人生初の講演で200人超。
AIエージェントの現場熱と未来
2025年5月8日 菅谷 和衡(Sugaya Tomohiro)
富士ソフト ソリューション事業本部 情報ソリューション事業部 DXアプリケーション部の菅谷です。
スタンドアロンアプリやWebアプリの開発者として、さまざまな開発案件に携わってきました。
現在はGoogle Cloudの技術責任者として、生成AIやデータ分析に関する案件を主に担当しています。
まずはこちらをご覧ください。

あるイベント終わりの打ち上げでいただいたビールが最高に美味しかったのです。
なぜ最高に美味しかったのか。皆さんもご経験があるかもしれませんが、大きな仕事をやり終えた後だったからです。
私がやり遂げた内容を、今日は本ブログに書き留めておこうと思います。これは、人生で初めての講演だったのにも関わらず200名以上の視聴者が参加することとなり、圧倒的緊張感を味わった私の体験談であり、イベントで実感したAIエージェントにおける現場の熱量と可能性をお伝えするレポートでもあります。
- 1. Google Cloud Japan主催のAIイベントに参加
- 2. AIエージェントへの圧倒的な期待感
- 3. AIエージェントとは
- 4. データ分析入門には「自販機型」エージェント
- 5. 迅速な意思決定が必要。だがデータ分析は複雑化
- 6. AIエージェントが強力なパートナーになる理由
- 7. AIエージェントを実際に活用してみた
- 8. まとめ
Google Cloud Japan主催のAIイベントに参加
2025年3月13日、Google Cloud Japan主催のイベント「AI Agent Summit ’25 Spring」が開催されました。

東京・渋谷で開催されたAI Agent Summit ’25 Spring、開始前で心臓はバクバクです
当イベントは生成AIおよびAIエージェントの最新動向や活用事例を紹介するもので、会場定員1000名に対し事前登録者数は5000人を超える大盛況のイベントとなりました(オンライン開催もあり)。
特別講演では、落語家の桂文枝氏がGoogleの生成AIであるGeminiと共同で創作した落語を披露する取り組み「桂文Gemi」プロジェクトの裏側など、エンタメ領域での生成AI活用事例などが紹介されました。
また、各ブースでは企業ごとに自社のAIエージェントやAIにおける取り組みを紹介。富士ソフトのメンバーも、企業カラーである青のパーカーを羽織り、足を止めていただいたお客様の課題や、課題を解決するためにAIをどのように活かせるかをお話させていただきました。

ブースでは、各社がそれぞれお客様の課題を解決するためにヒアリングし、取り組みを紹介していた
そして冒頭の通り、私は登壇者としてもステージに立たせていただいたのです。
AIエージェントへの圧倒的な期待感
「AI エージェントとデータ分析:インサイトの最大化」と題したセッションには200名以上の方が集まり、多くの方から反響をいただきました。

圧倒的緊張感の中、人生で初めて講演のスピーカーとして登壇
人生初のスピーカー体験。最初に出た感想は「やり直したい」でした(笑)。今のセッションをもう一度やり直したい。30分という枠の中で、本当に伝えたいことを伝えるために、もっともっと工夫できる部分があった。後悔にも似た反省が浮かぶと同時に、AIエージェントの可能性をとことん追求し信じようとする自身がいることに、技術責任者として嬉しくもありました。
また、200名超の視聴者がいらっしゃったことに、AIエージェントへの期待の高まりを感じます。「何かが変わる」ことが少しずつ実感できる日々。皆さんのAIエージェントに対するキャッチアップ速度は、おそらく加速度的に上がっているのではないでしょうか。
AIエージェントとは
セッションでは、まず「AIエージェントとは何か」といった基本をご説明しました。
AIエージェントとは、特定の目標達成のために、優秀なアシスタントのように自律的にタスクを実行できるAIのことを指します。
従来のAIでは、人間が一つ一つ指示を与えないと動けません。一方、AIエージェントは自ら目的を理解し、最適な方法を考えて判断し、実行に移せます。たとえば、旅行の手配や顧客対応から複雑なデータ分析まで、さまざまな業務を自動化できるのです。
今回は、特に「データ分析」という分野に焦点を当て、AIエージェントの活用方法を深掘りしました。AIエージェントは、データ収集、分析、可視化、意思決定支援といった一連のプロセスにおいて、これまでとは次元の異なる効率化を実現します。
データ分析入門には「自販機型」エージェント
セッションで解説したAIエージェントモデルは、データ分析の第1段階で役に立つ「単純反射型エージェント」です。

登壇資料より抜粋
これはあらかじめ定義されたルールに基づき、入力に対して即座に反応するモデルです。
たとえば自動販売機を想像してみてください。お金を入れてボタンを押すと、設定された商品が出てきます。これは単純反射型エージェントの動作原理とよく似ています。
単純反射型エージェントは実装が比較的容易で、AIエージェントの入門として、あるいは特定のタスクを迅速に処理する必要がある場合に有効です。 に、データ分析の初期段階におけるデータのフィルタリングや簡単な集計処理などで効果を発揮します。ただし、複雑な判断を要するものや高度な推論が必要なものに関しては、ほかのモデルを選択する必要があります。
迅速な意思決定が必要。だがデータ分析は複雑化
次に、データ分析における現代的な課題を3点に整理します。
データ分析の課題
1.データ量の増加
IoT、ソーシャルメディア、クラウドサービスなどの普及により、データは指数関数的に増加しています。分析においては、この膨大なデータの中から必要な情報を見つけ出す必要があります。
2.データの多様性
構造化データに加え、テキスト、画像、音声、動画といった非構造化データも対象となり、処理の難易度が上がっています。
3.データのサイロ化
部門間・システム間でデータが分断されており、全体像の把握が困難になることで分析の精度が落ち、意思決定のゆがみにもつながります。
(例:営業部門が持つ顧客データとマーケティング部門が持つ顧客データが連携されておらず、同じ顧客に異なるアプローチをしてしまうなど)
こうした課題は複雑に絡み合い、データの活用が難しくなっており、分析に時間がかかるのが現状です。
一方、ビジネス環境自体は競争激化・顧客ニーズの多様化に伴い日々劇的に変化しています。ビジネススピードの加速が求められ、リアルタイムデータの重要性が日々増している状況です。迅速な意思決定が求められる現代のビジネス環境では、AIエージェントの存在が必須となりつつあるのです。
AIエージェントが強力なパートナーになる理由
では、AIエージェントはデータ分析の課題に対し、具体的にどのように解決してくれるのでしょうか。AIエージェントは、以下の4つのポイントでデータ分析を進化させてくれます。
データ分析におけるAIエージェントの効果
1.自動化
データ収集・分析の前処理(クレンジングや不要なデータ削除など)や実際の作業をAIエージェントが自動で行うことで、データサイエンティストがより高度で創造的な業務に集中できます。
2.精度向上
特に学習型エージェントモデルは機械学習を自動で行うことにより、パターン学習や将来予測の精度を飛躍的に向上させます。
3.リアルタイム分析
データ収集から分析までをリアルタイムで実行でき、迅速な意思決定を可能にします。また、顧客ニーズに即座に対応できるため、競争の優位性を確立することも可能です。
4.効率化
重要な情報やパターンを自動抽出し提示することで、データサイエンティストの負担を軽減します。
これらの機能により、AIエージェントは単なるツールではなく、意思決定を支援する強力なパートナーとなり得るのです。
とはいえ、実際に活用してみないとその効果は実感できません。そこで、今回のセッションでは、よくあるビジネスシナリオに沿ったAIエージェント活用例をあらかじめ用意しました。
AIエージェントを実際に活用してみた
「BIツールのレポートを自然言語でまとめてほしい」「もっと気軽にデータを見たい」と思ったことはないでしょうか。私自身、会議準備や顧客からの急な問い合わせ対応で、必要なデータを探す時間がない中、AIエージェントが優秀な秘書のように情報をまとめてくれたらどれだけ助かるかと思うことがよくあります。
以下の図は、実際に構築した分析レポートを簡単に理解するためのツールが、どのような流れで出力するかを表したものです。BIツールのレポートをもとに、AIエージェントが自動で内容を収集し、Geminiにインプットして、分析結果を自然言語で出力します。これにより、専門知識がなくてもレポートの内容を簡単に理解できるようになります。

登壇資料より抜粋
もう一つの例として、チャットツールとの連携を挙げました。SlackやGoogle Chatなどから、自然言語で「この営業データを分析して」などと投げると、AIエージェントがデータウェアハウスからデータを取得し、Geminiを通じて分析、結果を文章やグラフで返してくれます。リアルタイム性の高いデータにも対応でき、課題と対策をその場で提案することも可能です。

登壇資料より抜粋
このように、チャットツールを中心としたインターフェースにより、誰でも簡単にデータを活用し、意思決定ができるようになります。結果として、組織全体のデータリテラシー向上にもつながります。

登壇資料より抜粋

登壇資料より抜粋
まとめ
Google Cloud Next Tokyo '25
以上を解説し終わったところで、30分のセッションが終了。お伝えした内容はまだまだ入門編であり、AIエージェントの可能性はこれからも拡大し続け、ビジネスパーソンの働き方を劇的に変えてくれるものだと感じています。
まとめとして、AIエージェントは、データ分析の自動化や精度向上を通じて、分析にかかる時間と労力を大幅に削減してくれます。それだけでなく、深いインサイトの獲得、リアルタイムデータや未来予測を考慮した高度な意思決定のサポートもしてくれます。 つまり、営業、マーケティング、製造、人事など、あらゆる部門にいるビジネスパーソンがその恩恵を得られるのです。変化に迅速に対応し、顧客ニーズを的確に捉え、効率的な業務プロセスを構築することで、経営層から見ても競争力の強化と持続的成長に寄与するものと考えます。
Google Cloudにおいては、各種ツールと連携することで、非常に簡単に分析基盤を整えることができるのが強みです。 ぜひ、AIエージェントの導入をご検討いただき、その可能性を最大限に引き出して、より賢い意思決定を実現していただければと思います。
また、宣伝になりますが、当日のイベントで展示およびセッション内で解説した、業務レポート生成ソリューション導入のご相談もお気軽にどうぞ。AIエージェントに関するご相談も、もちろんいつでもお待ちしております。
最後になりますが、拙い人生初セッションをご視聴いただいた皆様、登壇の機会を与えてくださったGoogle Cloud Japanの皆様に深く感謝申し上げます。セッション終了後には多くの方とAIエージェントの未来についてお話ができました。 また近いうち、登壇できる機会があれば、より充実した内容をお届けできればと思います。

セッション終わりでask the Speakerで質問を受ける様子
本記事の作者
富士ソフト株式会社 ソリューション事業本部
情報ソリューション事業部 DXアプリケーション部
基盤ソリューショングループ 課長
菅谷 和衡 (Sugaya Tomohiro)
