」画面

AI Applicationsの「データストア」画面

認証方法ではOAuth 2.0 Client Credentialsを選択し、前準備にて取得したクライアントID、シークレット値、テナントIDをそれぞれ記入します。

データストアの認証情報入力画面

データストアの認証情報入力画面

その後の詳細オプションにおける「静的IPアドレスを有効にする」は、今回は特に有効にしません。その次の同期するエンティティは、全て選択します。

#

同期するOutlookのデータを選択

同期についての設定は、今回は試験的な接続であるため、同期頻度は一番間隔が長い28日、増分データ同期も7日に設定しておきます(接続が完了したら、同期を停止します)。

同期頻度の設定画面

同期頻度の設定画面

続行した後、データコネクタのロケーションと名前を設定します。ロケーションはAgentspaceのロケーションと同じ「global(グローバル)」を選択、データコネクタ名は任意で設定して、「作成」をクリックします。

データコネクタのロケーション、名前設定画面

データコネクタのロケーション、名前設定画面

データストア・コネクタの作成が完了すると、データの同期を開始します。ここまでかなりの時間を有しますので、気長に待ちます。正常に同期が完了すると、以下のように「データの取り込みアクティビティ」において、ステータスが成功となっています。

データストア選択後の画面

データストア選択後の画面

データストアの作成は以上です。

データストアとAgentspaceアプリ接続方法

作成したデータストアと接続させたいAgentspaceのアプリに移動し、「既存のデータストアを追加」から、Outlookと同期させたデータストアを選択します。

Agentspaceアプリの「接続されたデータストア」画面

Agentspaceアプリの「接続されたデータストア」画面

次に、「操作」より操作を追加します。

Agentspaceアプリの「操作」画面。何も操作が設定されていない。

Agentspaceアプリの「操作」画面。何も操作が設定されていない。

アクション用のサービスでOutlookを選択します。

アクション用サービス選択画面

アクション用サービス選択画面

次の「構成」において、インスタンスは作成したOutlookのコネクタを、他は管理ポータルで取得したクライアントIDとシークレット値を設定します。メール送信とカレンダーの予定作成も有効にしておきます。

Outlook用のコネクタと、OutlookのクライアントIDとシークレット値記入画面

Outlook用のコネクタと、OutlookのクライアントIDとシークレット値記入画面

正常に設定が完了すると、以下のようにアクションがアクティブになります。

Agentspaceアプリの「操作」から、選択したアクションのコネクタの状態が「ACTIVE」になっているか確認する

Agentspaceアプリの「操作」から、選択したアクションのコネクタの状態が「ACTIVE」になっているか確認する

以上で、OutlookとAgentspaceの接続は完了です。

6. 実際にAgentspaceから会議設定・メール送信を行ってみる

バックエンドの設定(任意)

念のため、ウェブグラウンディング・位置情報コンテキストを無効にします。

それぞれ無効になっている状態

それぞれ無効になっている状態

会議設定

会議の件名やその他設定内容をAgentspaceに伝えます。

Agentspaceに会議設定の依頼を行っている様子

Agentspaceに会議設定の依頼を行っている様子

すると、以下のように下書きを作成してくれます。問題が無ければ「承認」し、送信します。

Agentspaceで会議を設定している様子

Agentspaceで会議を設定している様子

実際にカレンダーを確認してみると、きちんとAgentspaceから設定されていました。

実際に作成された会議

実際に作成された会議

メール送信

会議設定と同様に、誰に送信するのか、件名や本文の内容をAgentspaceに伝えて送信してもらいます。

Agentspaceでメール依頼をしている様子

Agentspaceでメール依頼をしている様子

会議設定の時と同様、下書きを作成してくれます。問題が無ければ「送信」します。

Agentspaceでメールを作成している様子

Agentspaceでメールを作成している様子

実際に受信ボックスを確認してみると、きちんと送信されていました。

実際に届いたメール

実際に届いたメール

まとめ

本記事では、AgentspaceとOutlookを接続し、Agentspaceから会議設定やメール送信を送る方法をご紹介しました。わざわざOutlookを開いて操作をしなくてもAgentspace上で完結するため、今回作成したエージェントと他のエージェントを合わせたAgentspaceを作成して使用すれば、業務を効率良く行うことができます。また作成したAgentspaceでは、会議設定やメール送信以外にも、カレンダーの予定の確認等も行うことができます。

上記のように、Outlookと接続したAgentspaceを使用することで、社内の業務の効率化を促進させることができます。さらにAgentspaceは他のサードパーティとも接続できるため、業務効率化向上の可能性の塊ですね!

ここまでお読み下さりありがとうございました。本記事が皆さんの参考になれば幸いです。